葉室さんの黒島藩シリーズ三部作の一つ。
既に『陽炎の門』と『紫匂う』は読了済みなので、
この『山月庵茶会記』も読み始めた。
先日の小堀遠州の物語は、
戦国時代から徳川三代目の家光までの時代であったが、
この本は八代将軍吉宗あたりである。
自刃した妻を失い茶人になった、
主人公の心の葛藤や、
成長に焦点を当てている物語。
何だかミステリーのような作品でもある。
妻の死因に拘り過ぎて、
少しくどい感じもした小説だが、
心に響く箇所もたくさんあった。
千利休さまが茶をたてられたころは戦国の世であった。
今日、
茶を差し上げた客が明日には命を失い、
家が亡びておるかもしれぬ。
たったいま、
茶を飲むひとも明日は飲めないかもしれぬのだ。
利休さまにしても、
太閤の怒りにふれて、
明日の茶を点てることはかなわなかった。
中略
それでもわたしは茶を点てる。
なぜなら、
茶を点てる心は、
相手に生きていてほしいと願う心だからだ。
今日の茶を飲み、
明日の茶も飲んでほしい、
と思えばこそ、
懸命に茶を点てる。
そして、
茶を点てるおのれ自身も生きていようと思う。
新型コロナウィルスは、
まだ猛威をふるっているけれど、
温かな一服のお茶を飲めることに感謝して、
生きていきたい。
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