エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

子どもの苦難、および、二律背反する遊びの、たった一つの目的…

2013-06-26 05:28:51 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 子どもは、目の前にいると同時に、心の中にもいる、ということは、心に銘記しておいて良い命題であり、子どもに対する大事な見方だと思います。今日は別の見方が紹介されます。

 

 

 

 

 「進化論的な気付き」というものがあるとすけば、それによって示されるのは、幼く、陽気で明るいことによって人を喜ばせること自体は、本能的な反応の一種、種が生き延びる必要性、人間の赤ちゃんが極端に危険な状況にあることを中和するものして、私どもが生まれながらに備えていることかもしれない、ということです。しかし、他方ではまた、「歴史的な気付き」によって私どもの心に残るのは、子どもの頃の、この潜在的に人を喜ばせることや人を信頼するきもちが、身体的虐待、経済的搾取、心理的拷問から、子ども達をいつも守ってくれる訳では決してない、ということです。子どもの時期の研究の新しい傾向は、実際、子どもの時期の歴史が悪夢であり、私どもはようやく最近になって、そこから目覚めつつあることを教えられているくらいです。

 そこで、遊びの目的は、人間の遊びを研究する上で必要不可欠な要素ですし、「遊び」という言葉自体が、矛盾する様々な使われ方をしているという観点から見ても良いのかもしれません。私どもはフェアプレー、すなわち、正々堂々たる態度で競技に臨むことを強調しますが、それは私どもが、フォールプレー、すわなち、狡い態度に傾きやすいことを、私どもが自覚しているからでしょう。私どもは陽気に明るくフリをすることができますし、王様のように「~かのように」振る舞うこともできるところでは、「一つの役割を演じる」ようになるのですが、同時にその役割によって、自分自身、騙されるようにもなりますLudere(ラテン語で「遊ぶ」の意味の言葉)という言葉そのものが、人間が陽気で明るいことによって幻(il-lusions)を見たり、空想が妄想(de-lusion)になったりすることを示しています。しかも、私どもは他人を騙す(de-lude)ために、何人かの人たちと共謀(col-lude)する場合だってあります。同様に、もしも、あらゆる無邪気な遊びに一つの「筋」があるとするなら、一人の筋立てを作る人の計画にも、同様に筋が一つあるはずです。ついでに申し上げれば、計画や青写真には一つの目的があるのなら、計画を立てる人達にも、他者に対する目的が同様に一つあるはずです。そこで、私どもは、家族の中でやり取りを求めたり、仲間の中でやり取りを求めたりする本性を、人間が利用するときに、そのやり取りの攻撃的な側面とごまかしの側面が、生育歴上どこに源があるのかをしっかり捉えるようにならなくてはなりません。というのも、そのやり取りこそは、後々の人生において、政治上の体制にもなれば、政治上の破壊にもなる基になるからです。しかも、やり取りが体制になるか破壊になるかは、やり取りを最も流行りのやり方で用いても、合法的に見えるやり方で用いても、変わりがないのです。これらすべてを一つ一つハッキリさせるためには、まず手始めに、遊びの攻撃的側面を、攻撃の陽気な側面とともに、議論することが非常に重要です

 

 

 

 

 子どもの時期は、歴史上ずっと、厳しく苛酷な時期だった、とするのは、ロマンチストには認めがたいことかもしれません。あるいは、子どもに直接関わる人は、子どもの時期を厳しく苛酷な時期としないために、自分の関わりがある、と思いたいでしょう。しかし、子どもの時期は、厳しく苛酷な時期になりやすい時期であることを、こころに銘じて、ハッキリ意識していることはとても重要です。ひとりひどりの子どもが、「良い子供時代だった」と感じられる関わりを、大人がするためには、大人の方に「子どもの時期は厳しく苛酷な時期になりやすい」という自覚が必要だからです

 遊びの目的はいったい何なのか?遊びは、二律背反の様々な使われ方をしますし、その意味するところも広範です。しかし、遊びをするためには、遊び場とルール・約束が必要です。遊びの場とルール・約束のことをエリクソンはここでは「一つの筋 a plot」と呼びます。さらには、遊び場とルール・約束を決める人には、「一つの、筋立てを作る人の計画 a plotter's schema」があり、その計画を立てる人には、さらに、「目的が一つ a design」あるといいます。それが、遊びの目的です。つまり、遊びのたった一つの目的は、家族の中でやり取りをすることであり、仲間の中でやり取りをすることです

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