「お母さん、一緒に映画見る?」
末の娘に誘われ、銀座で落ち合った。銀座テアトルシネマで上映していたマイク・リー監督の「ヴェラ・ドレイク」を見た。深い愛で結ばれた夫婦とその家族の強い絆が浮き彫りにされ、心の奥に響いてくる映画だった。ヴェラの秘密とは?何が善で、何をもって悪とするのか…、家族、人間、愛、道徳、幸福とは…いろいろ考えさせられた。
1950年の英国、凍てつく初秋のロンドン。家政婦の仕事をしながら、一人暮らしの母の面倒を見て、近所の人たちへの心配りを忘れない、明朗で優しい一主婦ヴェラ。夜学に通いながら仕立て屋で働く息子シド、家と工場の往復だけという娘エセル、夫スタンは弟の経営する自動車工場で働く穏やかで愛にあふれた人。家族はつつましく平凡に暮らしていた。一人暮らしのレジーの出現で、エセルは恋に落ち、互いに惹かれ合う。不器用な二人だが同じ未来を見つめるようになり、婚約するのだった。平穏でささやかな日々が続くかと思われたのだが…。
主人公ヴェラが、善意でよかれと思って無償で行っていた堕胎に手を貸すという行為…ある日を境に一転、奈落の底へ。ヴェラは罪人として裁きを受けることになるのだった。
家族の驚き、母の罪を許せない息子、ただ悲嘆にくれる娘、夫スタンは息子に向かい「母さんを信じなさい」と説得する。衝撃に打ちのめされながらもただただ妻を信じ続けるのだ。海のように深くて大きな愛…。次第に息子にも父の心が伝わり、家族は強固な絆でひとつになるのだった。
クリスマスの夜。保釈されたヴェラが戻り、家族が集まるが、なんとなく気まずい雰囲気。食事が始まり、エセルの婚約者のレジーが、「僕の人生で最高のクリスマスをありがとう。ヴェラ」と一言。その言葉で空気が変わり、皆が救われる思いになる。一筋の光が見えるようだった。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、主演女優賞はじめ数々の映画賞を受賞し、本年度アカデミー賞主要3部門(監督・主演女優・脚本賞)にノミネートされた。14もの主演女優賞を総なめにしたイメルダ・スタウントン。彼女の自然で表情豊かな演技力に圧倒され、スクリーンに釘付けになった。気になるところがなかった訳ではないが、「すべてを赦す、という真実の愛」―その描写、そこにスポットを当てるということだったのだと思うと、納得する。マイク・リー監督のファンになった。
末の娘に誘われ、銀座で落ち合った。銀座テアトルシネマで上映していたマイク・リー監督の「ヴェラ・ドレイク」を見た。深い愛で結ばれた夫婦とその家族の強い絆が浮き彫りにされ、心の奥に響いてくる映画だった。ヴェラの秘密とは?何が善で、何をもって悪とするのか…、家族、人間、愛、道徳、幸福とは…いろいろ考えさせられた。
1950年の英国、凍てつく初秋のロンドン。家政婦の仕事をしながら、一人暮らしの母の面倒を見て、近所の人たちへの心配りを忘れない、明朗で優しい一主婦ヴェラ。夜学に通いながら仕立て屋で働く息子シド、家と工場の往復だけという娘エセル、夫スタンは弟の経営する自動車工場で働く穏やかで愛にあふれた人。家族はつつましく平凡に暮らしていた。一人暮らしのレジーの出現で、エセルは恋に落ち、互いに惹かれ合う。不器用な二人だが同じ未来を見つめるようになり、婚約するのだった。平穏でささやかな日々が続くかと思われたのだが…。
主人公ヴェラが、善意でよかれと思って無償で行っていた堕胎に手を貸すという行為…ある日を境に一転、奈落の底へ。ヴェラは罪人として裁きを受けることになるのだった。
家族の驚き、母の罪を許せない息子、ただ悲嘆にくれる娘、夫スタンは息子に向かい「母さんを信じなさい」と説得する。衝撃に打ちのめされながらもただただ妻を信じ続けるのだ。海のように深くて大きな愛…。次第に息子にも父の心が伝わり、家族は強固な絆でひとつになるのだった。
クリスマスの夜。保釈されたヴェラが戻り、家族が集まるが、なんとなく気まずい雰囲気。食事が始まり、エセルの婚約者のレジーが、「僕の人生で最高のクリスマスをありがとう。ヴェラ」と一言。その言葉で空気が変わり、皆が救われる思いになる。一筋の光が見えるようだった。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、主演女優賞はじめ数々の映画賞を受賞し、本年度アカデミー賞主要3部門(監督・主演女優・脚本賞)にノミネートされた。14もの主演女優賞を総なめにしたイメルダ・スタウントン。彼女の自然で表情豊かな演技力に圧倒され、スクリーンに釘付けになった。気になるところがなかった訳ではないが、「すべてを赦す、という真実の愛」―その描写、そこにスポットを当てるということだったのだと思うと、納得する。マイク・リー監督のファンになった。