(厚さ1km以上の氷を温水を使った高速ドリルで掘り進める(Billy Collins/SALSA Science Team))

① ""南極 厚さ1kmの氷底湖に生命体「どこから侵入?」米調査団(動画)""
2019年01月23日 12時07分
南極大陸にある厚さ1キロ以上の氷床の下にある湖から、古代の甲殻類とクマムシの死骸を発見したと米国の探検隊が発表した。
科学誌『ネイチャー』に掲載された論文によると、南極氷底湖科学調査団(Subglacial Antarctic Lakes Scientific Access=SALSA)のチームは昨年12月26日、南極点から600キロほど離れた場所にある「マーサー湖」という氷底湖の氷に、高速温水ドリルで直径60センチ大の穴を開けて掘削。深さ1キロ下まで掘り下げることに成功した。
② 絶滅した古代生物が…
調査団に参加している米ネブラスカ大学リンカーン校の古生物学者デヴィッド・ハーウッドさんによると、これまでの調査で、氷底湖の底の泥の中からは、数百年前に絶滅した古代の珪藻類の死骸をはじめ、極限状態でも生存することができるクマムシを発見した。
(掘削して湖底から泥のサンプルを引き上げる作業のようす(Kathy Kasic/SALSA Science Team))

クマムシは4組8脚のずんぐりした脚を持つ動物で、極端な乾燥や低温、超深海まで極限の環境でも仮死状態で生き抜く最強生物だと言われている。
さらに研究チームを驚かせたのは、脚がついたままのエビによく似た甲殻類や、細かい毛がびっしりと生えていて、さっきまで生きていたように見える甲殻類の甲羅が見つかったことだ。
厚い氷で閉ざされた湖の水には、水生生物が生きていけるのに十分な酸素やバクテリアが存在することも確認された。しかし氷底湖には太陽の光が一切届かないため、これらの生物がどこから入り込んだかという疑問が残る。
(宇宙空間でも生きられる可能性があると言われるほど耐久性が強いクマムシ(Wikimedia Commons))

(何千年も湖の上を覆う氷床(Bob Zook and John Winans/SALSA Science Team))

研究チームの間では、氷床が5000年から1万2000年前にかけて、一時的に薄くなった時期があり、そのときに海水とともに生物が流れこみ、再び氷で閉じ込められた可能性があると考えているという。
今回見つかった微生物は、死亡してから何万年も経過しているようには見えないため、今後、炭素年代測定法を使って詳しい時代を特定し、南極大陸の過去の気象環境を解明するとともに、DNA解析を行って、甲殻類が海の生物なのか、淡水種なのかを調べる計画だ。
湖底の泥の中から生物の死骸を見つけたブリガムヤング大学の動物生態学者バイロン・アダムス氏は「もっと時間をかけて調べたら、生きている生命体に出会う可能性があるかもしれません」と期待を寄せている。