紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

トム・ソーヤーは勝ちか?

2007-07-20 22:24:25 | 読書
 まだ梅雨もあけていないのに、気分は夏である。スーパーに行って西瓜1/4と桃2個の特売を買い、部活で疲れすぎて食欲のないKちゃんに食べさせてあげる。中学生になって小食になったKちゃんだが、相変わらずの明るさと元気さである。

 私は先日買って、こっそり茹でて食べたトウモロコシがあんまり美味しかったものだから、ふたたび100円の特売品を買った。しかし茹でるタイミングを逃し続けている。冷蔵庫の野菜室で、ゆっくりと味を落としているトウモロコシのことを考えると遣る瀬ないが、明々後日の家庭訪問(季節外れだけど、夏休みにあります)のために、片付けたり聡怩オたりするのも、時間を忘れる程楽しい。
 
 そんなことをしながら、ふと「トム・ソーヤー」のことを考えていた。ご存知の通りマーク・トウェインの小説である。少年少女世界名作全集のラインナップには必ず顔をだすレギュラー選手である。

 トムは、たいへんな悪戯っ子で、悪魔のように手際良く人を手玉にとることができる。ほとんど特技といっていい。

 物語のしょっぱなから、おばさんに「へいのペンキ塗り」を命じられて、いやいやペンキを塗るトムなのだが一計を案じた。友だちが来ると、さも楽しくてたまらないかのようにペンキを塗っている振りをする。まんまと友だちがペンキ塗りをしたくてたまらない気持になると、持ち物を巻き上げた上、ペンキ塗りを「させてあげる」。次々とやってくる友だちに、順番にペンキ塗りを「させてあげて」は、彼らの持ち物を巻き上げるのだ。

 なんという悪党~♪(子どもの頃から「悪党」好き!)と思いつつ、かつて読んだ「トム・ソーヤー」だったが、ふと「もしかしたらここでトクしてるのは、実はトムの友だちなのでは?」と思いついてしまった。
 
 彼らも最初は「ペンキ塗りは、つまんない押し付けられ仕事」だとしか思っていない。それでもトムの迫真の演技により、「ペンキ塗りは、めっちゃ面白いやん!?」ということを「発見」してしまったのだ。一般的な視点からみたら、どうにもつまんない仕事も、角度を変えて仕事の中の面白さを発見しさえすれば、のめり込んで楽しめることを発見したのだ。

 子どもの頃は、トムの一人勝ちだと思っていたけれど、なんのなんの、友だちをひっかけるために、「楽しむふり」をしていたトム一人だけが、ペンキ塗りの楽しさを味わえなかったのである。なんという可哀想なトムであろうか。

 こういうことって、もしかすると世の中に一杯あるのかも。「勝ち組」といえど、それは単に世間一般の価値基準に過ぎない。もしかすれば「負け組」の方が、案外、面白可笑しい人生なのかもよ、と思う雨の夜である。