録音しておいた吉田秀和氏のベートーヴェン特集をMDで聞く。
吉田秀和氏は初めにバーンスタイン指揮の序曲レオノーレ第三番をウィーンフィルの演奏で掛けた。
閉塞感を打ち破って出てくる闘争の躍動感やダイナミズムがよく表れているという。
続けて掛けたのがジェームズ・レヴァイン指揮ブレンデルのピアノでピアノ協奏曲第三番。
ベートーヴェンの音楽にはより大きな秩序への予感が聞き取れるという。
続いて弦楽四重奏曲第十番。ここまでは叫ぶような中期の音楽。
それからベートーヴェンが50歳を過ぎると作品に変化が生じる。内面的な魂の奥にあるものが出てくる。晩年の内省的な曲の代表としてピアノソナタ32番をマウリツィオ・ポリーニの演奏で聞く。
ピアノソナタ30番台の内省的な幽玄な響きはやはり格別である。
(ブレンデルもポリーニも好みではないが、この際拘らずに吉田秀和氏の選曲で聞こう。
私の父はモーツァルトの道化ぶりが好きでベートーヴェンは気難しい真面目な音楽だと言っていたが、私はベートーヴェンの音楽性の叙情的な潔さが大好きである。)
続いてベートーヴェンの伸び伸びとしたソナタ形式でピアノ三重奏をバレンボイムとズッカーマンとデュプレの演奏で聞く。
続いてロマンティックなラズモフスキー第一番第二楽章をジュリアード四重奏団で聞く。
次は変ロ長調のピアノ三重奏曲大公。
ピアノ協奏曲や室内楽で豪放な人の意表を突く堂々とした曲を得意としたが、この大公も王道を行く旋律で大掛かりな曲の一つだという。フルニエ、シェリング、ヴィルヘルム・ケンプの演奏で大公を聞く。ようやく私の好きな演奏家が登場である。
大公は大掛かりな曲というよりはよく歌う歌心あふれる可憐な曲だと私は思うのだがどうだろう。
今回はベートーヴェンの全体像というテーマなので運命や田園や月光などが登場しない、渋い選曲となった。晩年の四重奏曲ではベートーヴェンはたった一人で神と対話するような内省的な作品を書いたという。ブッシュ四重奏団で後期四重奏曲13番を聞く。演奏家の選曲には異論があるが見晴らしのいい名解説である。明日以降も楽しみである。
変革の闘争を書く作曲家時に可憐な花を生み出す