2014年9月4日-1
リスクベネフィット比較、リスク売買、保険、先物、金融工学商品
中西準子流のリスク論は、主に科学的装い(数値偽装)とリスクベネフィット比較の組み合わせであろう。
批判としては、
「「リスク売買」とは、極言すれば、「確実性」と「不確実性」の交換である。〔略〕
保険契約とは、不慮の事故や疾病によって低い確率ながら多大な損害を被る可能性を回避するために、その平均的な損害額(損害額×生起確率)に幾ばくかのプレミアムを乗せた額で保険商品を保険会社から購入するのである。それによって加入者は出費額の確定を、保険会社金銭的なプレミアムを得る。
また先物取引とは、「未来の取引を現在のうちに契約しておくこと」である。例えば、半年先のコーヒー豆の出来高は現時点では完全には予測できず、従って半年後の価格は不確実なものである。今、ある缶コーヒーの会社が確実な利益を見込んだ生産計画を立てたいとしよう。このとき、先物取引を利用してコーヒー豆の半年先の仕入れ価格を現在時点で確定させるのである。コーヒー豆の先物商品の「買い」ポジションを取る缶コーヒー会社は、予想される半年後の平均価格(価格の期待値)に幾ばくかのプレミアムを乗せて契約し、半年後の仕入れ価格を現在のうちに確定させる。「売り」ポジションを取る投機筋側は、そのプレミアムを受け取ることで、不作による暴騰で大損害を被るかもしれない半年後のリスクを引き受けるのである。
上記のような、プレミアを払って「確実性」を購入する行為を「ヘッジ」という。保険や先物という取引を利用することによって人々は、自分たちの嫌う未来の不確実性やリスクを回避(ヘッジ)することが可能となる。
さて、このような「確実と不確実の交換」を極限まで進化させた形態が、最近何かと話題の「金融派生商品」、いわゆるデリバティブである。」
(小島博之.2000/1: 256-157)。
小島博之.2000/1/1.金融工学とリスク社会.現代思想 28: 156-167.