電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

R.シューマン「女の愛と生涯」を聴く

2011年12月11日 06時03分41秒 | -オペラ・声楽
通勤の音楽は、このところ大きなオーケストラ曲が続きましたので、声楽曲に手が伸びて、R.シューマンの歌曲集「女の愛と生涯」を聴いております。CDはグラモフォンの「シューマン歌曲大全集」からの一枚で、エディット・マティス(Sop.)とクリストフ・エッシェンバッハ(Pf)による録音です。

この作品の作曲年代は、「歌の年」として知られる1840年で、作曲者自身がクララとの結婚を認められた、まさにその年に当たります。歌詞はシャミッソーの詩によっており、全部で8曲からなります。

1 あの方にはじめてお会いして以来
2 どんなひとよりもすばらしいお方!
3 なにがどうなっているのかさっぱりわからない
4 わたしの指にはまっている指環よ
5 手伝ってちょうだい、妹たち
6 親しい友、あなたは
7 わたしの心に、わたしの胸に
8 あなたはわたしにはじめて苦しみをお与えになりました

歌詞の内容は、あまりにも作詞者の自己賛美、自己陶酔が過ぎると感じられて、思わず肩をすくめるところですが、音楽の場合はいささか事情が異なります。最初の第1曲と最後の第8曲が、単なるピアノ後奏にとどまらず、同じモチーフを反復する形で意味づけられているという工夫。連作歌曲集と言う詩的な関連性だけでなく、音楽的な意味でも、始まりが繰りかえされ、深められて、詩情の中に終わります。夫を失った妻の嘆きは誰にでも理解されるもので、その逆であっても同じでしょう。後奏を聴きながら、静かに余韻にひたります。

エディット・マティスのソプラノは、美しく伸びやかな高音で、エッシェンバッハのピアノは、「詩人の恋」ほどではありませんが、思いがけない音を強く響かせたりして、少し主張をしているところがあります。録音は、エディット・マティスのものは1979年9月と1981年10月に収録されているとクレジットされていますが、どれがどの時期のものか、個別の記載はありません。ミュンヘンのアルター・ヘルクレスザールにおけるアナログ録音です。
もう一枚、ヴィエラ・ソウクポヴァーによるLP(DENON OX-7100-ND)では、アルトの深い声で歌われます。伴奏は、ヤン・ホラークです。上品ですが、説得力あるピアノで、曲のドラマ性を支えます。録音は1976年12月11~12日、日本コロムビア第一スタジオでのPCM/デジタル録音で、同レーベルの初めての独唱曲のレコードでした。

ソプラノによる「女の愛と生涯」は、夫を失った若い妻の物語に聞こえますが、より低い声域のアルトによる「女の愛と生涯」は、結婚生活もある程度年月を重ねた妻が、働き盛りの年代の夫を失った物語のように聞こえます。二人の妻の嘆きの深さを比べることはできませんが、声域と声質により、受ける印象はずいぶん違います。にもかかわらず、シューマンの音楽の本質は、聴き手にしっかりと伝わります。演奏の優劣を論ずる気にはなれません(^o^;)>poripori

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