超人日記・作文

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#俳句・川柳ブログ 

<span itemprop="headline">ガウディ伝を読む</span>

2012-01-28 16:27:33 | 無題

買ってしばらく読まずにいた、田澤耕著「ガウディ伝」を読みふける。
何と言っても驚くのは、ガウディのパトロンたちが奴隷貿易で財を成した新興富裕層だという点だろう。
だが、サグラダ・ファミリア教会は聖ヨゼフ信仰協会の支援による。
ガウディに影響を与えたカタルーニャの神父は、民族の独自性は神の創造であると信じる、カタルーニャ主義者だった。
ガウディの同時代の詩人たちはサグラダ・ファミリアに理想的なカタルーニャの造形を感じていた。
カトリック教会と親しく接近したガウディは、カトリックの教義のなかに深い精神性を見つけ出した。
カトリックの精神性とカタルーニャらしさの追求がガウディの作品の理解に欠かせない。
カタルーニャ人はカタルーニャ語を民族の支柱だと考え、カタルーニャ語の振興に努めた。
ガウディは若い頃イスラム建築のモザイク模様に魅せられ熱心に研究したという。
北川景子氏の「ガウディの生涯」では、ガウディはゲーテの自然観の影響を受け、自然界のかたちを神の理性の現れだと考え、聖者の骨や動物の骨、生き物の内臓の形を手本にサグラダ・ファミリア教会を作ったことが述べられ、大層驚いたことがある。
カトリシズムとカタルーニャらしさの追求、モザイク建築とゲーテの自然観といったものが、渾然一体となって、独特のサグラダ・ファミリア教会の造形美が生み出されたようだ。
ガウディは荒い運転の路面電車に撥ねられて息を引き取ったというが、晩年のガウディの風貌は放浪の聖者のようであったという。
バルセロナに出てきた新進気鋭の若き建築家が放浪の老賢者へと変貌したその謎は、サグラダ・ファミリアの造形美のなかに込められている。
ガウディが台頭した時代のカフェの盛況ぶりや富裕層と労働者が街に溢れた経済的・政治的背景を丁寧に活写した田澤耕氏の書は、ガウディの生きた時代の文化的情景を浮き彫りにした点でガウディ理解の助けとなる。
カタルーニャ語の得意な田澤氏がカタルーニャ主義の解説に多くのページを割いているのも肯ける。

若者を聖者と変えた年月を無言で語る家族聖堂



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