夏休みの、友人との日帰りの岩手の旅。
予備校時代からの友人とゆっくり話しながら、東北新幹線で新花巻まで行く。新花巻からタクシーで宮沢賢治記念館に行く。賢治の生涯を色んな切り口でパネルで説明してある。自筆原稿がカラーコピーなのは興醒めである。でもなかなか興味深い展示。卒業する教え子に向かって、お前が只の詰まらない大人になってしまったら、お前を軽蔑する、という手紙からは、賢治の厳しい修羅の顔が浮かんでくる。宗教家、科学者、肥料設計家、童話作家、詩人、様々な面が照らし出される。
イーハトーブの労働者の歌の自筆譜のハンカチを売店で買う。
その後賢治が設計した花壇を見ながら山を下る。昼は山猫軒でイーハトーブ弁当を食べる。白金豚と野菜の弁当。それから小山を下ってイーハトーブ館に行く。畑中純さんの版画が二点大きく飾られていたのが印象的だった。次に、花巻農業高校内の羅須地人協会の建物に行く。高校生が観光客を横目に誇らしげな表情で話していた。
羅須地人協会の建物は小さな洋風の木造の家で、中にはオルガンがあり、椅子が並んでいて、ここで受講生と語らったのだな、と思う。ささやかな理想郷の片隅。タクシーで生家跡を通って羅須地人協会跡地の賢治の詩碑に行く。協会跡地は小高い所にあり、「近くの畑に居ります」と黒板に書いてあったというが、本当に下に畑が広がっている。歩いて実相寺に行き、バスで花巻駅まで行き、かっぱ飯店で炒飯を食べてビールを飲み、花巻駅で釜石線に乗る。
銀河鉄道のモデルと言われる鉄道で、確かに今でもそれらしい趣がある。特に夜の列車を外から見ると銀河鉄道の感覚。釜石線を友人と二人で乗っているとき、自分たちがジョバンニとカムパネルラのように感じた。
二駅乗って新花巻で降りて新幹線に乗る。外はちょうど花火大会で窓ガラスに花火と自分たちの顔が重なる。帰りに車内で戯れに短歌を二つ書く。「花巻の賢治の地人協会で逃げ場がないと友につぶやく」
「友と我どちらがカムパネルラだろう、釜石線で旅をする夜」心象風景が賢治の情景と重なった。