神業

東京発のぞみ、3号車C席に座る。
さっそく、缶ビールをプシュとあけ、
今日も一日お疲れさん、、
と、一口飲む。

至福の一時だ。

ふと、A席に座っている若者に目を向けると、
Padを開き、ぺんで何か書いている。

これは、漫画の構図か？

私はまったくの素人だが、
その線は実に力強く、迫力があった。

缶ビールを飲み終わり、幕の内弁当も食べ終わるころ、、
チラッと見ると、その線は存在感を増し、
一人の女性になっていた。

これは、プロだな、、
仕事のじゃまをしてはいけない。
そう思い、ワンカップのふたを開けた。

しばらくすると、着色に入った。

神業だ。

女性に命が宿った。

終点の新大阪で、声をかけた。

「お仕事ですか？」・・はい。

「神業ですね」・・・

酔っ払ったおっさんが何をいっているのか？
という素振りはまったく見せず、

いえいえ、、と、笑いながら謙遜し首をふった。

物事を極めた人間は、
人に対する接し方も神対応だ。

日本はまだまだ捨てたものではない。

少し寂しくもあるが、
若い世代はどんどん育っている。

若者育成などというのは、
われわれ年長者の驕りなのだと実感した。

かまえる必要はない。

今の自分に正直に向き合い
生きて行けばよいのだ。

ささやかだが、感動した瞬間だった。