今年3冊目の葉室麟作品。
『冬姫』
冬姫について歴史的にはっきりわかっていることは、
彼女が信長の子(次女)で、
近江の蒲生氏郷(がもううじさと)の正室であったということ、
だけであるという。
小説のほうには信長はもちろんのこと、
大河ドラマ同様に、
信長の正室の帰蝶や光秀が出てくるので、
現在の大河ドラマの帰蝶や光秀の顔が浮かぶのだが、
信長だけは染谷翔太さんのお顔ではない。
この小説の中では(も)、
信長は美形家系であるとされてるので、
染谷さんの信長ではないのです。
(今回の大河では斬新な染谷信長でいいと思います)
信長は子だくさんで、
男児11人?に女児11人?もいたのですね。
この小説で、
あれっ?て思ったのは、
冬姫が帰蝶の娘として描かれてるところです。
これまで読んだ本や大河ドラマなどでは、
信長の正室には子供がいないというのが定説だったので、
驚きました。
帰蝶が「公にはできなかったが」と、
冬姫に明かす場面があるのです。
でも、
あの時代、
(いやそうでなくとも)
いろんな隠し事はあったかもしれませんね。
この本の中では、
光秀も知っているという設定なので、
そうか!あの帰蝶に子供がいたのかと、
ここでもNHK大河の帰蝶(川口春奈さん)や、
光秀(長谷川博己さん)が浮かびましたよ。
碁石に毒針が入れてあったり、
茶会のお茶に毒が入っていたり、
鼻をそがれるだの、
磔だのと、
次々とおぞましい事件が出る戦国の世。
怖い思いばかりの描写に、
救いは冬姫という主人公でした。
心映えがまっすぐで聡明であったことです。
後にクリスチャンとなった、
夫の蒲生氏郷までが、
当時としては珍しく側室を持たない、
大名だったのです。
ですので、
お市や茶々や秀吉の、
怨念や錯乱とも思える振る舞いの中で、
冬姫夫婦は清々しく感じました。
この小説の書き出しは、
「女は人を怨むと妖怪になるのです」
でした。
戦国の世ならずとも、
度を越えた怨念は自分をも傷つけますし、
周りにも良くないですね。
というわけで、
血塗られた戦国時代に一抹の爽やかさが残った、
葉室麟さんの『冬姫』でした。
以下余計な話。
日曜日、
大河ドラマ「麒麟が来る」を見ている時に、
「染谷さんの信長は、信長の雰囲気と違うよね」
と言ったら、
「お前は信長に会ったことがあるのか」
と、
爺様に突っ込まれました。
「前世でお会いしたことがありますよ」
とでも答えれば良かったな。
夫婦の会話は楽しいほうがね。
(*^-^*)