欧州が発端となって、今や世界中に広がるESGの波は、もう単なる潮流とか風ではなくて、世界の各国政府や企業等の経済主体にとって『期限を定めて対応しなければならない優先課題』にまで昇華しています。一方のSDGsの源流は国連でありますが、こちらも目指すところは同じであり、世界の国々や企業にとっての位置づけも同様。
その中でも「気候変動」という項目だけは特出しされた項目であり、『脱炭素』の呼び声とともに、エキセントリックとも言えるレベルで、国や企業に迫ってきているので、ESG あるいは SDGsと言うと、気候変動=脱炭素のことだと思い込んでいる人も多い気がいたします。
もちろん、気候変動=カーボンニュートラルの目標を達成することが、最もハードルが高いですから、どうしてもここに目が行くのはやむを得ないところですし、それを実現するためには、多くの人々を巻き込んでいく必要があるので、それはそれで良い傾向なのだと思っています。
ところで、本日は、ESG あるいは SDGs という運動、あるいは潮流が、なぜ発生したのか? また、目指す本当のターゲットはどこなのか? というテーマを論じたいと思います。これは、SDGsの各項目を見ていると、自然に炙り出されてきます。
「貧困を無くす」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「同じく、質の高い教育を」「ジェンダー平等を」「安全・衛生な水を」「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「働きがいも、経済成長も」「イノベーション」「人や国の不平等を無くす」‥中略‥「平和と公正をすべての人に」‥
ここから炙り出てくる『イメージ』は、「基本的人権」や「個人の自由」、さらには「国民主権の下での資本主義」、そして、すべての根本基盤である「デモクラシー」そのもの。
世界を見回すと、民主主義というイデオロギーが成立している国は、西側の欧州各国、北米大陸の国々、日本を含む一部のアジアの国々に限られています。民主主義ではないと区分される地域は、中国、ロシアを含む一部の欧州東部諸国、アラブ諸国、アフリカ諸国、一部の南米諸国、北朝鮮その他と、かなりの数に上ります。
ベルリンの壁の崩壊時には、これでデモクラシーが世界に拡散して、唯一無二の政治イデオロギーへなっていくと期待したものですが、あれから30年が過ぎ、状況はむしろ逆の展開になっています。デモクラシーが「愚民主義」へ陥る国が増えて弱体化、一方の非民主主義国では「国家資本主義」なるエネルギーで強力化しつつあります。
中国・ロシア・アラブ諸国では、競争に依らない不透明な仕組みによって、ごく一部の支配者層に富が集中しています。不公正な社会の仕組みに異を唱える人々、特に国内にいる少数民族の人々は弾圧を受け、不当な扱いを受けて貧困にあえぎ、場合によっては虐殺が発生している状況。今回のウクライナ侵攻も、国家間の不公正な仕組みが原点にあると思います。
もちろん、ESG あるいは SDGs の真意が『デモクラシー危機からの脱出』なんて言ってしまったら、中国やロシア、アラブ諸国からの協力は得られません。だからこそ、『貧困』『人権』『ジェンダー』などの言葉を使って、普遍的なテーマとして、世界に訴えているのだと思います。
ということで、私個人は、ESG あるいは SDGs の目指すゴールは『デモクラシー防衛』であると確信しながら取り組んでおります。
ですから、バイデン大統領。本気で取り組んで下さいね、ウクライナ問題にも。これはデモクラシーを守る闘いですからね!