電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

マルティヌー「交響曲第4番」を聴く

2008年09月26日 05時37分13秒 | -オーケストラ
この冬、2月頃だったと思いますが、いつも観ている「N響アワー」で、アラン・ギルバートとN響による、マルティヌーの交響曲第4番を聴きました。これが実に新鮮で、あまりなじみのなかったこの作曲家の音楽について、興味を持つきっかけになりました。たまたま、いきつけのCDショップで、ノイマン指揮チェコフィルの全集(DENON COCQ-84038~40)を購入し、第1番から聴き始めて現在第4番まで来ております。ようやく原点に到達したところ、でしょうか。

マルティヌーの交響曲第4番は、彼の6曲ある交響曲の中で唯一、長調の曲です。どちらかといえば悲しげな曲調のものが多い中にあって、珍しく晴れ晴れとした気分を持っている音楽。作曲されたのが1945年ごろといいますから、ヨーロッパ戦線がナチスドイツの降伏によって終結し、祖国チェコが解放されて、帰郷の可能性も出てきた頃でしょう。アメリカ側から見れば、太平洋戦争も時間の問題であることがはっきりしており、戦争の終わりと平和への期待が高まっている頃でしょう。

第1楽章、ポコ・モデラート。マルティヌーとしては明るい楽しげな音楽で、フルートとピアノが一緒にリズムを奏するところなど、効果的です。
第2楽章、アレグロ・ヴィーヴォ。低弦がスタッカートのリズムを刻む中で、ファゴットが提示した主題がトランペットや木管に受け継がれ、じりじりとエネルギーを高めていって、トゥッティで全休止。するとやわらかな旋律を弦が奏し、再びオーケストラが目覚めます。はじめのオスティナートが再現され緊迫感が増す中で終わり、たいへん魅力的な楽章になっています。
第3楽章、ラルゴ。弦楽合奏が息の長い半音階的な旋律を奏で、低弦のうめきのような響きの中で、ピアノが弔いの鐘のように鳴り響きます。弦のカンタービレが延々と続き、ティンパニで締めた後に、ゆらゆらとゆらめくような旋律が続きます。
第4楽章、ポコ・アレグロ。金管が華やかに活躍、低弦が行進のようなリズムを刻みますが、しだいにオーケストラ全体が高揚していきます。

■ノイマン指揮チェコ・フィル盤
I=7'01" II=8'59" III=10'02" IV=7'11" total=33'13"
■アラン・ギルバート指揮N響
I=6'54" II=9'29" III=9'46" IV=7'02" total=33'11"
(ただし、DVDに録画したものの、プレーヤーの再生時間表示で計算したもの。)

ノイマン盤は、抑制された力が内向しつつエネルギーを高めていくような演奏、アラン・ギルバートとN響のほうは、悲劇性よりは美しい響きを求めるような、統率の取れた集中力に富む表現のように感じます。アラン・ギルバートは、ニューヨーク・フィルのヴァイオリニスト夫婦の間に生まれ、ヴァイオリニストから指揮者になった人だそうです。マルティヌーのこの交響曲第4番は、彼のお気に入りの曲だそうな。こういう演奏を、テレビ放送で全曲通して楽しめるなど、ありがたい限りです。さすがは池部晋一郎さんの番組だけあります。
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