風を紡いで

旅の記録と料理、暮らしの中で感じた事などを綴っています。自然の恵みに感謝しながら…。

(22)マウント・インで昼食

2005年07月17日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
娘が追いついて来た。丘の上のパブを見て安堵したようだった。その嬉しさは言葉には表せない。ドアを開けて、最初に目に飛び込んできたのは、泥のついた2足の長靴と杖だった。さっきの夫婦連れかな?と思ってパブの中を見渡した。靴を履き替えて、入り口から左側の眺望のよい窓ぎわ席で、食事を楽しむ彼らの姿が見えた。

私たちは、思わず自分たちの足元を見た。泥まみれだった。ちょっと躊躇したあと、もう一度パブの中を観察した。すると、店内の右手奥に暖炉があり、ドリンク類を出すカウンターがあるのが見えた。

よくよく見ると、打ちっぱなしのコンクリートのような床になっていた。犬の散歩途中らしき青年や、お年寄りたちがビールを飲んでいた。ちょうど暖炉の近くに小さめのテーブル席が一つ空いていた。そこに落ち着いて、娘を見ると顔色がどうもよくないようだ。

「具合悪いの?大丈夫?」
「大丈夫だけど、疲れたぁ~」
「何か食べたら元気になるよ」

娘はあまり食欲がないらしく、野菜サラダとリンゴジュースを注文した。私はコテージ・パイと温野菜、そして地ビールにした。暖炉で暖まったパブにしばらくいたら、凍えそうだった体が少しずつほぐれてきた。しかし、娘はぐったりして目を閉じている。食べて、少し休めば元気になるだろうか…。(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お天気のいい日には

2005年07月16日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国コッツウォルズの小さな村スタントンにあるパブ「マウント・イン」。天気のいい日の外のテーブル席には、村人だけでなく近隣から訪れる人たちも加わり、おおいに賑わうという。心地いい風を受けながらランチを楽しむには、絶好のロケーション。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

坂の上から村を望む

2005年07月16日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国コッツウォルズ。スタントンのパブ「マウント・イン」の外、道を挟んだ左手にテーブル席がある。晴れた日には最高のロケーションでランチが楽しめそう…。イギリスの伝統食をつまみに飲む、地ビールの味は格別だろう。雪の舞う二月にこの地を訪れた私たちは、外での食事が出来なかった。残念としかいいようがない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(21)丘の上のパブ

2005年07月16日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スノーズヒルからスタントンに向かい、雪でぬかるんだフットパスを歩いていく。途中で休憩している年配の夫婦に出会った。軽くあいさつをして、追い越したが、またしばらくして追い越された。欧米人2人の装備はほぼ完全だったが、私たち親娘ときたら普通の革靴(一応ウオーキング用)だから、たまったものじゃない。

滑らないように一歩一歩雪道を踏みしめながら歩くのだが、ふらっ、ふらっ、つるっ…今にも転びそうで足元がおぼつかないのだ。雪は少し多くなってきた。転ばないようにますます神経を使って必死に歩く。

雪に埋もれないように気を使いながら農場を抜け、ぬかるんだ道に足を取られないようにただ歩く。アップダウンを何度か繰り返し、雪がひどくならないように祈りながらひたすら歩く。滑って転びそうになっては、手をついて転倒をさけた。疲労も限界に近くなった頃、丘の裾の方にスモークがかった緑地が姿を現したのだった。

「あそこに見えるのは、きっとスタントン!」
しかし、近くに見えたものの、目的地のスタントンに着くまでには、まだまだ歩かなければならなかった。

まだか、まだかと思いながら歩いた。時々、後ろを振り向いては娘の姿を確認する。細い泥道を抜けて、舗装道路にやっと辿り着いた。緑の木々を抜けると、そこに1軒のパブが建っていた。村を見渡せる一段高い場所にあった。看板には「マウント・イン」と書かれている。宿泊もできるパブだった。娘はまだ来ない。

「着いたぁ~!スタントンにやっと着いたよ!」

あまりの嬉しさに思わず大きな声をあげていた。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

異次元の世界・スタントン③

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
雪深いスノーズヒルからスタントンに入り、緑が多いのに驚いた。雪が舞ってはいたが、積もってはいない。雪は降ったり、止んだり…。スノーズヒルに比べ低地にあることもあり、比較的暖かった。ボケに似た赤い小さな花が咲いていたり、名前の分からない白い花も見られた。家の前の木々や草花が、蜂蜜色の石壁に映えて彩りを添えているのだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

異次元の世界・スタントン②

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
中世の騎士にあいさつ…。

コッツウォルズでも
あまり知られていない小さな村。

ここスタントンは異次元の世界…。

中世にワープしたような
不思議な感覚を味わった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

異次元の世界・スタントン①

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スタントンの小さな村に入った時、まるで異次元の世界に迷い込んだような錯覚にとらわれた。眠るように時間が止まり…。まるで童話の世界なのだ。不思議な心地よさに酔いそうな感覚といえばいいだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(20)雪原のウオーキング

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スノーズヒルからスタントンに向かって歩き始めた。イギリスの冬は寒い。2月に訪れた、英国コッツウォルズ。特に丘陵地のスノーズヒルは雪にすっぽりと包まれていて、まったくといっていいほど緑地がなかった。

B&Bで手に入れた地図を持ち、雪原を歩いていくと、どうやらフットパスの入り口らしき農場のゲートが見えてきた。標識らしきものはなかったが、地図でみるとここでいいようだ。娘が言った。

「雪の上に人が歩いた足跡もあるし、ここがフットパスの入り口かなぁ~」
「そうだね。行ってみよう!」と相槌を打つ私。

少しとまどいはあったが、ゲートを開けて中に入る。広大な農場には私たち2人のほか、人っ子一人いない。人の足跡を辿りながら歩く。農場沿いの細い道に移り、しばらく歩いて行くと、道端の木に小さい黄色い花が咲いていた。

「うわぁ~。可愛い!」
雪の中に懸命に咲いている小さないのち。少し疲れを感じ始めた2人に元気をくれるように咲いていた。結構歩いているのに、まだまだ先が見えない。そんな時に出会った小さい黄色の花が、心に活力を与えてくれたのだった。

スタントンへの道のりは、思ったより大変そうで、道を間違えていないか、少し不安になってきた。(つづく…)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(19)雪の丘陵地を歩く

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
今夜の宿は英国コッツウォルズにある丘陵地スノーズヒルのB&B「シープスコーム」。2月下旬のイギリスは寒い。ことにここスノーズヒルは雪に覆われていて、緑地が見当たらないのだ。パブで昼食をすませてから、娘が散歩をしたいというので、B&Bのオーナーから地図を購入し、スノーズヒル周辺を散策することにした。

オーナーがいくつかコースを教えてくれた。30分ほどで周辺を歩くコースやスタントンまで足を延ばす片道1時間ほどのコースなど。夕方まで時間があることだし、少し長めのコースに決めて、スタントンまでのウオーキングを楽しむことにした。

 しかし、思うようにいかないのが人生。このフットパスを使ったウオーキングが、予定にはなかったとんでもない副産物!?をもたらすことになるのだった。とはいうものの、そのおかげ(?)で絵のような素晴らしい風景とイギリス人の心の温かさに触れることになるのだが…。 (つづく…)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(18)英国の味と天使の笑顔

2005年07月14日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
料理を注文しようとしている時、ちょうど私達の席の近くに営繕関係のおじさんが姿を現した。なにかチェックをしている様子だったので、手が空いたのをみてから尋ねた。

「すみません、このお店のおすすめ料理お分かりですか?」
「いや~。この辺の者じゃないのでわからんねぇ~」
 そういうとまた作業に取り掛かった。スノーズヒルの人ではないようだった。

 
「イギリスでは、フイッシュ・アンド・チップスが有名なんだよ」
さっきまで、食欲がなかった娘だったが、目の前に運ばれて来た狐色にこんがりと揚がった、白身魚のフライと拍子切りのジャガイモを見て言った。彼女はすっかり目を奪われたようだった。魚のフライは、外側がサクサクしていて魚肉はしっとり軟らかく…たまらない美味しさなのだ。揚げたてだから、ふうふう言いながら食べた。

「私にもちょっと頂戴!」
そう言って娘が食べ始めた。食欲が出て良かったと思いながら、見ていると、少しと言ったけれど結構食べている。
「美味しいね、お母さん!」


昼時になったからだろう、パブの中が少しずつ賑やかになってきた。お年寄りが増えて、中年の夫婦や女性客もランチに集まって来た。それぞれにビールを飲んだり、食事をしたり、話し声も高くなり、パブに活気が出てきた。厨房も忙しそうだった。

「あのカウンターにいる郵便屋さん、お母さんがさっき道を聞いた人だよ」
「あの白髭をたくわえた人?」
「そうそう。彼もランチタイムなんだね」


波が引くように、パブの賑わいもいつの間にか静まった。厨房で忙しく立ち働いていたお年寄り(女性ばかり)4、5人が仕事を終えて、ちょうど私達の席の反対側の奥の席で休憩を始めたようだった。彼女たちも1人帰り、2人帰り…、それぞれ帰る場所へと散って行った。店内もかなり空いてきた。


料理を食べ終わり、食後にコーヒーを飲みたくなった。
「コーヒー頼もうかなぁ~」
「私はいらないけど、買ってこようか」娘がカウンターに行き注文してきた。

のんびりとした時間を過ごしていると、近くの席に小さな男児を連れた若い母親とその友達らしき女性が座った。ぽっちゃりとしてあまりにも愛らしかったので声をかけてみた。彼はジェームスという名で、誕生前だという。ちょうどハイハイを始めた頃らしい。

天使のようなジェームス君との触れ合いに心なごませたあと、彼らにさよならをして、コッツウォルズの小さな村スノーズヒルのパブを後にした。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

英国の丸型ポスト

2005年07月13日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国コッツウォルズで見かけた丸型郵便ポスト。日本にもかつては確かに存在していたはずの丸型ポスト。真っ赤な、どことなく愛嬌のあるポストは、どこへいってしまったのだろう…。平成になり、いつの間にか消えてしまったようだ。日本のとは、微妙に違うイギリスのポストだが、なぜか懐かしい思いにかられながらシャッターを切っていた。

日本の郵便切手に、子供が描いた真っ赤な郵便ポストがあったなぁ~、と今思い出した。可愛い絵で、大好きな切手だった。1シート購入して、大事に使っていたのだが、今では手元に1枚も残っていない。1枚ぐらいは記念に保存していたと思ったのだが…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

英国の真っ赤な通信手段

2005年07月13日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国中央部に位置するコッツウォルズの田舎を旅している時、目に飛び込んでくるのが真っ赤な電話ボックスと郵便ポスト。蜂蜜色の石壁に緑がからまり、そこに赤色がみごとに調和している。高山鉄道の真っ赤な電車のように、なんとも愛らしいのだ。緑と赤―補色の関係だから、強烈な印象が残るのだろうか…。

また、雪景色のスノーズヒルで見た真っ赤な電話ボックスも美しかった。これはまた、日本の正月を思わせた。雪の朝に真っ赤な実をつけた南天を見た時の印象に近かった。白と赤のコンビネーションが、清々しく心地よいのだ。

日本の円筒形の丸い郵便ポストはどこにいってしまったのだろう…。鄙びた田舎に行けば、ひっそりと残っているのだろうか。イギリスの「真っ赤な郵便ポスト」が、遠い昔の郷愁を運んで来るのだった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(17)スノーズヒルのパブ

2005年07月12日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
パブの中は、暖炉の火で心地よい暖かさだった。コートを脱ぎ、奥の席に陣取った。雪道を歩いてきた者にとっては、ここはまさに別天地。身も心も解きほぐされるようだった。昼前ということもあってか、客はカウンター周りと暖炉近くに数人いるだけだった。奥の席は私達のほか誰もいない。

何か注文しようと、しばらく待っていたがなかなか来ない。カウンターが見える席だったので、観察してみることにした。

「カウンターでお金を払うみたいだよ。カウンターにメニューが書いてあるかもね」と娘が言った。

どうやらセルフサービスらしい。その都度、お金を払ってはビールを飲んだり、つまみを食べたり、おしゃべりする姿が目に入った。

「何食べようか」私が言う。
「私あまり食べたくない」と娘。
「でも何か食べないとね。お母さん、ちょっと見てくるね」

カウンターまで行ってメニューをチェック。
「いろいろあるけど、お母さんはフイッシュ&チップスにしよう。同じのにする?肉もあるよ」
「私は飲み物だけでいいや」

娘にはオレンジジュース、私はフイッシュ&チップスとコーヒーをたのむことにした。注文し、お金を払うと、
「出来たら持って行きます」と若いウエートレス。


「ちょっと遅いね。まだかなぁ~」
などと言いながら、待っていると、しばらくして厨房係らしき年配の女性が料理を運んできた。

「えぇ~!魚のフライ大きいねぇ~」
大皿からはみ出さんばかりの大きさで、ただただ驚く。
「うわぁ~。すっごい大きいねぇ!お母さん!」
「美味しそう~。少し食べてみる?」
「うん!少し頂戴!」

さっきは食欲ない、なんて言ってた娘が身を乗り出した。 (つづく…)


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢のようなスタントン

2005年07月08日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国コッツウォルズ。雪の丘陵地スノースヒルを抜けた先に、小さな小さな夢のような村、スタントンがあった。宿泊も可能なバーの前から眺めた風景。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(16)雪舞う小さな村のパブ

2005年07月02日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スノーズヒルに着いたのは昼前だった。B&Bは、小高い丘の上の、眺望のいい場所にあった。建物の周辺は人影もなくひっそりとしていたが、オーナーが1人で出迎えてくれた。

「妻は今出かけているけれど、どうぞ!」
そう言って2階の部屋へ案内してくれた。荷物をほどき、くつろいでいると階下に女性の声がして、オーナーの奥さんが顔を出し、いろいろ説明してくれた。ひと休みしてから、下に降りていった。さあ昼食をどうしようか、思いあぐねている私たちに、「ランチはどうしますか?」と彼女。近くにあるパブの場所を教えてくれた。

歩いてもすぐだということなので、散歩をしながらパブに向かう。雪が降りしきる田舎道を歩いて行くと、教会はあったが、目指すパブは見つからない。雪の中、写真を撮ったりしながら探すが、なかなか分からない。スノーズヒルには、仰々しく、派手で、景観をこわすような看板は見あたらない。美しい風景に感動しながら歩く。

ちょうどその時、郵便配達の車が目に入った。その近くに、郵便物を手にした、白い顎髭を持つ背の高い男性の姿があった。渡りに舟とはこのこととばかりに、近づいて行き、パブの場所を尋ねた。

「この坂を登るとすぐそこにあるよ」と教えてくれた。

お礼を言って、なだらかな坂を登って行く。途中、道路の左側にある一軒の家の前に、初老の男性がいるのを見つけたので、もう一度パブの場所を確認しようと聞いてみた。

「ほら、そこにあるよ」
建物を指しながら答えてから、彼は家の中に入っていった。

「すぐそこにパブがあるって~」
坂の下の方で、夢中になって写真を撮っている娘に、私は大声で叫んだ。
「ここなんだね」娘が言った。

小さなドアを開けると、入り口のすぐ左にゲーム機が1台あった。その先にカウンター、内側にはウェートレスらしき若い女性を相手に、数人のお年寄りがビールを飲みながらおしゃべりしている。カウンターの反対側には暖炉、テーブル席があり、その奥にL字型にテーブル席。まだ、昼前なのでテーブル席にはほとんど客がいない。私たちは、右奥の席に向かった。 (つづく…)


※写真は、英国コッツウォルズの小さな村、スノースヒルにある唯一のパブ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする