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ヴァン・デ・コーク教授の The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『大切にされなかったら、意識できなくても、身体はその傷を覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』
6章。「身体を失くすと,本当の自分も失くすよ」,p.102の,第4パラグラフから。その前も一緒に。
生きている実感を失う病
自分が生きている実感を忘れる梯子を(訳注:アレキサイミア 失感情語症から)もう一段下ったのが,生きている実感を失う離人症です。これは,自分が生きている実感を失う病です。ウテの脳画像は,第4章でみたように,空っぽで,生きている実感を失う病をはっきり示していましたね。生きている実感をなくす病いは,トラウマを負わされた体験をしている間では,よくあることです。むかし,自宅近くの公園で,夜,襲われて,意識がもうろうとして,雪の上に倒れ,手に小さな傷を負って,ナイフを手にした10代の若者3人に取り囲まれていたことがありました。手の小さな刺し傷の痛みも忘れて,少しも恐れずに,私は,空っぽの財布は返してくれ,と落ち着いて交渉していましたっけ。
私がPTSDにならなかったのは,他の人たちを相手に,非常に詳しく研究してきた,1つの経験に強い関心があったおかげであり,警察に見せるために,私を襲った連中に絵を描かせることができる,と思ったからでもあります。もちろく,連中は1人もつかまりませんでしたけど,仕返しをしてやる,と空想したおかげで,私は生きがい感を満足できたんです。
トラウマを負わされた人たちは,あまり幸せではありませんから,自分の身体とはバラバラになっていると感じます。生きている実感を失う病を上手に示した良い例は,ドイツの精神分析家,ポール・シルダーが,1928年にベルリンで出版したものです。シルダーは「生きている実感をなくした人にとって,この世の中は,馴染めないもの,変なところ,未知な世界,実感がない場所です。物事は,奇妙にも,大きさが小さくなるような気がする場合もあれば,活気がないなぁという気になる時も,あります。音は遠くから聞こえてくるような気がします。…いろんな気持ちは,同じように,コロコロ変わります。患者さんたちは,痛みも喜びも体感できない,とこぼします。…いろんな気持ちが,当事者にとって馴染めないものになっているんです。」と書いています。
ジュネーブ大学の神経科学の研究グルーブが,側頭頭長接合部の特定部位に弱い電流を流すことで,同じような幽体離脱を引き起こせることに,私は魅了されたことがあります。ある患者さんのケースでは,同様の電気刺激で,天井からぶら下がって,自分の身体を見下ろしている感覚が生じました。別の患者さんのケースでは,同じ電気刺激で,自分の背後に誰かが立っているという不気味な感覚が生じました。この研究によって,私どもの患者さんたちが教えてくれていたことが,なるほど本当だ,と分かりました。すなわち,本当の自分が身体から離れて,それ自体が,1人のお化けみたいに生きている,ということです。
無意識の圧倒的な力ですね。お化けさえ生み出すみたいでしょ。
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