笑顔浴

優しい時間

風の冷たい日に

2013年11月26日 | Weblog

駐車場へ向かう 屋外のエレベーターで

少し遅れて近づく女性を、ボタンを押して待った。

「待たなくてもよかったのに」

「今日の風は冷たいですから」

「どうも、ありがとう。今日はショックなことがあった」

と、何の前置きもなく 背中を向けたまま、お話がはじまった。

 

「検査の結果、私はあと三か月で死ぬと言われた。」

「三か月ですか・・・」

「主人に伝えろと言われても、男の人は、仕事が一番じゃろ。

 私と仕事とどっちが大事?と聞いたこともあったけど

 6年前から30回も、独りで入院したのに、ショックよ

 でも仕方がない、誰もが皆、いづれ死ぬんじゃから」

 

エレベーターの扉が開いて、降りた。

「あんた、どっち?」と訊かれるまで、私を見なかったのは

ご自分と対話されていたのではないかしらん。

かける言葉が見つからず、とりあえず

「どうぞ、お気をつけて」と挨拶をして

トボトボとすすむ、小さな背中をしばらく見送った。

 

身体の痛みは薬でとれても、

周囲との人間関係から生ずる痛みまで軽減できるわけじゃない

お忙しいご主人も奥様の病気に無関心であるとは思えないし

お二人にとって、それなりのよい時間が流れますようにと願う。

 


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