AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
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炎の伝説

2021年11月16日 | やっぱりメタル!!
人前でQEENSRYCHEの事を話すとき、思わず「クイーンズライチ」と発音したら歳がバレますよとはよく言うが、私が彼らの音楽に出会ったのは、メタルを聴き始めてまだ1年も経ってない中学1年生の頃だったと記憶している。

その頃初めて購入したのが2nd『RAGE FOR ORDER ~炎の伝説~』だった。
確かB!誌での評価が高く、彼らのシンボルマークがデーーン!とあしらわれたいかにもメタル!って感じのジャケットのカッコよさにも魅かれ、「きっと素晴らしいメタルアルバムに違いない」と、もうワクワクして最寄りのワルツ堂で買った記憶がある。




ただ、1曲目の「Walk In The Shadows」こそオーソドックスなメタルナンバーではあったが、メタル歴1年足らずだった中坊の私にはこの作品の楽曲は難解というか、クセの強い展開の曲が多くてなんだかピンとくるものがなかった。ジェフ・テイトの凄まじいハイトーンも、まだウブだった頃の私にはちょっとアクが強すぎた。

メタル吸収意欲旺盛な頃だったのでそれなりに聴き込んだが、3曲目の「The Whisper」はいいなと思ったくらいで(今聴くとこれもリズムのとり方がかなり変)ジェフが湿っぽく歌うバラード曲もなんだか苦手で、同じ時期にメタル姉が買ってきたデヴィッド・リー・ロスの底抜けに能天気な『SONRISA SALVAJE』を聴いて一発でハマりもうそっちに夢中で、姉と交渉してこのクイーンズライチのアルバムとトレードまでしてしまった。

その2年後にリリースされた彼らの最高傑作と謳われた完成度の高い見事なコンセプトアルバム『OPERATION:MINDCRIME』は展開も分かりやすくスマートな内容で私もハマった。
ま、正直クイーンズライチのアルバムはこの3rdくらいしか聴いてこなかったと言っても過言ではない。


で、最近久しぶりに梅田のユニオンに寄って盤漁りしてたら、2nd『炎の伝説』のリマスター盤が安くで売ってたので思わず購入してしまった。
この作品はもう数10年くらい聴いてなかったと思われるが、久々に聴いてみて思ったのが、あの時代に彼らはすでにモノ凄く実験的でプログレッシヴな高水準のメタルをやっていたんだなって。
私の当時の反応は、ファーストガンダムの初回放送を見さされた小学生低学年のガキの反応みたいなものだったのだ。


まず、ジェフ・テイトの含みを持ったハイトーンには他の追随を許さない格調の高さと、並々ならぬ美意識を感じないではいられない。
それは、ブルース・ディッキンソン、ロブ・ハルフォードの比ではなく、わりと系統の近いマイケル・キスクやジェームズ・ラブリエなんかよりもレベルが高い。
3rdでもハイレベルなハイトーンを駆使し、見事な歌唱力でアルバム全体を表現しきっていたが、そこには若干の落ち着きも備わっていた。

が、この2ndではもうジェフのハイトーンが常軌を逸する程に爆発しているのだ。
ただただ(頭の悪そうな80年代初期みたいな)ハイトーンっていうのではなく、そこには確かな技術と知性とが備わっている。

もうジェフのこの佇まいからして、ハイトーン王たるただならぬ威厳さに満ち溢れているではないか!



私の苦手とするメタルバラード曲も、この頃のジェフの抒情性に富んだロマンティシズム溢れる歌唱で歌われると、もう陶酔するほかない。
特にラストの口笛なんかも挿入される「I Will Remember」は、中間のメランコリックなアコギソロも含め完成度が非常に高く、珠玉の名メタルバラードナンバーと言っていいだろう。


ところで、このアルバムが当時私を当惑させ、あまりにも特殊だったのは、随所に大胆なデジタルサンプリングを施している点にその要因があったと思われる。
それが特に顕著なのが、ほぼサンプリングで構成された「Gonna Get Close To You」。

なんかニューウェイヴっぽい。これは中坊の頃の私が困惑したのも無理はない。



本作を改めて聴き直して、デジタルの絶妙な効果が発揮された曲で、雰囲気といい、特に感銘を受けたのが、「Neue Regel」であろうか。
イントロからして次作収録の「Suite Sister Mary」の元ネタ的な雰囲気があり、ジェフのハイトーンにさらにエフェクトをかけて高次元のヴォイス感を醸し、機械的なリズム音が曲全体を支配するという。アウトロのピクハモの異様なループがたまらない。
クライマックス曲ともいうべきSF映画のような雰囲気の、その名も「Screaming In Digital」のベースラインをデジタルビートで並走させるというスリリング効果も絶大。


「Gonna Get Close To You」に関しては当時7インチEPも出ており、これがなんと2枚組!
各面に1曲ずつの計4曲。



上記の3曲はデジタルアレンジが比較的顕著な例で、他「Surgical Strike」、「Chemical Youth」等、全体的にはイギリス由来の伝統的な様式美を引き継ぐ割と普通にカッコいいメタルナンバーが殆ど。
そこへ随所に効果的なデジタルサウンドを切り込むこの絶妙なバランス感が素晴らしい。




この『炎の伝説』におけるメタルとデジタルの実験的融合は、曲の表現力を拡げ、作品をよりプログレッシヴで上質なものに高めることに成功した特異な試みだと思う。
それでいて、決してメタルアルバムとしての本分を失っていないのがこの作品の凄いところだ。
この作品の特殊性やインパクトは、当時ドリーム・シアターの連中にも大いに影響を与えたであろうことも十分想像できる。


う~む、このアルバムはひょっとしたら『OPERATION:MINDCRIME』よりも重要で、メタル史に語り継がれるべき問題作かもしれない。



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