ブログ仙岩

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大石邦子「最初の贈り物」を読んで

2019-04-17 05:40:15 | エッセイ
以前、念願の大学に合格して家を離れた娘との別れ、燃え尽き症候群のようになってしまった友人がいた。彼女は我が子を幸せになる名前にしたいと、性別も分からないうちから考え愛らしい名前を付けた。

我が子への命名は父母からの最初の贈り物である。親の虐待で命を落とした結愛ちゃん、心愛ちゃん、希愛ちゃんには、親の愛情を込めた名前がついていた。

しかし、東京目黒区の結愛ちゃんは「もうおねがいゆるしてゆるしてくださいおねがいします」とノートに書き残した5歳の子である。食事も満足に与えられず、朝は4時に起こされ、虐待の中で命が尽きた。間もなく千葉の心愛ちゃん10才が「お父さんの暴力を受けています。先生なんとかなりませんか」とSOSを発しながら、大人の倫理の前に、少女の訴えは届かなかった。暴力の挙句、風呂場で水死にも似た死を遂げた。大阪の希愛ちゃん2歳4か月も父の暴力で亡くなった。

昨年から明らかになった無残な事件である。子供は親が、大人が護らなくては誰が護りえよう。夢も希望も将来も、縋るべき大人によって抹殺された愛らしい、愛の名前が鳴いている。

山田風太郎の「人間臨終図鑑」の中で、藤村操(17)、高杉晋作(28)、円谷幸吉(28)、吉田松陰(29)、小林多喜二(30)、マリー・アントワネット(38)など1巻に収められている。哲学の不可解に、社会に、牢獄で、刑でなど・・・亡くなっている。死を初めて思う。それを青春という。生は有限の道ずれ旅、死は無限の一人旅、自分の死は地球より重く、他人の死は犬死より軽い。考えさせられます。