ぼんくら放浪記

Blogを綴ることによって、自分のぼんくらさを自己点検しています。

漫画展

2012-10-23 05:00:00 | 展覧会

夏を過ぎようとする頃から、この漫画展が開催されるのを聞いていました。あまりに早く知らされたので忘れてしまうのではないかと危惧していたのですが、忘れることなく行ってくることが出来ました。副題が“中国からの引き揚げ~少年たちの記憶”となっており、少年たちとは戦時中には家族と共に中国(主として満州国)で暮らしていて、終戦と同時に(或いは遅れて)祖国に帰ってきた子供たち、日本国を見てもこれが自分の祖国とは思えないような幼い頃から中国在住だった日本人たちなのでした。その子供たちの名はペンネームですが、『あしたのジョー』のちばてつや、『丸出だめ夫』の森田拳次、『釣りバカ日誌』の北見けんいち、『ダメおやじ』の古谷三敏、『おそ松くん』の赤塚不二夫、『プロゴルファー綾部金次郎』の高井研一郎など12名に及びます。

             

北区芝田にある画廊を目指します。地下鉄を降りて、ヨドバシカメラの横の道へ上がり、まっすぐ北上、中津の手前の阪急電車の鉄橋がすぐそこに見えるところまで来ると、すぐに判りました。

             

私は中学生の頃からのちばてつやファンでして、当時少年マガジンに連載されていた『ハリスの旋風』を夢中になって読んでいました。他には『紫電改のタカ』や『ちかいの魔球』など、実はちばてつやの代表作と言われる『あしたのジョー』は高校生の時だったので読んでいません。そして卒業してからは『おれは鉄兵』『のたり松太郎』『明日天気になぁれ』などを読んでいたのを思い出し、この漫画展に行ってみたいと思っていたのでした。

今は亡きちばてつやの弟・ちばあきおの名前も回想の中で出てきます。ちばあきおの代表作『プレーボール』も愛読していました。

             

画廊に入ってみてビックリしたのは、職場であった尼崎センタで一緒だったH松氏が受付に座っているではありませんか。なんでこんなところで逢うのかと、縁と言うものにつくづく感心させられます。実はこの日、短い時間の間に梅田界隈で以前の職場の人に次々にあと二人も出会ったのでした。

ブログに載せるんで写真撮るわと言うとニコニコして応じてくれます。どうやらこの画廊内は撮影禁止ではないらしい。

             

二言三言、四言五言・・・この人は話し出すと長い・・・雑談をして、絵を見始めます。最初は誰も客が居なかったのに、だんだんと増えていきました。まぁ、タイトルが地味ですから、訪れる人がそんなに多いとは思えません。

             

本人や石子順というマンガ評論家の説明が各絵に添えられていて、それを読んでいるとかなり時間を要します。でも私は1時間以上かけて全部読みました。

             

それぞれの絵はプロが描くものですからそれなりにきれいです。でも子供の頃を思い出しての絵ですから、私が知りたいような戦争自体に関してのものはありません。私にしては少し物足らなさを感じました。ストーリー漫画ではなく、1枚の挿し絵みたいなものですから、自ずと訴える力が弱いのかも知れません。

             

赤塚不二夫はもう既に故人ですから、この展覧会の企画がどう動いてきたのかは知る由もありませんが、どうやら『私の8月15日の会』という団体が森田拳次氏を会長に据えて存在し、この絵画はその会の人たちによって描かれたようです。

これらの絵の内、林静一氏が出品したただ一枚の絵『母に抱かれて』という絵は、『仁淀川』での著者宮尾登美子が娘を抱いて満州から逃げ帰った話と相俟って、胸を打ちます。しかし満州ではソ連軍の猛襲に遭い、集団自決を余儀なくされた人たちも大勢いました。この展覧会では当時子供だった方々の思いですから、そこまでは掘り下げられませんが、もう一つのコーナーがあっても良かったんじゃないかと思う次第です。

                       

日中友好協会主催の漫画展なのでかどうか、引き揚げ者を襲う中国人は描かれてはいませんが、それまでに為した日本軍の非業悪行を思えば、日本鬼子に対する仕返しがあっても当然だろうと私は思う一方、逃げ遅れた子供たちを救ってくれた中国人もたくさん居たわけです。この展覧会のあいさつには、“二度とあってはならない悲惨な戦争”と書かれていましたが、私はやはり二度とあってはならないのは侵略戦争だと思うのです。そんなことはあり得ないのですが、あのまま日本軍が侵略し続けていたら、果たして日本国民は“二度とあってはならない悲惨な戦争”などと思ったでしょうか。反省なのか真実なのか、そこが当に問われると思うのですが・・・

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