先月上映された『遊星からの物体X ファースト・コンタクト』の便乗本として、時を同じくして扶桑社より刊行された『クトゥルフ神話への招待 -遊星からの物体X-』を先日入手。
まぁタイトル見てもろたら分かるように、いまだカルト的人気を誇る『遊星からの物体X』の3回目の映画化上映に乗じて、SFホラー映画ファンをクトゥルー神話の世界に引きずり込むことを目的とした布教企画本であろう。
本書には、J・W・キャンベルJr.が著した原作の新訳版のほか、クトゥルー神話関連作品の中短編が複数収録されている。
「え?『遊星からの物体X』って、クトゥルー神話だったの?」って驚かれた方もいらっしゃると思うが、実はそういうワケではなく、南極大陸が舞台の、悠久の太古に外宇宙から到来した未知の生物との遭遇という設定で、原作が発表されたタイミングからしても、この作品はH.P.ラヴクラフトの長編傑作『狂気の山脈にて』からインスパイアされた物語ではないか?と、クトゥルーシンパ側が勝手に騒いでいるだけというのが実情のようだ。
おそらく作者本人からも、そのような言質はとれてないんだろう。
“狂気の山脈”にて、ミスカトニック大学探検隊が<古のもの>と遭遇する場面。
実は私、映画自体も見たことなくて、この際だからキャンベルJr.の原作読んでみましたけど、うん、旧支配者も出てこないし、『ネクロノミコン』や『無名祭祀書』などの魔道書も参考にされない。
いわゆるパラサイトもので、血清検査とか、生物学的見地に基づいて未知のクリーチャーと対峙するという、わりと論理的で構成のシッカリした物語だった。
夢を介してクリーチャーが人間になんらかの影響を及ぼすというところは、確かにクトゥルー神話に通ずる宇宙的恐怖を感じるものがあったが。
つーかそれがしの本書購入目的は、まぁクトゥルーファンはほとんどがそうだろうけど、ラムジー・キャンベルの未訳作品5編。
なぜ今回の企画にラムジー・キャンベル作品が選ばれたのかと問うならば、単にキャンベル繋がりということだろうか?だったらロバート・キャンベルもいるし、ヴィヴィアン・キャンベルもいるじゃないかって、こいつらは作家じゃねぇか・・・
未読のブリチェスターものが読めるのは我々クトゥルーファンにとっては有難いが、『物体X』ファンからするとおそらく「なんのこっちゃい!?」って気がする。
しかも今回のキャンベル短編諸作品、ブリチェスターが舞台っつーだけで、クトゥルー要素も薄く単なる心霊譚やんって感じのものがほとんどで、正直つまらんかった(ラストの『恐怖の橋』は未読。こいつに期待)。
そして、最後になぜかH.P.ラヴクラフトの代表中篇作『クトゥルフの呼び声』の新訳版が収録されてある。
はぁ?それやったら『狂気の山脈にて』を収録するのが筋ちゃいまっか?
とは思うんだけど、『物体X』ファンの方をクトゥルー世界に取り込むにあたって、いきなりあないなくどい超形容文体で、「未知なるカダス」だの「原形質のかたまり」だの「テケリ・リ!テケリ・リ!」だのと、わけのわからんクトゥルー用語の羅列された長編を読ませられても困惑するばかりだろう。私も学生時代初めて読んだ時はティンプンカンプンやったもんなー
よって、物語としても比較的スマートでわかりやすく、クトゥルー神話の入門書としても最適な『クトゥルフの呼び声』がチョイスされたのだろう。
しかし、カヴァーイラストが『ヴィジュアル版クトゥルー神話FILE』と全く同じなことも含め、この一貫性に欠けたコジツケ感甚だしい今回のアンソロジー企画は、クトゥルーファンとしてもなんだかなー
ま、『遊星からの物体X』の原作に興味おありの方なら、是非本書をオススメしておきましょう。
同時収録の『クトゥルフの呼び声』は、SF怪奇小説としても一読の価値ありの傑作ですので。
私も今度レンタル屋で『遊星からの物体X』をかりてきて見ようかと思う。
今日の1曲:『狂気山脈』/ 人間椅子
まぁタイトル見てもろたら分かるように、いまだカルト的人気を誇る『遊星からの物体X』の3回目の映画化上映に乗じて、SFホラー映画ファンをクトゥルー神話の世界に引きずり込むことを目的とした布教企画本であろう。
本書には、J・W・キャンベルJr.が著した原作の新訳版のほか、クトゥルー神話関連作品の中短編が複数収録されている。
「え?『遊星からの物体X』って、クトゥルー神話だったの?」って驚かれた方もいらっしゃると思うが、実はそういうワケではなく、南極大陸が舞台の、悠久の太古に外宇宙から到来した未知の生物との遭遇という設定で、原作が発表されたタイミングからしても、この作品はH.P.ラヴクラフトの長編傑作『狂気の山脈にて』からインスパイアされた物語ではないか?と、クトゥルーシンパ側が勝手に騒いでいるだけというのが実情のようだ。
おそらく作者本人からも、そのような言質はとれてないんだろう。
実は私、映画自体も見たことなくて、この際だからキャンベルJr.の原作読んでみましたけど、うん、旧支配者も出てこないし、『ネクロノミコン』や『無名祭祀書』などの魔道書も参考にされない。
いわゆるパラサイトもので、血清検査とか、生物学的見地に基づいて未知のクリーチャーと対峙するという、わりと論理的で構成のシッカリした物語だった。
夢を介してクリーチャーが人間になんらかの影響を及ぼすというところは、確かにクトゥルー神話に通ずる宇宙的恐怖を感じるものがあったが。
つーかそれがしの本書購入目的は、まぁクトゥルーファンはほとんどがそうだろうけど、ラムジー・キャンベルの未訳作品5編。
なぜ今回の企画にラムジー・キャンベル作品が選ばれたのかと問うならば、単にキャンベル繋がりということだろうか?だったらロバート・キャンベルもいるし、ヴィヴィアン・キャンベルもいるじゃないかって、こいつらは作家じゃねぇか・・・
未読のブリチェスターものが読めるのは我々クトゥルーファンにとっては有難いが、『物体X』ファンからするとおそらく「なんのこっちゃい!?」って気がする。
しかも今回のキャンベル短編諸作品、ブリチェスターが舞台っつーだけで、クトゥルー要素も薄く単なる心霊譚やんって感じのものがほとんどで、正直つまらんかった(ラストの『恐怖の橋』は未読。こいつに期待)。
そして、最後になぜかH.P.ラヴクラフトの代表中篇作『クトゥルフの呼び声』の新訳版が収録されてある。
はぁ?それやったら『狂気の山脈にて』を収録するのが筋ちゃいまっか?
とは思うんだけど、『物体X』ファンの方をクトゥルー世界に取り込むにあたって、いきなりあないなくどい超形容文体で、「未知なるカダス」だの「原形質のかたまり」だの「テケリ・リ!テケリ・リ!」だのと、わけのわからんクトゥルー用語の羅列された長編を読ませられても困惑するばかりだろう。私も学生時代初めて読んだ時はティンプンカンプンやったもんなー
よって、物語としても比較的スマートでわかりやすく、クトゥルー神話の入門書としても最適な『クトゥルフの呼び声』がチョイスされたのだろう。
しかし、カヴァーイラストが『ヴィジュアル版クトゥルー神話FILE』と全く同じなことも含め、この一貫性に欠けたコジツケ感甚だしい今回のアンソロジー企画は、クトゥルーファンとしてもなんだかなー
ま、『遊星からの物体X』の原作に興味おありの方なら、是非本書をオススメしておきましょう。
同時収録の『クトゥルフの呼び声』は、SF怪奇小説としても一読の価値ありの傑作ですので。
私も今度レンタル屋で『遊星からの物体X』をかりてきて見ようかと思う。
今日の1曲:『狂気山脈』/ 人間椅子