3月30日(土)に行われたドバイワールドカップデーの主要GⅠレースを振り返ります。
まずはドバイゴールデンシャヒーン(GⅠ:ダート1200m)。
勝ったのは、地元UAEの7歳騙馬タズ。好スタートから2番手追走へ。逃げた日本馬5歳牡馬ドンフランキーのペースは平均ペース。直線に入ると、ドンフランキーがスピードを加速して後続を突き放しますが、最内を突いてタズが並びかけて抜け出します。そのまま6馬身1/2差をつけて圧勝。ダート良の勝ちタイムは1分10秒19。2着には逃げたドンフランキー、3/4馬身差の3着には、後方から差してきた米国の5歳騙馬ナカトミ、1馬身1/4差の4着に同じく後方から差してきた日本の5歳牡馬リメイク、さらに1馬身1/4差の5着には、日本の6歳牡馬イグナイター。
勝ったタズは、レース運びの上手さもありましたが、6馬身差は圧倒的パフォーマンスであり、ここから世界へ羽ばたける逸材だと思います。2着ドンフランキー、4着リメイク、5着イグナイターと、日本馬が上位を占めました。世界との差が最も大きいダート短距離路線で、これだけの実績を残せたことは次に繋がる大成果だったと思います。
次はドバイターフ(GⅠ:芝1800m)。
勝ったのは、フランスの5歳騙馬ファクトゥ―ルシュヴァル。7番手追走で脚を溜めます。逃げたマテンロウスカイの前半1000mのペースは58秒台とかなりのハイペースに。直線に入ると先行勢は総崩れになります。馬場の外からファクトゥ―ルシュヴァルと日本の5歳牝馬ナミュールの2頭が、併せ馬状態のまま抜け出します。そのままゴール手前でファクトゥ―ルシュヴァルが短アタマ差前に出て勝利。良の勝ちタイムは1分45秒91。2着ナミュールから3/4馬身差の3着には、中団後方から馬場の中央を差してきた日本の5歳牡馬ダノンベルーガ、1/2馬身差の4着には5番手からUAEの4歳牡馬メジャードタイム、さらに1馬身差の5着には、後方から追い込んできた日本の5歳牡馬ドウデュース。
勝ったファクトゥ―ルシュヴァルは、中団の位置取りと、直線で馬場の外を選択した騎手の好判断が勝因。常に欧州GⅠ路線で上位入線を果たしていた同馬がついに国際GⅠを手にしました。
2着ナミュールは実に惜しいレースでしたが、地力の高さは証明。次はヴィクトリアMか安田記念でしょうが、最有力候補へ躍り出たと思います。3着ダノンベルーガは、またしてもGⅠ制覇成らずでした。4着メジャードタイムは、唯一好位に居た馬で上位入線を果たしました。1番強い内容を見せたのはこの馬だと思います。
圧倒的1番人気で5着ドウデュースは、全く良いところがありませんでした。スタートの遅れと位置取りの悪さが命取り。武豊騎手らしからぬ敗戦だったと思います。
次はドバイシーマクラシック(GⅠ:芝2410m)。
勝ったのは、地元UAEの6歳騙馬レベルスロマンス。好スタートから2番手追走へ。逃げたポイントロンズデールの前半1000mのラップは1分2秒台と超スローの流れ。直線に入ると、2番手からレベルスロマンスがスピードを加速、後続を突き放します。これを追いかけて日本の6歳牡馬シャフリヤールが追いすがりますが、差が詰まりません。中団から1番人気で日本の4歳牝馬リバティアイランドと英国の5歳牝馬エミリーアップジョン、4番手から日本の5歳牡馬ジャスティンパレスが猛然と追い込んできますが、これらも3~5着まで。レベルスロマンスが2馬身差で快勝。良の勝ちタイムは2分26秒72。2着にはシャフリヤール、1馬身差の3着にリバティアイランド、クビ差の4着がジャスティンパレス、短アタマ差の5着にエミリーアップジョン。
勝ったレベルスロマンスは、スローの瞬発力勝負を2番手から快勝。ビュイック騎手の好騎乗が第一の勝因ですが、好メンバーを相手に2馬身差の勝利は地力が高い証拠。国際舞台での今後の活躍に期待したいと思います。
2着シャフリヤールも、Cデムーロ騎手の位置取りが好走理由ですが、明らかに調子が戻ってきています。今年は国際舞台でまたGⅠ制覇を成し遂げそう。3着リバティアイランドは、ラストの差し脚はさすがでしたが、やはり世界はそんなに甘くないということ。次走は日本での出走となりそう。4着ジャスティンパレスは、やはりメイダンの2400mでは短すぎましたが、それでも力を見せた感じ。
なお、昨年の英国ダービー馬のディープインパクト産駒オーギュストロダンは、途中で追うのをやめて最下位入線。スローペースを後方から進んだことでレースにならなかっただけでなく、今年最初のレースだったことで体調が十分でなかったと思われます。オブライアン厩舎ではよくあることなので、ここは参考外。次走を楽しみにしたいと思います。
そしてドバイワールドカップ(GⅠ:ダート2000m)。
勝ったのは、地元UAEの6歳牡馬ローレルリバー。好スタートからスピードを活かした逃げへ。前半1000mのラップは1分1秒台とダートとしては淀みのない流れに。4コーナー手前からスピードをさらに加速、後続を突き放します。後方から日本の7歳牡馬ウシュバテソーロと米国の6歳牡馬セニョールバスカドールの2頭が猛然と追い込んできますが、まったく追いつけず、ローレルリバーがそのまま8馬身1/2差で圧勝。ダート良の勝ちタイムは2分2秒31。2着にはウシュバテソーロ、クビ差の3着にセニョールバスカドール、さらに4馬身3/4差の4着には、最後方から差してきた日本の5歳牡馬ウィルソンテソーロ、短アタマ差の5着に日本の4歳牡馬ドゥラエレーデ。
勝ったローレルリバーは国際GⅠ初勝利。しかもこのメンバー相手に8馬身差の圧勝ですから、ここからの活躍が楽しみになりました。やはり米国での走りを見てみたい。
2着ウシュバテソーロは、厳しい展開でも2着に入るあたりはさすがに一言。今年こそ、米国BCクラシック制覇を期待したいと思います。3着セニョールバスカドールも、前走サウジC優勝、前々走ペガサスWC2着の実績に続く好走であり、世界のダート界で最上位にいることをここでも証明。4着ウィルソンテソーロ、5着ドゥラエレーデともに日本馬のダートレベルが世界に並んだことを示してくれたと思います。
その他では、UAEダービー(GⅡ:ダート1900m)が行われて、日本の3歳牡馬フォーエバーヤングが快勝。5番手追走から、直線では逃げたアウトバーンをきっちり差し切って2馬身差で完勝。これで無傷の5連勝となり、米国のケンタッキーダービー(GⅠ)への出走権をほぼ手中に収めました。
フォーエバーヤングはリアルスティール産駒。父リアルスティールもドバイターフを制してGⅠ馬になった馬。その子供が、次はダート競馬の聖地である米国のチャーチルダウンズ競馬場で、ダート3歳クラシックの最高峰ケンタッキーダービーに挑みます。
矢作芳人調教師と坂井瑠星騎手の師弟コンビによる世界への挑戦が続きます。こちらも注目です。
今回のドバイワールドカップデーでは日本馬によるGⅠ制覇はありませんでしたが、5着以内の上位に日本馬が複数頭占めるなど、十分に力は示したと思います。なお、今回のドバイワールドカップデーの日本騎手のベストレースは、前述のフォーエバーヤングの坂井瑠星騎手でありました。
すでに、日本のトップ騎手には坂井瑠星が立ったのかもしれませんね。