[東京 28日 ロイター] 28日の東京市場は、サブプライムローン(信用度の低い借りて向け住宅ローン)問題がくすぶる中で、こう着感を強めている。一部の海外勢に期待感を持たせていた内閣改造は、改革に向けた強いメッセージがなかったため、海外勢からの力強い買いは陰をひそめた。サブプライム問題の霧が晴れないために、各市場ともしばらく様子見の展開が続くとの見方が広がっている。
<買い意欲あった海外勢、改造人事で拍子抜け>
28日の日経平均は、市場参加者が少なく薄商いの中、狭いレンジでもみあう展開。27日の英国市場が休場だったこともあり、寄り前の外資系証券の注文動向は売り2000万株、買い1490万株で売り買いとも今月最低水準だった。「海外勢からの注文がほとんど入らず開店休業状態。投資家の間には30日発表の米4―6月住宅価格指数を見極めたいとのムードもあるようだ」(欧州系証券売買担当者)との声が出ていた。
27日の市場では「安倍晋三首相の改造人事にサプライズがあれば、日本株を買いたいというファンド勢がいる」(外資系証券)との声が出ていたものの、「10年以上前の派閥均衡人事に戻り、買いたがっていたファンド勢も手控えている」(外資系証券)という。
ある国内証券の関係者は「額賀福志郎財務相に代表されるように、どういう政策を打ち出すのかメッセージが弱すぎる、という声が海外勢を中心にマーケットでは多い。改革後退の懸念も出ており、海外勢の買い意欲はトーンダウンしている」と指摘する。
また、「支持率の本格的な回復は困難だろう。渡辺喜美行革担当相が金融担当相を兼務することになったことで、金融行政が厳しくなるリスクがある」(米系証券ストラテジスト)との声も出ていた。
大和証券SMBC・エクイティ・マーケティング部部長の高橋和宏氏は「参議院での過半数割れなど『ねじれ現象』を是正しない限り政策を打ち出しても可決されない公算が大きく、期待していない。株式市場への影響はほぼないに等しい」と述べている。
他方、「信託銀経由で国内長期資金が押し目買いを入れているとの観測が出ているほか月末にかけて投信設定が多いことなどが需給面での下支え」(大手証券エクイティ部)となり、日経平均は大きく崩れる展開にもなっていない。
ただ、ある国内投信のストラテジストは「市場はいったん落ち着いたようにみえるが、サブプライム問題が解決したわけではなく、市場参加者の手が出ていない。米銀行の決算が明らかになるまでは神経質な展開が続く」と話している。
安倍改造内閣が海外勢の投資意欲を刺激することはなかった。
<トリシェ発言のトーンダウン、ECBや日銀の金融政策に思惑>
28日の円債市場は、午前の取引で買いが先行後にいったん軟化した。20年債入札に絡んだ持ち高調整売りに押された。サブプライムローン問題を発端にした信用収縮懸念がくすぶっているため「ポジションを売り持ちのまま、海外市場を迎えることに対して、リスクが大きい」(邦銀)として、入札に向けたヘッジ(損失回避)などの本格的な準備は、きょうになってようやく始まったという。
ただ、午後に入って買いが優勢になった。入札後に下値が堅くなったとみた参加者の買い戻しが出て、先物は前日比プラス圏に押し戻された。
注目されたのは、トリシェ欧州中銀(ECB)総裁の27日の発言。総裁はブダペストの講演・会見で、金融市場の混乱を認識しているとし、9月6日の理事会で金利を決定する際、すべての関連要素を考慮するするとの姿勢を示した。8月2日の会見で「強い警戒」との文言を用いて9月利上げを示唆していただけに、ECBによる9月利上げ見送りの思惑が浮上した。
ある邦銀担当者は「金融政策に対してタカ派とされるトリシェ総裁の発言だけに、利上げに対して一服感が出た。欧米の金融当局が、金融引き締めから金融緩和方向に舵(かじ)を切り始めたとの思惑が浮上している。日銀も9月利上げが難しいとの見方が強まっている」と述べた。
短期金融市場でも、同じ方向性の思惑が出やすくなった。ユーロ円3カ月金利先物は買いが先行。「グローバルに利上げ打ち止めないしは利下げ傾向となるなかで、日銀もそう簡単には利上げに踏み切ることは難しい、というコンセンサスに(市場が)傾きつつある。問題なのは、次回利上げのその後の利上げサイクルがどうなるのかという点だが、非常に読みづらい。欧米に遅れる形で金融緩和から引き締めに動いていた日銀の政策の方向性自体に不透明感が強まっており、市場は気迷い状態」(国内金融機関)との声が出ている。
<売り圧力受ける豪ドル、NZドル>
外為市場では、前日欧米市場の流れを受けて豪ドルやNZドルなどの高金利通貨が売りに押された。サブプライム懸念の深刻化の思惑が出て、豪ドル/円は94円後半まで下落した。
市場では「サブプライム問題は今まで緊急避難的な動きだったが、金融セクターの信用収縮という話から、ローン不払いによる延滞率上昇、中古住宅の放出、需給悪化、個人消費への影響、米景気のスピードダウンというところに移りつつある。(ドル/円・クロス/円は)1、2円上下動しながら値を下げていくのではないか」(都銀)との声が出ていた。