BAMBOO-JET  ~うみの部屋~

タケノコジェットでどこへでも!
読んだ本や見た映画、食べた料理、旅先、育児や日常のことなど、趣味をつらつら語ります

少し変わった子あります

2008-01-05 20:52:12 | 読書感想文
少し変わった子あります。。。
というタイトルですが、このお話が少し変わってる。
ある大学の先生(教授か準教授か講師か実は定かでない)が行方不明になった友人から紹介してもらったある料亭。
そこは名前のない店で場所もその都度変わる、あるときはオフィス街の地下だったり、郊外の森の中だったり、廃校になった小学校の中であったり。
そして白い和服のきれいな女将に完全個室でその都度季節のフルコースの料理を目召し上がる。
この店の特徴はある特殊なサービスだ。
毎回まるでクラブのホステスのように、女性が現われ一緒にご飯を食べてくれるのだ。といっても、すごい美人だとか、話し上手だとか、個室でご飯を食べるからといって色っぽい展開があるわけでもない。
毎回登場する女性達はどれも普段着の女性で、だいたいが20代のOLや女子大生など、中には30代の主婦というのもある。無口な子やおしゃべり好きな子などさまざま。ただわかってるのはどの子もご飯を食べる姿がとても美しいということ。箸使い、手の持って生き方、口に運ぶ姿、どれをとっても完璧なアートとしか表現できない美しさであるとか。
この本を読むといかに食事においてのマナーや作法が大事か思い知らされる。ただただその美しさだけで満足させてしまうのだ。普通人がご飯を食べる姿というのはあまり美しいものではないとは思うが、この本の女性たちのように相手を感心させるほどきれいにご飯を食べる姿を身につけたいものだと思う。そして色々な女子絵とご飯を食べることで主人公も色々な世界を垣間見えることになる。ともに食事をすること、それはその人の人生もその間ともにすることだと私は思う。一緒にどれだけの間食事をともにできたかによって相手との仲は深まるという言葉が以前ある映画の中で出てきたが、それに反してここのお話では同じ女性は出てこない。彼らは食事をするほんの少しのひと時だけともに時間を過ごすという刹那的な関係だけど、その一瞬のふれあいを毎回独特の雰囲気であらわしてると思う。
後半部分にちょっとミステリアスな展開になりますが。ラストはちょっとぎょっとしました。いつの間にか主人公が別の人間に代わっててゾクっきてしまいました。
なんかホラーではないけれど、妖しいというか、狐につつまれたみたい。
予断ですが、作者は現役の助教授です。だからかな?文中の主人公たちは大学の先生なので、特殊な世界の日常が書かれてて、作者もこういう風に考えてるんだろうか?などと思いました。

○少し変わった子あります  文芸春秋 800円 森博嗣