エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

精神疾患の総合デパートになった、いまの日本

2014-06-30 05:05:08 | エーリッヒ・フロムの真まこと(の行い)

 

 フロムによれば、愛着はお母さんに対するものから、お父さんに対するものへと発達し、この二つが統合するところに、子どもの愛着が健康になる秘密が隠されているようですね。

 今日は、p42の3行目から。

 

 

 

 

 不安神経症になる一つの原因は、男の子の母親が、子どもをかわいいとは思っていても、甘やかせすぎだったり、エバッタりする母親である場合で、しかも、父親が弱くて、子どもに無関心である場合です。こういうケースでは、男の子は赤ちゃんの時の母親に愛着することにこだわったままなんですね。その男の子は、いつまでも母親に甘え、頼りなく感じて、指示待ち族になろうとします。つまり、受け身で、守ってもらい、世話を焼いてもらわなくちゃならない人になっちゃって、父性が全くありません。すなわち、規律もなければ、独立心もありませんから、自分で人生を切り開いていくことができません。誰彼かまわず、「甘えられる人」を探すかもわからないし、権威や権力のある人なら、男にでも女のにでも、甘えようとします。たほう、母親が冷淡で、反応が鈍くて、エバっている場合、男の子は、母親から守ってもらう代わりに、父親か、父親代わりの人から守ってもらうようになります。この場合も最初のケースと同様になるか、あるいは、父親にだけベッタリした人物になっちゃいます。そういう人は律法や秩序や権威ばかりを大事にして、掛け値なしに人を大事にすることを期待することも、受け止めることもなくなります。こういった発達がさらに強まるのは、その父親が権威主義的で、しかも、その息子に強く愛着を感じている場合です。こういった不安神経症になるケースは、おしなべて、一つの原理が、それが父性原理であっても、母性原理であっても、うまく育たなかった場合でして、これはもっと重篤な不安神経症の場合なのですが、母親の役割と父親の役割がゴチャゴチャになっています。外側の人間に関しても、心の中の役割に関しても、母親と父親がゴチャゴチャになっているんです。さらに詳しく調べますと、ある種の不安神経症、たとえば、強迫神経症になるのは、父親にだけ愛着のあるケースですし、他方、他の不安神経症、たとえば、ヒステリーやアルコール依存症になるのは、自分自身を上手に表現できずに、人生の現実に対処できないケースですし、鬱になるのは、母親にだけ愛着がある場合なんです。

 

 

 

 

 フロムによれば、愛着がうまく育たないと、強迫神経症、ヒステリー、アルコール依存症、ウツと言った、様々な精神疾患を患うことになります。母親に対する愛着と父親に対する愛着が共にうまく育ち、しかも、両者がうまく統合されると、心がまとまって、健康な心が生まれるのですね。

 今の日本は、そういう意味では、あらゆる精神疾患の「総合デパート」の観がありますね。フロムが挙げた精神疾患になる前に、今の日本では、多くの子どもが「愛着障害」を顕著に示しているんですね。

 

 

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