エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

#偽物の重鎮シリーズ最終回 #能動的選択の法則

2017-07-04 03:34:15 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 

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 改訳版が,原著をひどく歪めていることがお分かりいただけたと思います。改訳者が,「エリクソン研究の第一人者」との偽看板とは裏腹に,エリクソンの言わんとすることがあまり理解できていないことも,お分かりいただけただろうと思います。

 先ほどの,ヴァン・デ・コーク教授の本のブログでも記しましたように,フロイトの教科書とその内容は,精神分析では常識です。しかし,この改訳者には,その常識さえ通じないことを示しましょうね。翻訳を2つ載せるのは,非常に手間がかかりますから,今宵でひとまず,この『偽物の重鎮』誤訳シリーズは,最終回といたします。

  今宵のエリクソンも、Insight and Responsibility 『自分を内省していたら、相手の気持ちがまるで手に取るように、スゥーッと理解来ますし、相手の気持ちに応答できますから』の、p.232 ,最後のパラグラフ。 また,ゴールデンルールの論文です。改訳版の翻訳者が,精神分析の常識的なactiveと一番大事なキーワードのmutualityactivateinitiativeを理解してないことを示します。今宵も,皆さんにも実際どれくらいひどい翻訳なのか,より明瞭に理解していただくためにも,原文も示すことにしましょう。

 

 One more proposition must be added to the developmental and to the generational one, and to that of mutuality. It is implied in the term "activate" and I would call it the principle of active choice. It is , I think, most venerably expressed in St. Francis's prayer. "Grant that I may not so much seek to be consoled as to console; to be understood, as to understad; to be loved as to love; for it is in giving that we recievd." Such commitment to an initiative in love is of course, contained in the admonition to "love the neighbor."

 色付けは比較のためです。

まず,私の翻訳です。

 発達の上の黄金律でも,次の世代を育てるうえの黄金律でも,また,≪互恵的なやり取り(お互いさまの関係,恵みの分かち合い)≫の黄金律でも,付け加えなければならないことが,もう1つあります。それは,『自分から行動を始める』という言葉で,言わんとするところですが,私はそれを「能動的な選択」の法則と呼びたいんですね。その最も尊い表現は,聖フランシスコの祈りにある,と私は考えます。その祈りとは「神様,私は,慰められるよりも,慰めることを,理解されるよりも,理解することを,大事にされるよりも,大事にすることを,求めるものでありますように。なぜなら,与える時にこそ,私どもは恵みを受けるのですから」です。このように,人を大事にすることにおいて,自分から行動を始めることに自分を掛けてみることは,もちろん,「(自分を大事にするように,)あなたが,貧しくされた(隣)人を大事にしなさい」という聖書の勧めにも,含まれています。

 

 次にあの方の改訳です。

「これまで述べてきた発達的・世代的な相互性(ミューチュアリティ)に加えて,さらにもうひとつ仮説を付け加えたい。これは,「精神的に活性化するactivate)」ということばで表現されるものである。私はこれを積極的な選択の原則(the principle of active choice)と名付けている。聖フランシスコの祈りの中に,最も崇高な形でこれは示されている。彼の祈り。『神よ,願わくば,他人(ひと)を慰めると同じように,他人(人)から慰めを求めず,他人(ひと)を理解するのと同じように,他人(ひと)からは理解されることを求めず,愛するのに同じだけ,愛されることを求めることがありませんように。与えることの中に,受けるものがあるのですから』。自分からまず愛を与える積極的な態度は,もちろん,『あなたの隣人を愛せよ』という戒めの中にも含まれている」(p.240)

1)提案は, to the developmental and to the generational one, and to that of mutualityの3つにされているのに,それが誤訳されています。これは, to the developmental and to the generational one, and to that of mutualityの中のandが,何と何を並列しているのか分からない,という≪等位接続詞のand≫のという初歩の文法が分からないが故の誤訳です。

2)mutualityについては,すでに述べましたので,繰り返しませんが,相互性とするのは誤訳です。

3)activate は,「精神的に活性化するactivate)」とするのは誤訳です。act,activateはあくまで行動なのですから,「自分から行動を始める」という意味です。聖書の言葉を引用するときにも,『人を大事にすることにおいては,自分から行動を始める』といって,自分から行動を始める」の大切さを言っていますでしょ。これは,この改訳者が,キリスト教の信頼を知らないからだと思います。信頼を「精神的に神様を信頼する」ことだと誤解しているからです。ご存知のように,本田哲郎神父様が教えてくださるように,神様を信頼する信頼は「信じて歩みを起こす」という行動です。

4)さっきの,ヴァン・デ・コーク教授のブログでもふれたとおり,active choiceを「積極的な態度」とするのは,完全な誤訳です。第一,聖フランシスコの祈りは,受動よりも能動を選択します,という祈りでしょ。ですから,ここは,「「能動的な選択」の法則」となります。

 

 大事な点が,ことごとく理解していない,偽りの重鎮です。

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