AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

極東クトゥルー

2008年05月23日 | ルルイエ異本

クトゥルフフタグンとばかりに、相変わらず古書店に足を運んではクトゥルー本を漁っている今日この頃。
で、最近ブックオフで見つけたのが『クトゥルー怪異録』という日本人作家によるクトゥルー神話オムニバス本。

本書は、当時(1994年)ハードカバーで発行されていたのを本屋で見かけてはいたのですが、俳優の佐野史郎氏のいわゆる“インスマス面”が写っている表紙を見て、その時はちょっとこのおそるべき本をレジに持っていく勇気が出ませんでした。
今回買ったのは、後に発行された単行本の方です。

クトゥルーマニアとして有名な佐野史郎氏がこの時作家デビューを果たされ、『曇天の穴』という“ウボ=サスラもの”を執筆なさっています。
日本のネクロノミコンと言われる実在の奇書『竹内文書』の研究家を語り手として登場させ(ちなみに『竹内文書』を研究している団体が実際に発行している機関紙の名が『さすら』)、ランドルフ・カーターとネクロノミコン入りのフロッピーディスク(FDに収まるような内容量か?)をやり取りしたりと、佐野氏のディープなクトゥルーマニア振りが発揮されたなかなかの異色作です。

脚本家の小中千昭氏による『蔭洲升を覆う影』は、タイトル見てもわかるように『インスマスの影』の日本を舞台にしたリメイク作品。内容はほとんど原作と一緒です。当時TBSで佐野史郎主演で奇跡のTVドラマ化も実現しております。

私の知っていた意外な作家さんも名を連ねていて、推理探偵作家の高木彬光氏はすでに1956年に日本最古のクトゥルー神話小説『邪教の神』というのを執筆されていたんですね!驚愕!!
内容はやっぱり昭和初期風推理探偵小説もので、チュールー神という邪教の木像を巡って祟りめいた連続殺人事件が展開してゆくというものでした。事件は現実的に解決されるものの、チュールー像は最期に不気味な影を残しております。

山田正紀作品は『不思議の国の犯罪者たち』というのを読んだことがあり、これが面白かったのでちょっと期待したのですが、今作『銀の弾丸』はいわゆるスパイ組織的ハードボイルドもの。まぁ普通でした。クトゥルー神話体系を根底から覆すラストのオチには唸らされたが。
菊池秀行氏著『出づるもの』も、まぁありきたりやったかなぁ~

この神話集の中で一番面白かったのが、友成純一氏著の『地の底の哄笑』
舞台は作者ゆかりの地、九州の炭鉱地帯。そして神経科病棟にてとある怪事件で生き残った精神錯乱者の<事故報告書>という手記設定からして、夢野久作作品的雰囲気を期待してしまいます。「アハハハ・・・や、どうも院長先生。」てな感じで。
主人公は蔵の中で“つぁとぅぐあ”と書かれたグロテスクな蛙の像と古い書物(おそらく『エイボンの書』の日本語版かと思われる)を見つけ、書物の中に書かれてある呪文で旧支配者どもを喚び覚ましちゃうんですよね~。とにかくラストの魑魅魍魎たる数々の異形のものどもが跋扈する阿鼻叫喚の展開は、私のクトゥルー的好奇心を大いに満足させてくれるものでした。
物語の中で形容されてる「どす黒い肌に柔毛に覆われた巨大な蛙」はいうまでもなく“ツァトゥグア”でしょう。「蜘蛛に似た姿」は“アトラク=ナチャ”。「黒い巨大なアメーバ」は“ショゴス”に間違いございませんて!

ハードカバーの初版に収録されていた朝松健氏著『闇に輝くもの』が版権等の問題により単行本には収録されてなかったのが残念。
今後、さらなるクトゥルー・ジャパネスク作品を期待してやまない!

イア!


今日の1曲:『猟奇が街にやって来る』/ 人間椅子

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4 コメント

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Unknown (TT)
2008-05-23 22:31:17
ご無沙汰してます。TTです。

この本読んだような気がするのですが、家に無いです。買っちゃおうかなぁ。

そうそう、ドラマでやっていたの見ましたよ!
なんだかあの頃、ラブクラフトがブームになっていましたね。何でだったんでしょう???

今日、ようやく青心社の文庫「クトゥルー」全13巻揃えることができました。全て中古でと思っていたのですが、我慢できずに新品を2冊購入してしまいました。とはいっても、まだ4巻を読んでいる最中なので、全て読み終わるのはいつになることやら。。。
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>TTさん (あましん)
2008-05-24 11:29:57
TTさん、お久しぶりです。

お~あのドラマを見てらっしゃったんですね!
当時はよく本屋にクトゥルー関連の本結構置いてありましたよね~。
自分は入門したての頃で、まだ手探り状態でそれほど熱心に追及しておりませんでした。甘かった!
テレビも全然見てなかったし、「インスマス」がドラマ化してたなんて全然知らなかったですよ~。
青心社のは昔「アルハザードの遺産」だけ買ったのですが、途中で投げ出してしまいました。
これからそっちも読破していこうと思ってるのですが、この辺じゃあ中古本なかなか売ってませんね~。
返信する
およよ。。 (あっこ)
2008-05-25 21:59:04
激しく「クトゥルー」ブームですね~(ひえぇ~)
日本人作家によるオムニバスなんて・・・
知りませんでした・・・。
なんか怖いくらい色んなものがでてきますね~。
私はいまだに「諸星大二郎」の漫画も1巻から動いていなくて・・・
少しペースをあげないと、あましんさんについて行けそうにないなあ~
と感じる今日この頃デス(爆)

「蔭洲升」って日本語(漢字)で書くとなんか不気味さが増しますね。。。
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>あっこさん (あましん)
2008-05-26 06:11:45
おはようございます。

私についていくも何も、今頃勝手に盛り上がってるだけですから。
恐らく筋金入りの全国のクトゥルーファンの方には、ミーハーな記事過ぎて忌み嫌われていることでしょう(笑)

「蔭洲升」の当て字、センスよすぎますよね。
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