外苑茶房

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BCP

2012-09-11 23:57:23 | 社会全般
銀行マンの端くれである私ですから、このところのニュースで最も驚いたのは、何と言っても松下金融相のご逝去です。

松下さんは国民新党所属。
同党の掲げる金融政策について、個人的には相容れない部分が少なくありません。
しかし、ユーロ危機、インサイダー情報、LIBOR操作、銀行等の国債大量保有、震災対応等々、前例のない難問山積の金融行政で、その最高責任者として職責を果たそうと努力されてきた松下さんの実直な姿勢に、私は素直に尊敬の念を抱いていました。

仕事柄、毎日必ずチェックする金融庁のWEBサイトで、亡くなる直前の大臣談話を閲覧することができます。
お人柄が伝わってきます…。

心からご冥福をお祈りいたします。
9月7日付け大臣談話

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金融庁といえば、8月28日に発表された金融監督方針の中で、各金融機関に対するBCP(業務継続計画)整備への要請から、「有事必至」という緊迫感がひしひしと伝わってきました。

こんな感じです。
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今般の東日本大震災の発生を踏まえ、これまでの業務継続計画は有効に機能したか、地震等の自然災害や新型インフルエンザ、大規模停電等をはじめ、主要なリスクを十分想定しているか、それに対する対応策が十分であるか等について、金融機関の検証状況を把握する。

また、実地訓練を通じて、当該業務継続計画(燃料の確保、業務継続のための要員の確保、システムのバックアップ、決済や払出しをはじめとする顧客対応等)の実効性を確認しているか、また、訓練を通じて計画の必要な見直しを行っているか等を把握する。
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もちろん、あらゆる業界でBCPが準備されていることと思います。
しかし、金融界の抱く危機感は相当なレベルにあります。

ユーロ危機で明らかになったことの一つに、比較的小規模の金融機関の経営危機が、世界各国にリアルタイムで伝播するという恐ろしさ。

先に発表された大地震と津波等が現実に発生した時に、経営基盤を絶望的に喪失してしまう恐れのある金融機関が、全国各地に存在します。

日本発の世界金融危機を何としても防ごうという金融当局の危機意識に対して、私も何が何でも応えたいと思うのです。
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そんな状況で民主党から打ち出された「原発ゼロ」の方針に対して、議論が沸騰しています。

常日頃から「日経新聞ファン」を自認する私ですが、「原発ゼロ」に対する同新聞の主張には、疑問を感じました。
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「原発ゼロで日本の安全保障は脆弱性を増す。化石燃料の輸入増と自然エネルギーの急拡大に伴うエネルギーコスト増は産業の競争力を奪う。」
「国民生活にも悪影響が及ぶのが心配だ。」

ここまでは、異議なしです。
しかし
「政府と与党が第一に取り組まねばならないのは原子力安全規制の刷新だ。」
「二度と悲惨な事故を繰り返さないよう厳正な規制を実現し、原子力政策への国民の信頼感を取り戻すことを急ぐべきだ。」

この空虚で無責任な結論に、私は全く同意できません。
どんな規制を行なったら、地震・津波・テロのリスクを日本でゼロにすることが現実的に可能だというのでしょうか。

事故リスクをゼロにすることはできません。
そのリスクの存在を前提に、例えば原発から半径20キロの住民や企業を避難させるというコストを負担してでも、それでも原発を稼働させる

住民避難が不可能な原発は、決して稼働させない。

現実的なリスクを前提にしたBCPは、原発行政にこそ必要です。

「安全神話」の幻想を助長して、産業界からの要望と調和させる
そんな疑いを持たれても仕方のない日経新聞の姿勢に、猛省を促したいです。
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