花のたより☆山のふみ~青森県立名久井農業高等学校~

農業と環境の研究グループ「チームフローラフォトニクス」と弟分である「ハンターズ」の取組みを紹介します!

ヤマセをとらえる

2013年07月02日 | 研究
TEAM FLORA PHOTONICSの今年の
サクラソウ調査のテーマは「自生地の環境」でした。
いろいろな環境要素のデータを収集することで
持続可能な自生地なのか多面的に考えるのが目的です。
その調査のひとつが気象データ。
先日、4月下旬に自生地に設置したデータロガーを
雑草の中から無事回収しました。
まるでロケットの「はやぶさ」を回収するような気分です。
ボタン電池ほどの小さな温度計をコンピュータに接続すると
2ヶ間の気温の推移がこのようにあらわれました!
左端は4月下旬、右端は6月下旬です。
このグラフを見ておかしいとは思いませんか?
気温が上がってくるはずの6月になればなるほど
グラフの山は小さく、一日の気温差もあまりありません。
この特異なデータの正体こそ、
海から入ってくる低温多湿の偏東風「ヤマセ」です。
ヤマセが吹くと日中の気温はあがらず、夜は逆に放射冷却現象が
起きないので思ったより気温は下がらないからです。
植物生理から考えると光合成はあまり促進されず、逆に夜の呼吸は
増えることになり植物の生育にとっては良い環境ではありません。
今回の環境調査によって、偶然にもチームはヤマセという
種差海岸の自生地ならではの過酷な環境をとらえることができました。
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サクラソウ自生地の環境

2013年07月02日 | 研究
種差海岸のサクラソウ自生地です。
春はサクラソウだけしか生えていませんでしたが、
ご覧のとおり6月に入ると他の草に占領されてしまいました。
チームではサクラソウにどれぐらい光合成に必要な光が当たっているのか
毎回測定してきましたが、現在は春に比べて20分の1しかありません。
確かに受粉は5月に行われるので他の草に邪魔されませんが
今は結実した種子が育つ時期であり、来年のための栄養を蓄える時期です。
つまり旺盛な光合成が望まれる時期に、このように草の陰になってしまい
光合成に影響を与えてしまうのはあまり好ましい環境とはいえません。
さらに写真をよく見ると星形のガクの上に小さな実がついています!
しかし私たちの今年の調査では結実率は10%もありません。
その他のデータから判断しても、この自生地はどうやらクローン繁殖がほとんどで
遺伝子的の多様性はあまり期待できないようです。
日本のサクラソウ自生地全体にいえることですが、これは危うい状態です。
今後は訪花昆虫の生息場所を作ったり、雑草をコントロールするなど
ある程度意図的な保護活動が求められそうです。
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