AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

テケリ・リ!テケリ・リ!

2008年03月05日 | ルルイエ異本

御伽話に伯父きがほのめかす 
遠きヒマラヤ古えの種族
テケリ・テケリと地底に木霊する
光届かぬ禁断の叡智

歴史たる名の祭司は戯れに
為政者たちを頽廃に招く
クルルゥ・クルルゥと獣の呪言が
人の神なる冒涜の奥儀

行方知れずの伯父きは何処


これは人間椅子の3rdアルバム『黄金の夜明け』のラストに収められている“狂気山脈”という曲の歌詞の一部である。
言うまでもなくかの20世紀最大のオカルティスト、アウレスター・クローリーが創設した魔術結社「黄金の暁教団」からとったアルバムタイトルである。
この不穏な音階に彩られた忌まわしい曲の冒涜的な歌詞を耳にする度に、私は『ネクロノミコン』に繰り返しあらわれる、邪悪な伝説のつきまとう、レン平原の異様で心騒がせられる描写を思い出し、大学であの凄まじいラヴクラフトの書物に目を通したことを心から悔やむのである。
その書物とは『ラヴクラフト全集4』に収められてある「狂気の山脈にて」というタイトルの作品で、そこには人類が決して足を踏み入れてはならない、恐るべき太古の秘密が語られていたのである!



ミスカトニック大学探検隊が迷い込んだ南極大陸の奥地に眠る呪われた窮極の深淵を見はるかす狂気の山脈、そこには人類史以前の太古に築かれた謎の巨大石造都市が広がっていた!!
そこでは樽状の胴、7フィートにおよぶ膜状の翼を供えた海ユリ状の頭部を持つ先行種族<古のもの>の名状しがたい異臭が立ち込め、そしてかつて<古のもの>どもが重労役のために無機物から作り出したある種の多細胞の原形質の泡の無定形の塊、アブドゥル・アルハザードがアルカロイドを含むある種の薬草を服用した夢想家以外に想像した者もいないと断言していた忌まわしき“ショゴス”のあの広範囲に響きわたる慄然たる笛を吹くような音、「テケリ・リ!テケリ・リ!」が洞窟の底から迫り来るのであった!!
(“戸口にあらわれたもの”の話によると「カモグ!カモグ!」とも鳴くらしい)


この西洋文学なども取り入れた和製ロックバンド人間椅子の意欲的な3rdアルバムには、その他、あのクトゥルーが眠っているという海底都市ルルイエ、あるいは超太古に沈んだレムリア大陸のことを想わせる“水没都市”、絞首刑者の排泄物が滴り落ちた場所から生えて、地面から抜き取る際に恐ろしい金切り声を上げ、その声を聞いた者を死に至らしめるという“マンドラゴラの花”、枕詞を踏まえた五・七・五からなる構成を大胆に取り入れた典雅な赴きを持つ“平成朝ぼらけ”などが収められている。

私はこれらの忌まわしき楽曲が納められている人間椅子の名状し難き3rdアルバムを聴く度に、「黒い穴蔵」、「ショゴスの原型」、「ヨグ=ソトホース」、「五つの次元を持つ窓の無い立方体」、「わ、ガンでねべが」などの意味不明の奇妙な言葉を囁くようになってしまった。

そして、最後にはその源があまりにも明白な、ただ1つの狂った言葉を繰り返すだけになっている。

「テケリ・リ!テケリ・リ!」と。



大越孝太郎先生の筆による「マンドラゴラの花」の挿絵だが、
海ユリ状の頭部がなんとなく<古のもの>を想わせる。




今日の1曲:『狂気山脈』/ 人間椅子
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする