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社長解任 株主パワーの衝撃 (Mainichi Business Books) |
毎日新聞社 |
内容(「BOOK」データベースより)
アデランスの社長はなぜ「クビ」になったのか?数々の経営権を巡る紛争を勝ち抜いてきた辣腕弁護士たちが初めて明かす、委任状争奪戦の舞台裏。
抜粋
本書は、2つの事務所(三井法律事務所、シティーユーワ法律事務所)にまたがる働き盛りの中堅世代の弁護士5名の手になるものである。しかも、おそらく、わが国において、委任状争奪戦や買収攻防戦を攻守両面で最も数多く経験している弁護士チームのひとつである。
先ず、第一章「実録・委任状争奪戦」、第二章「『社長がクビにされる時代』が到来した理由」では、実際に社長がクビとなった5つのケースを取り上げて、事例の内容と特色を振り返った。すなわち、07年度に起きた東京衡機製造所の委任状争奪戦による社長交代劇、テン・アローズにおける創業家に抵抗して社長の再任議案が否決された元オリンピック・メダリストの事例、はじめて外資による敵対的企業買収が成功した例とされる日本精密の案件、そして、08年5月、09年5月と2年続けてモノ言う株主として有名なスティール・パートナーズにその他の株主も賛同し、会社が提案した役員選任議案に「ノー」が突き付けられたアデランスホールディングスの事例、MBO(経営陣などによる自社買収)によって自ら大株主になってもらったファンドから社長がクビを言い渡された、すかいらーくの事例を紹介する。これらの事例は、1つのケースを除いて、全て、筆者らが関与したものばかりである。これらの事例を分析して、社長がクビになるケースの共通の問題点を浮き彫りにした。
次に、第三章「買収防衛策、ホワイトナイト、MBOでクビは防げるか?」では、社長がクビにならないための防衛策といわれているものの効用と限界を明らかにした。ここ数年、「これさえやっておけば、絶対クビにならない」という触れ込みを信じて、数千万円もかけて買収防衛策を導入した会社が何社も存在すると聞く。また、いざ敵対的買収を仕掛けられても、ホワイトナイトを連れてくれば絶対防衛できる、とアドバイスする弁護士が多かったのではないだろうか。さらには、MBOをやって非上場化することこそが「究極の防衛策」であることをセールス・トークに、MBOをお勧めするアドバイザー業者も多くいるやに聞く。
しかし、これらの幻想から目を醒まさせくれたのが、アデランスの事例であり、日本精密の事例であり、すかいらーくの事例である。もちろん、私たちも、防衛側でアドバイスをするときには、これらの手段を局面に応じて効果的に使いながら、戦略を組み立てていく。しかしながら、これらが絶対的な手段でないことだけは、明らかである。そこで、その効用と限界を明らかにした。読者の皆様には、特に、限界をきちんと理解してほしい。
第四章「ある上場会社の社長がクビになるまで」では、実際の委任状争奪戦を題材に、どのような経過で案件が進んでいくかを平易に解説するため、小説仕立てにした。もちろん、これは、完全なるフィクションである。が、委任状争奪戦がどのように進展していくのか、その舞台裏を肌で感じ取ってもらうという意味では、かなりリアリティが高い内容になったと自負している。
最後に第五章「クビにならないための7箇条」は、社長がクビにならないために、最低限、これだけは念頭に置いておいて欲しい7箇条を掲げた。これが、いわば本書のまとめ部分である。本書で、筆者らが言いたい全てのことが凝縮されている。
読者の皆様は、興味に応じて、第一章から順に読んでいっていただいてもよいし、小説仕立ての第四章からお読みいただいて委任状争奪戦の舞台裏を肌で感じ取ってもらってから、第一章に戻ってもらってもよい。それぞれの読者のニーズに応じて、自由に本書を利用して頂ければと思う。
(まえがきより。P7‾8)