冬季オリンピックというと必ず思い出すエピソードがある。
1998年 長野冬季オリンピック
ノルディック複合で活躍する双子兄弟や、優勝を目前にしながら「落ちた~」とアナウンサーが絶叫したスキージャンプのリベンジなど話題に事欠かないようで、どこか盛り上がりに欠けていた長野オリンピックだが、国民の関心が一気に高まったのは、やはり清水宏保選手がスピードスケートで日本人初となる金メダルを取ったことにあると思う。
あの時の清水選手の滑りの力強さと迫力は、スピードスケートの何たるかを知らない私でも分かるほどの素晴らしいものだったが、それよりも強く印象に残ったのは、試合後のインタビューだった。
ベタというより愚問ではないかとも思えるのだが、金メダルをとったばかりの清水選手に、「今何を食べたいか」という質問が飛んだ。
「おふくろの味噌汁」
少しぶっきら棒に答える清水選手に、「お母様は、お料理が上手なんですね」との声が重なった。
それに対する清水選手の答えが、私達(一緒にテレビを見ていたウィンタースポーツ音痴達)のハートをつかんだのだ。
「誰にとっても、おふくろの味噌汁は一番じゃないですか」
長野オリンピックから20年。
時代は変わり、今ではこの答えの受け留め方は色々あるかもしれないが、当時も今も私は、はにかんだような笑顔で「誰にとっても、おふくろの味は一番」と答えたそれを、クレバーで温かいと思っている。
それ以降、清水選手の’’言葉’’に注目してきたので、この記事も記録しておきたいと思っている。
<「金は嬉しい、銀は悔しい…」五輪金・清水宏保の解説、「実に的確」と話題 選手目線の「説得力」>
withnews 2018年2月16日 7時2分 配信より一部引用
日本人のメダルラッシュで盛り上がりを見せる平昌冬季五輪。スピードスケートの女子1000メートルでは、小平奈緒選手が銀メダル、高木美帆選手が銅メダルを獲得しました。このレースを分析した長野五輪金メダリスト・清水宏保さんの解説が「分かりやすい」「実に的確」などとツイッターで評判です。番記者として追いかけた現役時代は「孤高」の存在だった清水さん。今回解説を直接聞いて、選手目線の「説得力」と本音を語る「親近感」をあわせ持った解説者に変貌していたことを感じました。
☆アウトスタートの不利、丁寧に説明
14日の女子1000メートルを朝日新聞デジタルでの生中継で動画解説した清水さん。「ぼく、しゃべりだしたら、止まらないですよ」と最初に宣言した通り、約1時間半、レース映像を見ながらしゃべりまくってくれました。おかげで、司会として一緒に映像を見届けた私は楽をさせてもらいました。
この日、小平選手の心配点は、アウトスタートだということでした。スピードスケートの1000メートルはインスタートが有利なのです。清水さんはレースに前にそのことに触れ、理由を丁寧に説明してくれました。
「インスタートには二つの有利なポイントがある。一つ目はスタート直後の直線がアウトスタートより長く、スピードに乗りやすい。二つ目は疲れが出る最後の1周のバックストレートの交差で相手の後ろにつく形になり、相手のスピードを利用できるうえ、最後のコーナーで小さいカーブを滑ることができる。疲れた時に大きなカーブを曲がるのは、疲れるんですよ」
また、外国人選手のフォームを見ながら、「上半身、足、足首、そしてスケート靴が一直線になっている。こういうのがいいフォーム」ととっさに話す場面もありました。
小平の前に出た好タイムに「本音」
こうした内容を、笑いをまじえて話すため、ツイッターでは「わかりやすい」「金メダリストで説得力があるうえに親近感が持てる」と好反応が続々。選手の滑りを見ながら、「スピードが落ちた。もうだめですね」など、テレビ解説ではなかなか言えない「本音」も繰り出していました。
まるで居酒屋でテレビを見ながら話すような解説のなか、プロの視点が発揮されたのが、小平選手の3組前にオランダのテルモルス選手が滑った時。
1分13秒56のタイムが出ると、「うわー、小平選手に金メダルをとってほしかったのになあ。でも、まあ本番は500メートルですから」。
小平選手は、まだこれから滑るのに、「負け」を覚悟した発言。そして、画面に映った小平選手の映像を見て、「目つきがかわりました。動揺しましたね。だれだって、あのタイムを出されたら動揺しますよ。ぼくでも動揺します」と、選手の心理描写も的確に言い表したのです。
これには、ツイッターで「清水さんの解説正直すぎて、スタート前から期待もさせてもらえなかったわ」といった声もありました。
すべてのメダル獲得したからこそ言える言葉
結果はというと、清水さんの言った通り、小平選手はテルモルス選手の記録を抜くことができず、銀メダルでした。
「銀メダルは悔しいんですよ。金メダルはうれしい、銀はくやしい、そして銅はほっとする」
1998年長野五輪500メートルで金、1000メートルで銅、2002年ソルトレーク五輪500メートルで銀と、すべての色を獲得した経験を持つだけに、説得力があります。「金しかとっていない柔道の野村忠宏くんは、この心理はわからないって言ってました」
☆「孤高」も笑い話に
現役時代は、報道陣にもあまり語らず、「孤高」を貫いた清水さん。私は、長野五輪後から長年取材をしましたが、「一言」をもらうために、裏から逃げる清水さんを走って追いかけたこともありました。
今となっては笑い話。当時を振り返ると、「その方がかっこいいと思っていたんですね。現役時代からいろいろ話をしておけばよかったと、今は思っています」。そうやって素直に反省するところも、好感が持てます。
清水さんは引退後、大学院で医療経営などを勉強。最近では、札幌市で訪問看護施設と通所介護(デイサービス)施設、スポーツジムを開設するなど、地域に根ざした活動に力を入れています。
この記事の後、小平選手はスピードスケートで日本人女性初となる「嬉しい金」をとることになるのだが、その小平選手が清水選手の’’言葉’’について言及している記事を見つけた。
<小平、清水宏保氏の逸話を実感「本当にその通りで…」>サンスポ2/18(日) 22:49配信より一部引用
平昌五輪第10日(18日、江陵オーバル)スピードスケート女子500メートルで、小平奈緒(31)=相沢病院=が36秒94の五輪新記録で、日本女子スピード陣で史上初の金メダルを獲得した。2010年バンクーバー五輪団体追い抜きの銀、今大会1000メートルの銀に続く、自身3個目のメダルを手にした。
日本勢として1998年長野五輪で金メダルに輝いた清水宏保氏(43)以来の快挙を達成した小平はレース後、「宏保さんから『ゴールまでがすごくスローモーションに思える。ゴールするのがもったないと思えるかもね』という話を聞いていた。本当にその通りでリンクから会場のみなさんの笑顔が見えるかなと思ったけど、目がかすんじゃって、何も見えなかった」と明かした。
その理由を問われると「こんなにたくさんの日本の方々が応援してくれて、よくないときも必ず誰かが認めてくれていたので、それがきょう、報われたと思う。うれしい気持ちを共有できた」と声を詰まらせ、うれし涙を流していた。
そんな小平選手の’’言葉’’もいい。
『明日死ぬかのように生きよ。
永遠に生きるかのように学べ』
正確にはこれは、ガンジーの言葉なのだが、小平選手の座右の銘として今現在話題となっている。
スポーツだけでなくあらゆる分野で技術革新や変化は激しいが、偉大な先達の姿勢や言葉は、いつの時代も変わらず大きな力を持ち続けると思うので、競技の勝敗とともに、世界1を目指す選手の’’言葉’’にも注目してオリンピック後半戦も、応援したいと思っている。
1998年 長野冬季オリンピック
ノルディック複合で活躍する双子兄弟や、優勝を目前にしながら「落ちた~」とアナウンサーが絶叫したスキージャンプのリベンジなど話題に事欠かないようで、どこか盛り上がりに欠けていた長野オリンピックだが、国民の関心が一気に高まったのは、やはり清水宏保選手がスピードスケートで日本人初となる金メダルを取ったことにあると思う。
あの時の清水選手の滑りの力強さと迫力は、スピードスケートの何たるかを知らない私でも分かるほどの素晴らしいものだったが、それよりも強く印象に残ったのは、試合後のインタビューだった。
ベタというより愚問ではないかとも思えるのだが、金メダルをとったばかりの清水選手に、「今何を食べたいか」という質問が飛んだ。
「おふくろの味噌汁」
少しぶっきら棒に答える清水選手に、「お母様は、お料理が上手なんですね」との声が重なった。
それに対する清水選手の答えが、私達(一緒にテレビを見ていたウィンタースポーツ音痴達)のハートをつかんだのだ。
「誰にとっても、おふくろの味噌汁は一番じゃないですか」
長野オリンピックから20年。
時代は変わり、今ではこの答えの受け留め方は色々あるかもしれないが、当時も今も私は、はにかんだような笑顔で「誰にとっても、おふくろの味は一番」と答えたそれを、クレバーで温かいと思っている。
それ以降、清水選手の’’言葉’’に注目してきたので、この記事も記録しておきたいと思っている。
<「金は嬉しい、銀は悔しい…」五輪金・清水宏保の解説、「実に的確」と話題 選手目線の「説得力」>
withnews 2018年2月16日 7時2分 配信より一部引用
日本人のメダルラッシュで盛り上がりを見せる平昌冬季五輪。スピードスケートの女子1000メートルでは、小平奈緒選手が銀メダル、高木美帆選手が銅メダルを獲得しました。このレースを分析した長野五輪金メダリスト・清水宏保さんの解説が「分かりやすい」「実に的確」などとツイッターで評判です。番記者として追いかけた現役時代は「孤高」の存在だった清水さん。今回解説を直接聞いて、選手目線の「説得力」と本音を語る「親近感」をあわせ持った解説者に変貌していたことを感じました。
☆アウトスタートの不利、丁寧に説明
14日の女子1000メートルを朝日新聞デジタルでの生中継で動画解説した清水さん。「ぼく、しゃべりだしたら、止まらないですよ」と最初に宣言した通り、約1時間半、レース映像を見ながらしゃべりまくってくれました。おかげで、司会として一緒に映像を見届けた私は楽をさせてもらいました。
この日、小平選手の心配点は、アウトスタートだということでした。スピードスケートの1000メートルはインスタートが有利なのです。清水さんはレースに前にそのことに触れ、理由を丁寧に説明してくれました。
「インスタートには二つの有利なポイントがある。一つ目はスタート直後の直線がアウトスタートより長く、スピードに乗りやすい。二つ目は疲れが出る最後の1周のバックストレートの交差で相手の後ろにつく形になり、相手のスピードを利用できるうえ、最後のコーナーで小さいカーブを滑ることができる。疲れた時に大きなカーブを曲がるのは、疲れるんですよ」
また、外国人選手のフォームを見ながら、「上半身、足、足首、そしてスケート靴が一直線になっている。こういうのがいいフォーム」ととっさに話す場面もありました。
小平の前に出た好タイムに「本音」
こうした内容を、笑いをまじえて話すため、ツイッターでは「わかりやすい」「金メダリストで説得力があるうえに親近感が持てる」と好反応が続々。選手の滑りを見ながら、「スピードが落ちた。もうだめですね」など、テレビ解説ではなかなか言えない「本音」も繰り出していました。
まるで居酒屋でテレビを見ながら話すような解説のなか、プロの視点が発揮されたのが、小平選手の3組前にオランダのテルモルス選手が滑った時。
1分13秒56のタイムが出ると、「うわー、小平選手に金メダルをとってほしかったのになあ。でも、まあ本番は500メートルですから」。
小平選手は、まだこれから滑るのに、「負け」を覚悟した発言。そして、画面に映った小平選手の映像を見て、「目つきがかわりました。動揺しましたね。だれだって、あのタイムを出されたら動揺しますよ。ぼくでも動揺します」と、選手の心理描写も的確に言い表したのです。
これには、ツイッターで「清水さんの解説正直すぎて、スタート前から期待もさせてもらえなかったわ」といった声もありました。
すべてのメダル獲得したからこそ言える言葉
結果はというと、清水さんの言った通り、小平選手はテルモルス選手の記録を抜くことができず、銀メダルでした。
「銀メダルは悔しいんですよ。金メダルはうれしい、銀はくやしい、そして銅はほっとする」
1998年長野五輪500メートルで金、1000メートルで銅、2002年ソルトレーク五輪500メートルで銀と、すべての色を獲得した経験を持つだけに、説得力があります。「金しかとっていない柔道の野村忠宏くんは、この心理はわからないって言ってました」
☆「孤高」も笑い話に
現役時代は、報道陣にもあまり語らず、「孤高」を貫いた清水さん。私は、長野五輪後から長年取材をしましたが、「一言」をもらうために、裏から逃げる清水さんを走って追いかけたこともありました。
今となっては笑い話。当時を振り返ると、「その方がかっこいいと思っていたんですね。現役時代からいろいろ話をしておけばよかったと、今は思っています」。そうやって素直に反省するところも、好感が持てます。
清水さんは引退後、大学院で医療経営などを勉強。最近では、札幌市で訪問看護施設と通所介護(デイサービス)施設、スポーツジムを開設するなど、地域に根ざした活動に力を入れています。
この記事の後、小平選手はスピードスケートで日本人女性初となる「嬉しい金」をとることになるのだが、その小平選手が清水選手の’’言葉’’について言及している記事を見つけた。
<小平、清水宏保氏の逸話を実感「本当にその通りで…」>サンスポ2/18(日) 22:49配信より一部引用
平昌五輪第10日(18日、江陵オーバル)スピードスケート女子500メートルで、小平奈緒(31)=相沢病院=が36秒94の五輪新記録で、日本女子スピード陣で史上初の金メダルを獲得した。2010年バンクーバー五輪団体追い抜きの銀、今大会1000メートルの銀に続く、自身3個目のメダルを手にした。
日本勢として1998年長野五輪で金メダルに輝いた清水宏保氏(43)以来の快挙を達成した小平はレース後、「宏保さんから『ゴールまでがすごくスローモーションに思える。ゴールするのがもったないと思えるかもね』という話を聞いていた。本当にその通りでリンクから会場のみなさんの笑顔が見えるかなと思ったけど、目がかすんじゃって、何も見えなかった」と明かした。
その理由を問われると「こんなにたくさんの日本の方々が応援してくれて、よくないときも必ず誰かが認めてくれていたので、それがきょう、報われたと思う。うれしい気持ちを共有できた」と声を詰まらせ、うれし涙を流していた。
そんな小平選手の’’言葉’’もいい。
『明日死ぬかのように生きよ。
永遠に生きるかのように学べ』
正確にはこれは、ガンジーの言葉なのだが、小平選手の座右の銘として今現在話題となっている。
スポーツだけでなくあらゆる分野で技術革新や変化は激しいが、偉大な先達の姿勢や言葉は、いつの時代も変わらず大きな力を持ち続けると思うので、競技の勝敗とともに、世界1を目指す選手の’’言葉’’にも注目してオリンピック後半戦も、応援したいと思っている。