エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

「普通に見える」子どもたち

2014-10-18 06:48:31 | エリクソンの発達臨床心理

 

 ある保健の先生から、「小学校では『普通に見える』子どもが、中学・高校になると、なんでいろんな問題が出てくるんですか?」と問われたことがあります。これは、実に深い問いかけだと感じました。今日はそのことを少し考えてみたいと思います。

 その時に私は「子どもたちは、≪本当の自分≫を出すことができずに、『良い子を演じる』ことを学んでしまっているからです」とお答えしました。しかし、それには更なる説明が本来必要ですが、それは十分にお話することができませんでした。

 人は誰でも、自分自身、すなわち、≪本当の自分≫を生きたいと願っています。それは最深欲求の一つと言ってもいいのではないかと私は考えます。それが叶わないから、思春期以降に様々な形で、「問題」が出てくるんですね。

 子どもが「演じる」「ふりをする」ことを学ぶのは、幼児後期、3才~5才くらい。それは「悪い子」と言われたくないからですね。それで「良い子を演じること」、「良い子のフリをすること」を学ぶんですね。それが小学生になっても、それ以降になっても続くんです。そして、大人になったら、「会社の方針や上司の意向に対して、NOと言わないサラリーマン」という形になるわけです。

 しかし、「良い子のフリをする」ことは、その前の段階、すなわち、幼児前期、1才半~3才の頃に、≪本当の自分≫(オート auto)を自分の行動指針とする(ノモス nomos)、すなわち、オートノミー autonomyが身に付いていないからなんですね。1才半~3才の頃に、≪本当の自分≫を出すことよりも、出さないこと(我慢すること)を優先する子育てをされてきたからなんですね。これは、子どもがその子どもなりに自己コントロールすることを学ばないで、親から他者コントロールされることを、無理やり飲まされているからなんですね。

 ですから、私どもは、幼児前期の子どもが、≪本当の自分≫を出せるように、幼子に対して寛容に、鷹揚に、関わることがとても大切です。そして、大人が幼子に対して、寛容に、鷹揚に、関わるためには、大人が、その幼子と自分自身を信頼し続けること、が何よりも必要なんですね。

      いまは、赤ちゃんの頃にお母さんが仕事をしなくてはならなかったり、子育てを1人でやらなくっちゃならなかったりして、赤ちゃんが、温もり豊かで、見通しのあるやりとりに欠ける場合があまりにも多いので、半分ほどの子どもが、発達トラウマ障害DTDですから、すなわち、発達トラウマ障害DTDが、パンデミックですから、信頼に課題が大きな子どもだらけです。

 結局、私どもは、子どもの育ちを、信頼が課題だった、赤ちゃんの頃まで遡って、丁寧に育ち直しを支援しなくちゃぁ、ならない、というわけですね。

 

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