外苑茶房

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戸籍の話題

2010-09-07 17:42:56 | 社会全般
とても生存しているとは思えない高齢者の戸籍が、日本各地で次々に見つかって、ちょっとした騒動になっています。

朝日新聞の報道によれば、まだ戸籍の電子データ化をしていない仙台市の奥山恵美子市長は、8月31日の定例記者会見で「戸籍制度の信頼を揺るがすもの。早急に対策を取りたい」とコメントしました。
法務省が各地方法務局を通じて依頼した調査で宮城県で6日までにわかった該当者では、岩沼市の150歳の女性。江戸幕府の井伊直弼(なおすけ)大老が暗殺された「桜田門外の変」が起きた1860年生まれだと。

テレビにおいても、「生きていれば、西郷隆盛と同い年」「坂本龍馬と同い年」等々、面白おかしく伝える報道が続いています。

しかし、私自身は「今になって、何を軽薄に騒いでいるのかなあ」という感想を持っています。
正直なところ、我が国の戸籍には実態にそぐわない部分が少なからずあることを、以前から感じていましたから。

そのきっかけは、ペルーのフジモリ大統領の籍が、ご両親の故郷である熊本県にも現存したという2000年頃の報道です。
その報道は、既に1934年(昭和9年)に熊本からペルーに移住していたご両親の間に1938年(昭和13年)にフジモリ氏が生まれた際、ご両親がリマの日本大使館に出生を届け出て、日本国籍を留保すると表明したために、フジモリ氏は日本国籍を取得したというもの。

明治維新後から第二次大戦前まで、労働力過剰であった日本の農村から、アメリカ合衆国、ブラジル、ペルーなどに、数多くの方々が移住されて、大変なご苦労をされたと聞きます。
「移民」ではなく「棄民」であったという指摘さえあるぐらい、劣悪な環境の中に放り込まれたというのが実態のようです。

そんな状況で辛酸を舐めて苦労されている方々に子供が生まれた場合、フジモリさんのご両親のように、できるものであれば、我が子に祖国日本の国籍を留保しようと現地の大使館に届出に行ったというのは、親の心情として痛いほど理解できるものです。

フジモリ氏と同様のケースは、多くの移民先の国々で、数え切れないほどあったと想像されます。
ただ、そのような経緯で海外在住の移民の方々が有することとなった戸籍について、その後、きちんとしたメンテナンスの対象となることは期待できません。
移民先の国々から、転居、結婚、養子縁組、死亡などの届けが本籍地の役所に漏れなく届くとは、到底考えられないからです。

ブジモリ氏が国籍の残る日本に亡命するという事件が起きた10年前に、「実態のない戸籍が、相当数残っているんだろうなあ」と感じた人は、私以外にも多かっただろうと想像します。

マスメディアは、国内在住のご老人の死亡届が出されなかった一連の事件と戸籍の問題を同列に扱って、面白おかしく報道するばかり。
全くお粗末な報道姿勢だと、私の目には映ります。

あまりにも不勉強で情けないと思います。
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