教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

半導体の歩留まりが100%にならない理由

2010-08-08 00:03:52 | 科学
さいきん技術屋の間でよく聞くようになった寓話(?)がある。



半導体屋は言った。
「うちのプロセスでは部品の歩留まりは90%だ。すごいだろ」
車屋は反論した。
「不良率は0にするのが当然だ。10%も捨てるなど何考えていやがる」



半導体屋にとっても車屋にとってもアタリマエのことを言っているだけなんだが、なぜか話がかみ合わない。
まあこれは分野が違えばこうも違うのかという事のいい例として使われているのだろう。

もちろん半導体も作ったあとに全品検査しているので、ふつうは不良品は流出しない。
まあ、あくまでも「ふつうは」というところだが。

どことは言わんが、
「カタログスペックは3σ(不良率0.3%)だから文句を言うな!」
と言って不良品が混じるのは当然だとかぬかす某会社とか、
「あなたのリフロープロファイルがクソだから壊したんでしょ、きっと」
とか言って不良を絶対認めない某会社とかもあるが、一般的にはそれは例外だろう。(ただし韓国をのぞく)

まあ、それはおいといて。
ではなぜ半導体プロセスは歩留まり100%にならないのか。

半導体の作りかたをわかっていれば当然なのはわかるんだが、プロセスの技術的などうのこうのとか統計的分布がどうのとか言うのはやめにする。
車屋から見た立場で考えてみたい。



そもそも車屋は車をどう作っているのか。

たいがいの車屋は部品の多くを自分で設計するが、自分では部品をほとんど作らない。
たいがい他の会社に発注して買ってくる。
そして自前の工場で組み立てる。
それがキホンとなる。

たいがいの車屋は、買ってきた部品に不良が混じってたらブチ切れる。
そして品質保証部の怖いおじさんが殴りこみにやってくる。(というのは大げさすぎるかもしれんが(笑))

だから部品をおさめる会社は不良が出ないように検査してから出荷する。
それをもって組み立てれば、机上計算の上では不良品の車は完成しない。



では半導体はどうか。

1chipに1億個ものってるトランジスタを全部一括で作る。
その1億個の中で1個以上不良品が混じってできてしまうと全体が不良になる。
(DRAMやFRASHの不良救済はこのさいおいといて)

だから半導体屋は車屋にこう反論する。


俺たちは検査もせずに全部一括で作っているんだ。
最後のほうになってから検査しているんだ。
だから不良がでる。
もしトランジスタを1個づつバラで作って、それを1個づつ検査して、1個づつつまんで組み立てて1億TrのLSIを作ってもいいなら、歩留まりはほぼ100%になるかもしれない。
けど、そうやって作ったLSIはきっと車1台買えてしまうくらいの高額なものに仕上がる。
とても数100円では作れるわけがない。
さて、あなただったらどっちが良いと思う?


などと言うわけだ。

そもそも1億個もトランジスタがのってて歩留まり90%だとすると、トランジスタ1個あたりの不良率はそれこそ天文学的に小さくなければ成り立たない。
たぶん車屋の歩留まりよりもさらに良い値が出てくるのではなかろうか。



まあこれもどっちが良いというわけではなくて、分野が違えばベスト解も違うわけで、よく知りもしない段階で他分野のやりかたを持ち込んでもしょうがありませんな、という事ですな。