新国立歌劇場の「パルジファル」初日。
素晴らしいワーグナーだった。幕を重ねるごとに密度が濃くなった。
第1幕こそ、まだ温まらない真空管アンプのようにオケの鳴りが悪く、いまひとつ乗りきれなかったものの、第2幕からはオケの音に血が通い始め、第3幕に至っては至高の名演。
聖金曜日の音楽、その意味をはじめて知った、というより、全身全霊をもって体験した。
まだ、4公演を残すので、具体的な記述は避けるが、
歌手、コーラス、オーケストラ、指揮、演出が渾然一体となった素晴らしい舞台であった。
飯守泰次郎にも感服。昨年の二期会公演には少々の不満もあったのだが、今回の第3幕は本物だった。
歌手陣の素晴らしさについては、ここに記しても差し支えあるまい。
なんといっても、トムリンソンの歌い演ずるグルネマンツには圧倒された。トムリンソンはグルネマンツを演ずるのではなく、グルネマンツそのものだった。
彼と共に「聖金曜日」の奇跡に立ち会えたことは、なんと幸せなことだったろう!
そして、ヘルリツィウスのクンドリー!
幕毎にキャラクターを激変させたのは、もちろん、クプファー演出の為せるワザだろうけれど、本当にそれを見事に体現していた。特に「聖女」となった第3幕の美しい佇まいには胸打たれずにはおれなかった。
そして、フランツのパルジファルも、まこと「穢れなき愚者」であった。
クプファー演出も美しかったが、これについては、残る公演の聴衆のために書かないでおこう。
せめて、もう一公演聴きたいが、スケジュールがそれを許さない。
5日は愛知祝祭のブルックナー稽古、8日は長岡混声のマタイ稽古。さらに、11日の井上道義先生ご復帰公演のブルックナーには駆けつけないわけにはいかない。
唯一の可能性は、14日のゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管を諦めること。
フレイレとのブラームスピアノ協奏曲2番とショスタコーヴィチ「8番」。
うーん、かなり魅力的だが・・・・、それも有りかも。