関東周辺の温泉入湯レポや御朱印情報をご紹介しています。対象エリアは、関東、甲信越、東海、南東北。
関東温泉紀行 / 関東御朱印紀行
■ 渋川温泉 「保科館」 〔 Pick Up温泉 〕
渋川温泉 「保科館」
※ 2009年10月末をもって閉館。以下は営業時のデータ。
住 所 :長野県茅野市北山5513
電 話 :0266-67-2319
時 間 :10:00~19:00(事前確認要)
料 金 :800円
■ 紹介ページ (@nifty温泉)
なんと、蓼科でもお気に入りのお湯だった渋川温泉「保科館」が2009年10月末をもって閉館していました。
(超マヌケにもいまのいままで知らんかった(泣))
このところ蓼科の未湯源泉攻撃に忙殺されて、足を向けられなかった隙に閉館とは・・・。
十何年も前に日帰りで入って、お湯のよさに魅せられて泊まってしまったこと。
誰もいない温泉プールでハダカで泳ぎ回ったこと。
晩秋の平日、二組しか泊まり客のいない館内で、夜、トイレや浴場に行くのがやたらこわかったこと。
通りかかるごとに吸い寄せられるように入浴を繰り返したこと。
どれもこれも、いまとなってはいい思い出となりました。
蓼科の南側、R299メルヘン街道と並行して走る県道191渋ノ湯堀線沿いには、渋の湯(入湯済、未レポ)、渋御殿湯、渋川、渋・辰野館、明治など古くから知られる温泉が点在し、”奥蓼科温泉郷”と呼ばれています。
北八ヶ岳のゆたかな自然に囲まれ、いずれも落ちついた佇まいをみせています。
渋御殿湯はハイカーや登山客、渋・辰野館はロハス&ネイチャー系、横谷は団体観光客など、ポイントを絞って集客しているのに対し、渋川 「保科館」はいまいちターゲットが絞り切れていない感じはしていました。
(それが逆に、のんびり力の抜けたよさにもつながっていたのですが・・・。)
このお湯は渋川の右岸にあり、”奥蓼科温泉郷”の他の宿とはちがってR299メルヘン街道経由のアプローチとなります。
アプローチは込み入っていますが、R299から出ている誘導看板にしたがって行くと自然に着きます。
渋川を見下ろす高みに立つお宿で、北側には”こまくさ平”と呼ばれる別荘地が広がります。
母屋は新館でなかなか綺麗、廊下を渡ると木造の趣ありすぎの旧館で、わたしはここに泊まりました。
浴場は旧館からさらに渋川に向かって降りていったところ。
木造の長い階段をぎしぎしと音を立て下っていく風情あるアプローチ。
【写真 上(左)】 脱衣所
【写真 下(右)】 内湯-1
脱衣所はそこそこゆったり。
内湯は天然の岩?を背追ったもので、天井ひくく窓もちいさく洞窟風呂のよう。
赤みかげ石枠タイル貼7-8人の内湯がひとつ。
【写真 上(左)】 露天入口
【写真 下(右)】 露天からの眺め
扉の外は別世界。一気に開放感あふれる露天が展開します。
石枠コンクリ?敷7-8人の露天とその下に立派な温泉プール、その下が渋川の流れになっています。
プールのよこに赤茶に色づいた湯滝?があって、これは源泉の一部を流しているのだろうと思います。
【写真 上(左)】 露天とプール
【写真 下(右)】 湯滝
温泉プールは晩秋でもお湯が湛えられていて、ぬるめながら入ることができました。
露天からの排湯の流れ込みとべつにパイプからの大量投入。
プールなのにところどころ石灰華がでているのが笑えます。
この投入湯は浴槽のお湯よりぬるく、金気臭がつよくてこげ臭がよわいので別源泉かもしれません。
【写真 上(左)】 クロレラ色のプール
【写真 下(右)】 露天
場所にもよりますがたいてい30~36℃くらいのぬる湯で、光線の加減でクロレラ色にも見える湯色はなかなかインパクトがあります。
プールなので当然水着着用ですが、露天からもふつうに歩いていけるので、何度かハダカで突入し泳いだこと(^^;)があります。
ここには、そんなおおらかな空気が流れていました。
ただ、夏場の一時期はアブが発生するので、露天は戦場と化しますが・・・(笑)
【写真 上(左)】 内湯-2
【写真 下(右)】 内湯の湯口
内湯は茶クリーム色の石灰華と変色のついた岩の湯口からやや熱湯を40L/minほども大量投入し、槽内注排湯不明で切欠からの上面排湯。
掲示やお湯の感じからして文句なしのかけ流しでしょう。
【写真 上(左)】 露天の湯口
【写真 下(右)】 露天の石灰華
露天は岩の上のパイプからの大量投入で、ここも浴槽まわりはところどころ茶クリーム色の石灰華に覆われています。
槽内注排湯不明でプールに向けてのパイプ経由の排湯、ここも掲示やお湯の感じからしてかけ流しかと・・・。
カラン8、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。
よほどのトップシーズンでなければたいてい空いています。
【写真 上(左)】 掲示
【写真 下(右)】 やっぱりケロリン桶
湯温は内湯でやや熱め、露天でほぼ適温。
お湯は緑がかった茶色にうすにごり、露天では茶と黒と白の湯の花が大量に舞っています。
重曹味+金気だし味+旨味に微炭酸味さえもまじえた鮮度よい重炭酸土類泉系の味。
つよいこげ臭によわい金気臭が加わってこれも重炭酸土類泉的。
表にはでていませんが、うらでイオウが効いている感じの複雑なお湯です。
成分濃度1.2kg/mgとは思えない重厚さとやわらかさが絶妙に同居し、成分がからだに染み込んでくるような独特な浴感があり、クセになるあと曳き湯です。
温まり感がたいへんにつよく、夏場はときおり水カランの水を浴びながらの入浴。
蓼科ではもっとも温まりのつよいお湯だと思います。
【写真 上(左)】 泉源?-1
【写真 下(右)】 泉源?-2
見た目や表面的な浴感は重炭酸土類泉ですが、うらで硫酸塩があと支えしているので、お湯に奥行きと力感があります。
このあたりのイメージは、群馬の赤城温泉に似ているかな?
酸性泉と硫黄泉がメインの蓼科で、この泉質はするどくキャラが立っています。
石遊の湯も重炭酸土類泉的キャラですがこのお湯とは比較になりません。
あえて近いお湯を挙げるとすれば横谷温泉(入湯済、未レポ)かな・・・?
個人的に重炭酸土類泉が好きなので、よけいに評点が甘くなってしまうのですが、やはり蓼科を代表する名湯といっても差し支えないかと・・・。
このお湯にもう入れないとはかえすがえすも残念、いつか再開して、ふたたびこのすばらしいお湯にまみえることを願ってやみません。
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このところ湯づかいのいいお宿がつぎつぎと廃業しています。(鬼怒川の名湯「元湯 星のや」も廃業の情報あり。)
2008年10月1日、観光庁が設立。
観光立国だ、インバウンドだ、観光カリスマだ、アドバイザリー・ボードだと、マスコミ映えのする政策は華ざかりですが、そのかげで観光の基盤を支えるかけがえのない資源が日に日に消え去っていきます。
幾多の不況を乗り越え、何十年もつづいてきたお宿たちがどうしてここ数年で相次いで力つき、瓦解していくのでしょうか。
かつて、ビジネスはFace to Faceで進み交通も不便だったために、ビジネス客は頻繁に地方の宿に泊まりました。
ビジホもカプセルホテルもまだまだ浸透していなかったので、彼らは往々にして温泉宿を常宿とし、それを”役得”として許す風潮がありました。(いまなら出張で温泉宿に泊まったりしたら、ふつうに”コスト管理意識希薄”で人事ポイント-1か・・・(笑))
Webが浸透し、交通は至便になって、よほどの事情がない限り出張は原則日帰り、いや、出張でさえもWeb会議の導入などで減少の一途です。
かつて温泉は「泊まりに行かなければ入れないもの」でしたが、いまは平日、仕事のあとでもふつうにスパ銭で温泉に入ることができます。
しかも、その泉質や湯づかいは有力温泉地に比肩するものさえすくなくありません。(設備は圧倒的にこちらのほうがいい。)
かろうじて残された観光宿泊ニーズは、一部のゲキ高コンセプト旅館と外資を含む大規模資本が展開する365日均一格安料金のゲキ安チェーン宿に吸収されていきます。
廃業ラッシュの背景には、こういったマーケットの構造的な縮小があります。
よくいわれる後継者問題にしても、じつはお宿個別の問題ではなく、宿泊業そのものの将来に希望がもてないから後継者が育たない(育てない)のです。
いうまでもないことですが、すべてのお宿がコンセプト(あるいはデサイナーズ)化し、経営者がカリスマ化し、インバウンド対応することなど、できるはずがありません。
だから、もっと根本的なセーフティーネット(たとえば戸別所得補償制度的な)がどうしても必要になるのでは?
もっとも政府の基本姿勢が、観光業は第一次産業とちがい基幹産業じゃないから優勝劣敗でマーケットに適応した「勝ち組」だけが残ればいい、という方向ならばまったく不要なのかも知れませんが・・・。(でも、地方に対するマーケットニーズはもはや第六次産業にあるので、ほんとはそんなこといってる場合じゃないけどね。)
中心市街地にせよ休耕田にせよ、一度疲弊・荒廃してしまったものをもとに戻すことは容易ではなく、温泉地や観光地もまた然りです。
いくらインバウンドのインフラがととのっても、受け入れ先が疲弊し、荒廃してしまってはなんの意味もありません。
期待される中国人観光客にしても、現時点で彼らの多くが求めるアメニティは和風旅館ではなくホテル型で、和食会席ではなくバイキングです。(彼らの食べる量からすると、ちんまりとした和風懐石ではとても満足できない。だから鬼怒川や塩原のバイキング箱形ホテルは期せずして(?)彼らのニーズに合っている。)
もちろん日本通観光客として成熟してくれば、『YOKOSO! JAPAN』的な、和風旅館で会席料理というニーズも当然求められてくるでしょうが、それはたぶんまだ先のはなし。
観光地の今後の成否にとって、いまが本当の正念場だと思うのですが・・・。
■Bienvenido a Japon-YOKOSO! JAPAN-ようこそ日本
〔 源泉名:渋川温泉3号泉と渋川温泉の混合泉 〕
Na-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 41.9℃、pH=6.14、湧出量不明、成分総計=1291mg/kg
Na^+=218.9mg/kg、Mg^2+=8.3、Ca^2+=19.1、Al^3+=2.3、Fe^2+=4.4、Cl^-=107.8、HS^-=-、SO_4^2-=256、HCO_3^-=263.0、陽イオン計=298.1、陰イオン計=628.7、メタけい酸=117.4、メタほう酸=8.3、遊離炭酸=238.0、硫化水素=痕跡 <H6.4.21分析>
※ 以前露天で話し込んだ常連さん(お湯がいいのでちょくちょく茅野から入りにきているとのこと)によると、掘削泉を含む源泉を何本か混合して湯温調節しているそうです。
じっさい、お宿の周辺にはいくつか泉源?らしきものがありました。
<温泉利用掲示>
ここの館内温泉は全部かけ流し天然温泉です。ゆっくりお入り下さい。
加水:なし 加温:なし 源泉かけ流し(放流式) 殺菌剤使用:なし
〔 2011/01/08UP (2006/09入湯) 〕
E138.18.2.072N36.2.10.529
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〔 温泉地巡り 〕 やぶ(藪)塚温泉
久しぶりに『温泉地巡り』シリーズです。
〔やぶ(藪)塚温泉について〕
<プロフィール>
老舗の湯宿数軒からなるやぶ塚温泉は、東毛エリア随一の歴史ある温泉地です。
さしもの広大な関東平野もこのあたりまでくるとようやく丘陵をまじえ、ここもなだらかな丘陵のはざまにあります。
周辺には木枯紋次郎ゆかりの三日月村、マニアックなジャパンスネークセンター(個人的にはかなり面白かった(笑))に旧石器時代の岩宿遺跡など、多彩な観光資源があります。
【写真 上(左)】 アプローチのサイン
【写真 下(右)】 温泉街
このあたりの名物は紅こだますいか。たくあんや大根干しの味のよさにも定評があります。
かつては東毛を代表する温泉地であったやぶ塚温泉も、近年はマスコミはおろか温泉好きのあいだで語られることも稀になりました。
のどかな農村風景となかなかに滋味のあるお湯、古い歴史と個性的な観光資源をもつ温泉地なので、あらたな活路を見いだしてほしいものです。
<歴史>(温泉神社境内の掲示などを参考)
「その昔、やぶ塚の地では、巨石の割れ目からこんこんと湯が湧きいで、里人は病を治す湯場としてつかっていた。ある日、葦毛の馬が飛来し、一声高くいななくと(一説に、湯に飛び込むと)、嵐を巻き起こしつつ天に舞い上がり、それ以来、やぶ塚のお湯は冷泉に変わってしまった。
里人は嘆き悲しんだが、村の古老の夢枕に薬師如来が現われ、『悲しむことはない、この水を温めて湯浴みすれば、万病がたちどころに治り長寿をまっとうできる。』とのお告げがあった。これをきいた行基上人は、やぶ塚のお湯の効能を各地に広く伝えられた。」
この説話をうけて、やぶ塚温泉の開湯は天智天皇の御代、行基上人によるものとされています。
また新田義貞が鎌倉攻めの折、兵士を湯治させたことにちなみ、”新田義貞公の隠し湯”とも伝えられる、趣ふかい歴史に彩られた古湯です。
これらの歴史を物語るように背後の山裾には温泉神社(かつては湯権現と呼ばれ、本尊は薬師如来だったらしい)が祀られています。
【写真 上(左)】 藪塚温泉神社
【写真 下(右)】 温泉神社の額
近代のやぶ塚温泉の沿革がなかなかとれないので、ここからは勝手な推測です。
やぶ塚温泉のある旧藪塚本町は、桐生・太田・伊勢崎など北関東有数の物産の集散地に囲まれていたため、多くの旅客を迎えたものと思われます。
また、これらの街の奥座敷としてつかわれたことも容易に想像できます。
【写真 上(左)】 温泉の縁起書
【写真 下(右)】 温泉神社から温泉街
また、東京方面からの交通の便も比較的よかったので、週末の温泉旅行先としても手頃だったのでは?
近年、温泉地の人気が山奥の秘湯にシフトし、社用や地域の宴会需要も減少して、平地の温泉地には厳しい時代となりました。
また、桐生・太田・伊勢崎など近くの都市に手軽に入れる日帰り温泉施設ができたことも、逆風になっていると思われます。
ここらへんの立地環境は、西毛の八塩温泉に共通したものがあるように思います。
【写真 上(左)】 厳理水の泉源
【写真 下(右)】 温泉標識 (厳理水)
【写真 上(左)】 厳理水の分析書
【写真 下(右)】 渋い街灯
<温泉>
takayamaさんの「群馬の温泉ページ」に掲載されている県薬務課作成の温泉統計(平成11年度温泉利用状況)によると、藪塚温泉で利用源泉3(内 自噴1、動力2)となっています。
また、やませみさん提供のデータでは下記の4源泉。
1.厳理水
規定泉(Si,NaHCO3)(Na-HCO3型) -℃ pH=8.6 蒸発残留物=0.37g/kg
2.藪塚館の湯
規定泉(Si)(Na-HCO3型) 16.3℃ pH=7.3 成分総計=0.46g/kg
3.福寿館の湯
規定泉(Si)(Ca-HCO3型) -℃ pH=7.4 蒸発残留物=0.15g/kg
4.ホテルふせじま
規定泉(Si,NaHCO3) -℃ pH=-
1は「開祖 今井館」(立ち寄り不可)および「ホテルふせじま」(入湯済、未レポ)、2は「湯元 藪塚館」(立ち寄り可)、3は「福寿館」(営業状況不明)で利用していると思われます。
太田市の公式HPによると、現在温泉を利用している旅館は、「ホテルふせじま」「今井館」「藪塚館」の3軒なのでこれで源泉数と合致します。
ただ、「ホテルふせじま」にはふたつの浴場があって、あきらかにお湯のイメージがちがったので、どちらかは自家源泉をつかっているかもしれません。(掲示分析書はどちらも「厳理水」)
【写真 上(左)】 藪塚館
【写真 下(右)】 藪塚館の渋い館内
【写真 上(左)】 藪塚館の男湯
【写真 下(右)】 藪塚館の女湯
やぶ塚温泉の泉質名は以前からナゾが多く、いろいろな資料に記載された泉質は多岐におよびます(下記)。
重炭酸泉 / 弱アルカリ炭酸泉 / メタケイ酸・炭酸水素ナトリウム含有 / 含炭酸重曹泉 / 炭酸水素塩泉 / 含メタケイ酸-炭酸水素泉 etc...
泉質名表記のむずかしい規定泉が複数源泉があるために、このような混乱が生じているかと思います。
なお、厳理水の泉源は温泉神社のわきにあります。
【写真 上(左)】 ホテルふせじま
【写真 下(右)】 ホテルふせじまの「あさひの湯」
【写真 上(左)】 ホテルふせじまの「長者の湯」の内湯
【写真 下(右)】 ホテルふせじまの「長者の湯」の露天
やぶ塚温泉は「湯元 藪塚館」と「ホテルふせじま」(未レポ)に入湯していて、重曹系の清澄なツルすべ湯を想像していましたが、金気や硫酸塩を交えたかなり複雑なもの。
ともに循環ながら渋い個性をもち、古湯の名に恥じないおくの深いお湯だと思います。
〔 2011/01/08UP 〕
〔やぶ(藪)塚温泉について〕
<プロフィール>
老舗の湯宿数軒からなるやぶ塚温泉は、東毛エリア随一の歴史ある温泉地です。
さしもの広大な関東平野もこのあたりまでくるとようやく丘陵をまじえ、ここもなだらかな丘陵のはざまにあります。
周辺には木枯紋次郎ゆかりの三日月村、マニアックなジャパンスネークセンター(個人的にはかなり面白かった(笑))に旧石器時代の岩宿遺跡など、多彩な観光資源があります。
【写真 上(左)】 アプローチのサイン
【写真 下(右)】 温泉街
このあたりの名物は紅こだますいか。たくあんや大根干しの味のよさにも定評があります。
かつては東毛を代表する温泉地であったやぶ塚温泉も、近年はマスコミはおろか温泉好きのあいだで語られることも稀になりました。
のどかな農村風景となかなかに滋味のあるお湯、古い歴史と個性的な観光資源をもつ温泉地なので、あらたな活路を見いだしてほしいものです。
<歴史>(温泉神社境内の掲示などを参考)
「その昔、やぶ塚の地では、巨石の割れ目からこんこんと湯が湧きいで、里人は病を治す湯場としてつかっていた。ある日、葦毛の馬が飛来し、一声高くいななくと(一説に、湯に飛び込むと)、嵐を巻き起こしつつ天に舞い上がり、それ以来、やぶ塚のお湯は冷泉に変わってしまった。
里人は嘆き悲しんだが、村の古老の夢枕に薬師如来が現われ、『悲しむことはない、この水を温めて湯浴みすれば、万病がたちどころに治り長寿をまっとうできる。』とのお告げがあった。これをきいた行基上人は、やぶ塚のお湯の効能を各地に広く伝えられた。」
この説話をうけて、やぶ塚温泉の開湯は天智天皇の御代、行基上人によるものとされています。
また新田義貞が鎌倉攻めの折、兵士を湯治させたことにちなみ、”新田義貞公の隠し湯”とも伝えられる、趣ふかい歴史に彩られた古湯です。
これらの歴史を物語るように背後の山裾には温泉神社(かつては湯権現と呼ばれ、本尊は薬師如来だったらしい)が祀られています。
【写真 上(左)】 藪塚温泉神社
【写真 下(右)】 温泉神社の額
近代のやぶ塚温泉の沿革がなかなかとれないので、ここからは勝手な推測です。
やぶ塚温泉のある旧藪塚本町は、桐生・太田・伊勢崎など北関東有数の物産の集散地に囲まれていたため、多くの旅客を迎えたものと思われます。
また、これらの街の奥座敷としてつかわれたことも容易に想像できます。
【写真 上(左)】 温泉の縁起書
【写真 下(右)】 温泉神社から温泉街
また、東京方面からの交通の便も比較的よかったので、週末の温泉旅行先としても手頃だったのでは?
近年、温泉地の人気が山奥の秘湯にシフトし、社用や地域の宴会需要も減少して、平地の温泉地には厳しい時代となりました。
また、桐生・太田・伊勢崎など近くの都市に手軽に入れる日帰り温泉施設ができたことも、逆風になっていると思われます。
ここらへんの立地環境は、西毛の八塩温泉に共通したものがあるように思います。
【写真 上(左)】 厳理水の泉源
【写真 下(右)】 温泉標識 (厳理水)
【写真 上(左)】 厳理水の分析書
【写真 下(右)】 渋い街灯
<温泉>
takayamaさんの「群馬の温泉ページ」に掲載されている県薬務課作成の温泉統計(平成11年度温泉利用状況)によると、藪塚温泉で利用源泉3(内 自噴1、動力2)となっています。
また、やませみさん提供のデータでは下記の4源泉。
1.厳理水
規定泉(Si,NaHCO3)(Na-HCO3型) -℃ pH=8.6 蒸発残留物=0.37g/kg
2.藪塚館の湯
規定泉(Si)(Na-HCO3型) 16.3℃ pH=7.3 成分総計=0.46g/kg
3.福寿館の湯
規定泉(Si)(Ca-HCO3型) -℃ pH=7.4 蒸発残留物=0.15g/kg
4.ホテルふせじま
規定泉(Si,NaHCO3) -℃ pH=-
1は「開祖 今井館」(立ち寄り不可)および「ホテルふせじま」(入湯済、未レポ)、2は「湯元 藪塚館」(立ち寄り可)、3は「福寿館」(営業状況不明)で利用していると思われます。
太田市の公式HPによると、現在温泉を利用している旅館は、「ホテルふせじま」「今井館」「藪塚館」の3軒なのでこれで源泉数と合致します。
ただ、「ホテルふせじま」にはふたつの浴場があって、あきらかにお湯のイメージがちがったので、どちらかは自家源泉をつかっているかもしれません。(掲示分析書はどちらも「厳理水」)
【写真 上(左)】 藪塚館
【写真 下(右)】 藪塚館の渋い館内
【写真 上(左)】 藪塚館の男湯
【写真 下(右)】 藪塚館の女湯
やぶ塚温泉の泉質名は以前からナゾが多く、いろいろな資料に記載された泉質は多岐におよびます(下記)。
重炭酸泉 / 弱アルカリ炭酸泉 / メタケイ酸・炭酸水素ナトリウム含有 / 含炭酸重曹泉 / 炭酸水素塩泉 / 含メタケイ酸-炭酸水素泉 etc...
泉質名表記のむずかしい規定泉が複数源泉があるために、このような混乱が生じているかと思います。
なお、厳理水の泉源は温泉神社のわきにあります。
【写真 上(左)】 ホテルふせじま
【写真 下(右)】 ホテルふせじまの「あさひの湯」
【写真 上(左)】 ホテルふせじまの「長者の湯」の内湯
【写真 下(右)】 ホテルふせじまの「長者の湯」の露天
やぶ塚温泉は「湯元 藪塚館」と「ホテルふせじま」(未レポ)に入湯していて、重曹系の清澄なツルすべ湯を想像していましたが、金気や硫酸塩を交えたかなり複雑なもの。
ともに循環ながら渋い個性をもち、古湯の名に恥じないおくの深いお湯だと思います。
〔 2011/01/08UP 〕
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■ 足利市温泉(四代地温泉) 「足利市温泉スタンド」 〔 Pick Up温泉 〕
足利市温泉(四代地温泉) 「足利市温泉スタンド」
住 所 :栃木県足利市松田町
電 話 :0284-20-2104(足利市企画政策課)
時 間 :10:00~18:00
料 金 :10円/10L・100円/100L
■ オフィシャルHP
■ 紹介ページ (ポータルサイト【 足利民 】)
足利の山のなかにある地味な温泉スタンド。
場所は県道218名草坂西線の「猪子トンネル」名草側手前。
右カーブで受けたところなのでわかりやすいですが、夜間は照明がないので要注意。
日暮れて到着、終了の18:00まではまだ間があったので10円/10Lで手湯だけでもしようと思いましたが、分析書を写しているときに妙になれなれしい野犬があらわれて、なんとなくうす気味が悪かったので手湯を断念して撤収(泣)。
泉源は「猪子トンネル」わきのタンクがあるところかと思います。
足利市東砂原後町のスパ銭「幸の湯」でこのお湯をローリー使用しているという情報があります。
HPにその旨の案内がでていなかったので、さきほどTEL確認すると「松田の方の温泉を運んできて露天風呂でつかっています。」とのことなので、いまでも入れるよう。
折をみて入ってみたいと思います。
温泉みしゅらん掲示板2001/12/26付のONKEN21さんの情報によると、この源泉は「平成7年7月掘削開始、8年7月に地下1500Mにて掘り当てたもので、平成12年オープン予定だった『簡易保険総合レジャーセンター』に引湯する予定だった」そうですが計画自体がとん挫し、平成9年3月8日からこの温泉スタンドでの提供がつづいているのみ。
しかし、めぼしい観光地も景勝地ないこんな山の中に、よくぞ巨費を投じるリゾート開発を計画したものです。
足利市は「既に温泉掘削、調整池整備など5億円を投入した」(同上)そうですから、「市民の福利、健康増進」などのお題目のもと、近くに大きな集落もなく大して利用者も見込めないここで温泉スタンドをつづけざるを得ないのでは?
なお、足利市で現在入浴できる温泉は、足利地蔵の湯「東葉館」、足利鹿島園温泉がありともに日帰り可。
湯ノ沢温泉(松泉閣)、鶏足寺温泉、大川戸鉱泉、高松鉱泉、足利名草温泉などは廃業もしくは現況不明となっています。
〔 源泉名:四代地温泉 〕(新分析/現地掲示)
単純温泉(Na・Ca-HCO3型) 30.0℃、pH=8.14、191.1L/min(1,200m掘削揚湯)、成分総計=0.276g/kg
Na^+=44.1mg/kg (61.27mval%)、Mg^2+=4.0 (10.54)、Ca^2+=16.5 (26.36)、Fe^2+=0.4、F^-=0.3、Cl^-=4.6 (4.27)、HS^-=0.1、SO_4^2-=1.6、HCO_3^-=174.3 (93.93)、CO_3^2-=0.0、陽イオン計=66.7 (3.13mval)、陰イオン計=180.9 (3.04mval)、メタけい酸=26.2、メタほう酸=0.2、遊離炭酸=2.3、硫化水素=0.0 <H20.2.12分析>
〔 源泉名:四代地温泉 〕(旧分析/温泉みしゅらん掲示板2001/12/26付ONKEN21さん投稿より引用)
単純温泉 34.0℃、pH=8.0、108.8L/min、蒸発残留物(ER)=257.4mg/kg
Na^+=51.6mg/kg、Mg^2+=4.2、Ca^2+=15.0、Fe^2+=3.1、F^-=0.4、Cl^-=4.9、HS^-=0.6、SO_4^2-=1.2、HCO_3^-=200.7、陽イオン計=76.0、陰イオン計=207.8、メタけい酸=33.5、メタほう酸=1.4 <H8.8.8分析>
〔 2011/01/08UP (2010/12訪問) 〕
E139.25.48.377N36.24.44.692
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