今、ミニ葉ボタンの花が咲いています。普段は、花茎が伸びたら、観賞せずに取り去られて
しまうことが多い花です。でも、せっかく大きくなり、上に着いた葉も斑入りでなかなか綺麗。
手間もかからず、そのまま咲かせていました。
もともと葉ボタンは、紫、赤、桃色、白、クリーム色の葉を楽しむために改良されました。
江戸時代に日本で改良され、独自の発展をした古典園芸植物の一つです。名前の由来は葉を
牡丹の花に見立てたもの。
和名では、別名、牡丹菜 花キャベツ
英名では、Ornamental cabbage、 Ornamental kale、flowaring kale
去年の12月の中ごろ、寄せ植えをしました。
花言葉は、「祝福」「慈愛」「利益」・・・門松とかと一緒に混植されるのもわかり様な気もします。
葉ボタンは、結球しないキャベツ、またはケールが主に観賞用として栽培されるうち、品種改良された
とみられ(1)、食用としてオランダから渡来し、「オランダ菜」として長崎に入ってきたものが、
日本で観賞用に改良された(2)ようです。
分類学上では、アブラナ科アブラナ属、種は、ヤセイカンラン(B.oleracea)、変種はケール(var.acephala)
ケールと同じ変種のようです。
その「オランダ菜」についてですが、1709年(宝永6年) 貝原益軒の『大和本草』第五巻に、
「紅夷菜」として、
「葉大にして、光無く白けたり。花は淡黄色にして羅蔔花の如し。味良し。植えて後、3年にして花開く。
これ菘の類なり」
というが記載されているようです。(3) (羅蔔とは大根、菘とは、白菜のこと。)
葉ボタンの変種名の「acephala」とは、頭がない意味です。
キャベツを調べると、変種名が「capitata」で、「頭状」のという意味です。ラテン語の
「caput」(頭)からきています。ちなみにラテン語「caput(カプート)」から、フランス語の
ピカール方言「caboche」となり、英語の「cabache」へ変化し、「cabbage」になったようです。(4)
キャベツは、スペインのあたりに住んでいたイベリア人が、野生のものを利用し、地中海沿岸に
侵入してきたケルト人により栽培され、古代ギリシャのピタゴラス(BC582-496)は、
「元気と落ち着いた気分を保つ野菜」とし、古代ローマの政治家 大カトー(BC234-149)は、
キャベツが、胃に良いことを『農業について』の中で述べているようです。(5)
12~13世紀ごろ、イタリアで改良され、18世紀にアメリカでさらに 肉厚で柔らかく
改良された。球状のキャベツが日本に入ってきたのは、1850年代で、本格的な生産は、
1874年(明治7年)内務省が欧米から取り寄せた種子で、栽培試験を行ったのが始まりと
されています。(1)
このことから考えると、キャベツは、葉ボタンのルーツではないようです。
江戸時代に園芸文化が盛んになり、
1735年(享保20年)に、菊池成胤の『草木弄葩抄』に
「雪もち草、いかり草、葉ぼたん、から松草・・・」(6)
と載っています。
また1778年(安永7年)の博物学者 山岡恭安の『本草正正譌』に
「牡丹菜・葉牡丹」と記載されているようです。(1)
外来の野菜が、観賞用の園芸品種として日本の江戸時代に発展し、「古典園芸植物」と
呼ばれていたのには、驚きました。ほかに外来植物では、キク・アサガオ・ウメ・芍薬、中国蘭が
あります。
3月12日には、このような表情でした。
ヤセイカンランがルーツの野菜には、
ケール (緑葉甘藍・羽衣甘藍)
ブロッコリ (緑花椰菜)
カリフラワー(花椰菜・花甘藍)
コールラビ (蕪甘藍・蕪玉菜)
芽キャベツ (子持甘藍・姫甘藍)
紫キャベツ (紫甘藍・紫玉菜)
キャベツ (甘藍・玉菜)
が、あります。(甘藍は「カンラン」と読み、漢名のキャベツのことです。)
アブラナ科の花の特徴は、4枚の花弁が十字架のように見えること。
花茎全体の様子をよく見ると、花のつき方が、部分と全体でも同じ相似形になっているようで、
写真がなくて残念ですが、学名では、カリフラワーの仲間の 「ロマネスコ」を思い出しました。
「薹(とう)が立つ」という言葉は、野菜などの花茎が、伸びてかたくなり、食用に適する時期を
過ぎることを意味します。勿論、食用ではありませんが、観賞には向かないと思われていた葉ボタン
の花の伸びゆく様子を見ていると、薹が立っても、これはこれで早春の貴重ないろどりの一つで
良かったかなと思います。
写真は、左から1月15日、3月15日、4月14日の順です。
(1)wikipedia 「ハボタン」の項参照
(2)タキイ種苗のホームページ「プラチナケール」参照
(3)大場秀章『サラダ野菜の植物史』「ケール」の項より。
(4)語源辞典より
(5)cabbage-field.com「キャベツ畑」「キャベツの歴史」参照。
(6)国立国会図書館のホームページ 電子展覧会江戸時代の博物誌「描かれた動物・植物」参照