見て知るは、パンよりも強し
眼差しは、その人の心の態度を示す鏡だからこそ、眼差しを向けられた子どもにとって、恵みにも、呪いにもなる。この、跳びあがるほど嬉しくて、身震いするほど恐ろしい、眼差しの働きについて...
「見て知る」は、パンや安楽に勝る。それは人間には、何よりも希望が大事だからでしょう。
今日のエリクソンは、赤ちゃんが話題です。根源的信頼感が根源的不信感(みすず書房の仁科訳では「基本的信頼感」と訳されてしまったのが、とても残念ですね。文字から文字に翻訳するとき、こういうことがよく起こります。エリクソンの翻訳のみならず、日本における「誤訳の翻訳文化」の土壌がここにあります。しかし、私は、東北大学名誉教授の宮田光雄先生の訳語、「根源的信頼感」を選択します。)みなさん、すでにご存じのとおり、人生最初の危機で、根源的信頼感が根源的不信感に勝るとき、赤ちゃんは、「でっかい希望(根拠のない希望) Hope」というヴァーチュー、にじみ出る人間的な香り、を体得することができます。訳語は違えど、発達心理の教科書には必ず出てきますね。詳しい解説がなくても、8段階の表の中に。
その後の発達においては、話が変わって、「希望」がなかなか教科書には出てきませんね。つまらないですね。表の中に「→」があって、根源的信頼感vs根源的不信感が生涯続くことが示されるくらいでしょうか。何を言いたいのかハッキリしませんよね。
1年ほど前に、三浦雄一郎さんをずっと診ている老化予防の専門医の、下方浩史さんが、「クロースアップ現代」に出演されました。そこでは、いろんなことが教えられました。アンクルウエイト(足首に付ける砂の重り)や30kg以上はあるバックパックなどで筋力を鍛えれば、高齢者になっても、筋力はつくそうですね。また、意外に?、三浦雄一郎さんは読書家。本をよく読むからでしょうか、脳の委縮が非常に小さい、とも言います。それじゃあ、筋トレと脳トレが、老化予防のために最も効果的と言えるのでしょうか? そうではないそうですよ。最も大事なのは、「夢」だと言います。「夢みたいなことばかり言ってないで」と叱られるかもしれません。しかし、三浦雄一郎は、16000人を調査した中で、飛び抜けて「目標が明確」だったといいます。老化予防のために最も効果的なのは、人生に「夢」をもつこと、人生に明確な目標を持つことだ、と教えられます(http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3361_all.html)。やっぱり、おじいちゃん、おばあちゃんになっても、大事なのは、赤ちゃん同様「希望」だということが分かります。
なぜ、希望を持つと、いいんでしょうか? 皆さん、「そんな当たり前のことは考えない」といわれるかもしれませんね。「いいものはいいものだ」と同語反復(トートロジー)が聞こえてきそうです。
それは、希望があると、心が定まるからでしょう。逆に申し上げれば、心が定まらないうちは、希望など持てない、ということでしょう。感覚情報を最初に統合するのは、視覚である、と言ったのは、スピッツでしたね。エリクソンが紹介していましたから。しかし、これは赤ちゃんの時だけではなくて、おじいちゃん、おばあちゃんになってからも、感覚情報に統一を与えるものは、視覚のようですね。何よりも夢が必要なんですから。
そういう意味では、人間は、「揺りかごから墓場まで」、“ 根拠のない、でっかい希望 Hope” が、イチバーン大事だってわかります。
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