2011年10月15日-1
放射線を避け、放射性物体を付着させない、吸わない、摂取しないこと
菅谷昭(2011.6)『子どもたちを放射能から守るため』は、「チェルノブイリ原発事故被災地の医療支援をした医師、現・松本市長」である菅谷昭氏に質問した答えでできている本のようである。
ICRPの見解については、内部被曝による影響が抜け落ちているとしている。そして生活上で、特に内部被曝をしないように注意を促している。また、例えば避難して、結果としてそれが必要なかったとしたら、それでよかったとする考え方である(事前警戒原則 the precautionary principle の考え方だと思う)。
医者として、現場で働いた人である。統計的数値ではなく、個々の人を見ている。
医学では、疫学的データだけではなく、症例報告もする。
いくつか引用する。
「「人体への放射線の影響」には、次のようなものがあります。
・すぐに影響が出るもの??急性影響
・数年、または数十年してから影響が出るもの??晩発影響
・被ばく者の子孫への影響??遺伝的影響」(菅谷昭 2011.6: 12頁)。
「以上がICRPの見解ですが、ここには大切なことが抜け落ちています。それは「内部被ばくが原因で起きる影響」についての視点です。」(菅谷昭 2011.6: 15頁)。
「放射線量と比例した影響を受けるのが、外部被ばくです。
ところが、「内部被ばく」となると話は変わってきます。「内部被ばく」とは、食べものや呼吸を通して、体内に放射性物質が取り込まれ、放射線の影響を受けること。胃腸などから吸収され血液に入り込むと、体中をぐるぐる回って臓静や筋肉や骨などに蓄積され、そこから放射線を出すのです。
体内で問題になるのは、透過性の高いガンマ線ではなく、アルファ線やベータ線です。〔略〕
今回の事故で政府は、「CTスキャンやⅩ線検査を受けるよりもはるかに少ない被ばく量」という発表をしましたが、それは外部被ばくの話です。
内部被ばくはCTスキャンのように1回で済むものではありません。体内に入ってしまうと、少量であろうと24時間放射線を出しつづけ、細胞レベルで影響を与えます。ここを理解していないと、「放射線量がわずかならだいじょうぶだ」という論理になってしまいます。内部被ばくは少量でも影響をおよぼす可能性があるのです。
これらをふまえ、被ばくについては二つに分けて考えるとよいでしょう。放射線源に近い場所(線量の大きな場所)では、外部被ばくと内部被ばくの両方に注意すること。速く離れた土地では、内部被ばくに注意すること。
〔略〕いまの日本で多くの人々が注意しなければならないのは、内部被ばくです。」(菅谷昭 2011.6: 21-22頁)。
「 福島原発の事故の後、食品安全委員会に出席したとき、ある大学の委員がこんな発言をしました。
「甲状腺がんは生存率が90%で、がんの中でもたちのよいがんですよ。大したことはありませんよ」
それを問いて私は、ちょつと待って、といいました。
「たしかに性質のよいがんですが、だからといって、がんになっても大丈夫だというのはおかしい。5歳や10歳の子どもが、がんの手術をすることをどう思いますか?あなたはお父さんお母さんの苦しみがわかりますか?」
〔略〕現場を知らない人はこういうことを平気でいいます。すべて、数字で大きくとらえてしまうのです。がんは、一人ひとりの命の問題なのに。」(菅谷昭 2011.6: 32-33頁)。
「 学者によっては、「大したことはない」という人もいます。でも、問題はそこです。その油断やおごりが、事態を悪化させていくのです。机の上で統計だけを見ているからそのような甘い判断になるのかもしれませんが、チェルノブイリで起きたり、現在進行している多くの問題を知れば、そんな無責任なことはいえなくなるはずです。
繰り返しますが、放射能はまだわからないことが多いのです。はっきりしているのは、チェルノブイリで小児甲状腺がんが増えたこと。そのほかにもさまざまな病気に苦しむ人々や、周産期異常などの問題が増えているのです。
わからないからだいじょうぶ、ではなく、わからないから怖い。私はそう思います。」(菅谷昭 2011.6: 53頁)。
[S]
菅谷昭.2011.6.子どもたちを放射能から守るために.82pp.亜紀書房.[y952+][聞き書き:菅聖子].
放射線を避け、放射性物体を付着させない、吸わない、摂取しないこと
菅谷昭(2011.6)『子どもたちを放射能から守るため』は、「チェルノブイリ原発事故被災地の医療支援をした医師、現・松本市長」である菅谷昭氏に質問した答えでできている本のようである。
ICRPの見解については、内部被曝による影響が抜け落ちているとしている。そして生活上で、特に内部被曝をしないように注意を促している。また、例えば避難して、結果としてそれが必要なかったとしたら、それでよかったとする考え方である(事前警戒原則 the precautionary principle の考え方だと思う)。
医者として、現場で働いた人である。統計的数値ではなく、個々の人を見ている。
医学では、疫学的データだけではなく、症例報告もする。
いくつか引用する。
「「人体への放射線の影響」には、次のようなものがあります。
・すぐに影響が出るもの??急性影響
・数年、または数十年してから影響が出るもの??晩発影響
・被ばく者の子孫への影響??遺伝的影響」(菅谷昭 2011.6: 12頁)。
「以上がICRPの見解ですが、ここには大切なことが抜け落ちています。それは「内部被ばくが原因で起きる影響」についての視点です。」(菅谷昭 2011.6: 15頁)。
「放射線量と比例した影響を受けるのが、外部被ばくです。
ところが、「内部被ばく」となると話は変わってきます。「内部被ばく」とは、食べものや呼吸を通して、体内に放射性物質が取り込まれ、放射線の影響を受けること。胃腸などから吸収され血液に入り込むと、体中をぐるぐる回って臓静や筋肉や骨などに蓄積され、そこから放射線を出すのです。
体内で問題になるのは、透過性の高いガンマ線ではなく、アルファ線やベータ線です。〔略〕
今回の事故で政府は、「CTスキャンやⅩ線検査を受けるよりもはるかに少ない被ばく量」という発表をしましたが、それは外部被ばくの話です。
内部被ばくはCTスキャンのように1回で済むものではありません。体内に入ってしまうと、少量であろうと24時間放射線を出しつづけ、細胞レベルで影響を与えます。ここを理解していないと、「放射線量がわずかならだいじょうぶだ」という論理になってしまいます。内部被ばくは少量でも影響をおよぼす可能性があるのです。
これらをふまえ、被ばくについては二つに分けて考えるとよいでしょう。放射線源に近い場所(線量の大きな場所)では、外部被ばくと内部被ばくの両方に注意すること。速く離れた土地では、内部被ばくに注意すること。
〔略〕いまの日本で多くの人々が注意しなければならないのは、内部被ばくです。」(菅谷昭 2011.6: 21-22頁)。
「 福島原発の事故の後、食品安全委員会に出席したとき、ある大学の委員がこんな発言をしました。
「甲状腺がんは生存率が90%で、がんの中でもたちのよいがんですよ。大したことはありませんよ」
それを問いて私は、ちょつと待って、といいました。
「たしかに性質のよいがんですが、だからといって、がんになっても大丈夫だというのはおかしい。5歳や10歳の子どもが、がんの手術をすることをどう思いますか?あなたはお父さんお母さんの苦しみがわかりますか?」
〔略〕現場を知らない人はこういうことを平気でいいます。すべて、数字で大きくとらえてしまうのです。がんは、一人ひとりの命の問題なのに。」(菅谷昭 2011.6: 32-33頁)。
「 学者によっては、「大したことはない」という人もいます。でも、問題はそこです。その油断やおごりが、事態を悪化させていくのです。机の上で統計だけを見ているからそのような甘い判断になるのかもしれませんが、チェルノブイリで起きたり、現在進行している多くの問題を知れば、そんな無責任なことはいえなくなるはずです。
繰り返しますが、放射能はまだわからないことが多いのです。はっきりしているのは、チェルノブイリで小児甲状腺がんが増えたこと。そのほかにもさまざまな病気に苦しむ人々や、周産期異常などの問題が増えているのです。
わからないからだいじょうぶ、ではなく、わからないから怖い。私はそう思います。」(菅谷昭 2011.6: 53頁)。
[S]
菅谷昭.2011.6.子どもたちを放射能から守るために.82pp.亜紀書房.[y952+][聞き書き:菅聖子].