母の身体に何かが注入されるたびに、
長々とした説明と、サインを求められる同意書。
こうやって進んでいくのが現代医療なのですね。
『それでは手術室に向かいます』
母の乗った寝台の後を、
入院セットを積んだ車椅子を押して付いて行く私たち。
外来の診察はとっくに終わっていて、不要な電灯は消されています。
くねくねと進んできた通路は、そこだけ灯りで浮かび上がっているようでした。
壁面には立派な額に入った絵がいくつも飾られていました。不気味に・・・
ガラスの自動ドアを通り抜けた先に、さらに、すりガラスの自動ドア。
観音開きのスチールのドアが閉まって、『手術中』のランプが点灯する、
ドラマなどでよく見る演出はありませんでした。
すりガラスが目の前で閉まったとき、
その向うが手術室だったのだと気付きました。
おかげで、先生に、「よろしく」というご挨拶もしそびれたのでした。
2時間を境にこの手術が長いか短いか決まると聞いていました。
閉塞を起こしている母の小腸は、骨盤の中に落ち込んでいたのです。
10年以上前ですが、子宮筋腫の手術を経験しており、
手術跡への小腸の癒着が考えられていました。
その癒着の程度、小腸そのものの状態が手術時間を決めます。
すりガラスのドアのすぐ外で私たちは待てるのではなく、
離れたところに、待合所が設けてありました。
ついたてがあるだけなので、
通路を通る人の様子は途切れ途切れに見ることができます。
遅い時間に面会に来た人、お医者さん、
点滴をしながら移動する入院患者・・・
誰かが通るたびに緊張して見てしまう。
食事を取り損ねてしまった上に、
チェックポイントの2時間が迫り、トイレにさえ動きづらい状況の中、
もたれていた壁のインターホンがなって、
すぐ横のドアの中に呼び込まれました。
執刀医の先生がテーブルの向こう側に座っていらっしゃいます。
手術は成功ということでした。
ただ、小腸はねじれだけではなく、壊死を起こしていて、
切断の必要があったそうです。
ジップロックに入った『切断パーツ』を手にしていらっしゃいました。
その後、母は、麻酔が切れるのを待って、ICUへ。
持ってきたもの全部を置いては置けないということで、
荷物を整理し、
必要な物を置いていくというよりも、
持って帰れないものを無理やり置いてもらうことにしました。
声をかけると、力ない声ではありましたが返答する母。
昼間に見たときより、ほんの少し膨らみのある頬。
11時が迫っていました。
都合のいい駅まで弟に車で送ってもらいました。
切符を買って、ホームに下り、時刻表を見ると、
残されていたのは終電でした。
長々とした説明と、サインを求められる同意書。
こうやって進んでいくのが現代医療なのですね。
『それでは手術室に向かいます』
母の乗った寝台の後を、
入院セットを積んだ車椅子を押して付いて行く私たち。
外来の診察はとっくに終わっていて、不要な電灯は消されています。
くねくねと進んできた通路は、そこだけ灯りで浮かび上がっているようでした。
壁面には立派な額に入った絵がいくつも飾られていました。不気味に・・・
ガラスの自動ドアを通り抜けた先に、さらに、すりガラスの自動ドア。
観音開きのスチールのドアが閉まって、『手術中』のランプが点灯する、
ドラマなどでよく見る演出はありませんでした。
すりガラスが目の前で閉まったとき、
その向うが手術室だったのだと気付きました。
おかげで、先生に、「よろしく」というご挨拶もしそびれたのでした。
2時間を境にこの手術が長いか短いか決まると聞いていました。
閉塞を起こしている母の小腸は、骨盤の中に落ち込んでいたのです。
10年以上前ですが、子宮筋腫の手術を経験しており、
手術跡への小腸の癒着が考えられていました。
その癒着の程度、小腸そのものの状態が手術時間を決めます。
すりガラスのドアのすぐ外で私たちは待てるのではなく、
離れたところに、待合所が設けてありました。
ついたてがあるだけなので、
通路を通る人の様子は途切れ途切れに見ることができます。
遅い時間に面会に来た人、お医者さん、
点滴をしながら移動する入院患者・・・
誰かが通るたびに緊張して見てしまう。
食事を取り損ねてしまった上に、
チェックポイントの2時間が迫り、トイレにさえ動きづらい状況の中、
もたれていた壁のインターホンがなって、
すぐ横のドアの中に呼び込まれました。
執刀医の先生がテーブルの向こう側に座っていらっしゃいます。
手術は成功ということでした。
ただ、小腸はねじれだけではなく、壊死を起こしていて、
切断の必要があったそうです。
ジップロックに入った『切断パーツ』を手にしていらっしゃいました。
その後、母は、麻酔が切れるのを待って、ICUへ。
持ってきたもの全部を置いては置けないということで、
荷物を整理し、
必要な物を置いていくというよりも、
持って帰れないものを無理やり置いてもらうことにしました。
声をかけると、力ない声ではありましたが返答する母。
昼間に見たときより、ほんの少し膨らみのある頬。
11時が迫っていました。
都合のいい駅まで弟に車で送ってもらいました。
切符を買って、ホームに下り、時刻表を見ると、
残されていたのは終電でした。