(© 毎日新聞 毎週集会を開いていた公民館分館の天井を見上げる中尾研一さん。公民館は被災し、今も使えない状況だ=岡山県倉敷市真備町服部で2018年10月5日、林田奈々撮影 )
① ""西日本豪雨3カ月:真備の仲間、離れ離れ 人口7%流出""
2018/10/06 07:00
西日本豪雨で大規模な浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備(まび)町地区で、被災前と比べ人口が7%減っていることが市のまとめで分かった。地区外へ引っ越し、住民票も移すケースが増えているとみられる。豪雨から3カ月。他の被災地でもコミュニティーを維持できるのか危惧されており、復興へのハードルは高い。
真備町地区は豪雨前の6月末時点で9006世帯2万2797人が住んでいた。しかし9月末時点で8297世帯2万1206人となり、人口の7%に当たる1591人(709世帯)が減った。この10年の人口増減率はマイナス1%で被災で大きく減った。一方、市内の他地区は人口が計1209人増えており、被災地から流出しているとみられる。
真備町地区の自宅が被災した男性(80)は地区外にある市内のみなし仮設に移ったが、「人に会うことがだいぶ減った」。被災前は地元クラブでグラウンドゴルフに興じていたが、豪雨で活動休止に。みなし仮設のアパートの住民とはあいさつを交わす程度だ。再び戻る予定の自宅はリフォーム中だが「近隣住民がどれだけ戻ってくるか。町内会をやめてしまおうという人もいる」とため息をつく。
豪雨被害の大きかった広島、愛媛両県では、真備のように大きな人口変動はないが不安は募る。避難指示が続く広島県熊野町川角の団地「大原ハイツ」は落石対策などが完了したが、土砂崩れ再発の懸念は残り、移転を決めた住民もいる。川角地区自主防災会会長の田中久也さん(74)は「個々の判断だが、住人が去っていくのは寂しい」と話す。
「残る人と出る人の間で気まずい雰囲気もある」。肱川(ひじかわ)氾濫で2人が死亡した愛媛県西予市野村町三島の男性も表情を曇らせる。集団移転の話も浮上している。男性は代々の土地を手放すつもりはないが地域が存続していくかは自信が持てない。「25世帯ほど住んでいたが残るのは5、6世帯では。もう地区として成り立たない」
約3割の世帯が地区外で避難生活を送る真備町服部では豪雨後、夏祭りや運動会が中止になった。住民らが毎月実施する高齢者宅訪問もできない。まちづくり協議会会長、中尾研一さん(69)は地域のつながりが失われることを心配し、住民の避難先情報の収集を始めた。「寂しく過ごしている人がいる。情報を発信し、定期的に行事もできれば」と話す。
倉敷市被災者見守り支援室の石原寛恵室長は「真備町地区の外に移住した人も、高齢者や1人暮らしの人を優先的に戸別訪問する。復興の様子を伝え、仮設住宅の入居期限の2年が過ぎたら戻ってきてもらえるようにしたい」と話している。【林田奈々、東久保逸夫、中川祐一】
② 話し合う場所必要
兵庫県立大の室崎益輝教授(防災計画)の話 避難生活が長引くと、特に高齢者は認知症の悪化や孤立につながりかねない。離れて暮らす人にも声を掛け、被災者が集まってまちづくりを話し合う場が必要。みんなと話すうちに「帰って来よう」という気持ちにもなる。その体制を作るのが自治体の責務だ。