2004年3月に初版が発行されている。あの東日本大震災と猛烈な津波被害の後でも、ちっとも古くない。そして、多くの教訓に富んでいる。
徹底的に足で取材し、地元の人たちの体験や声を拾い集めまわったその執念は、きっと読む人の心をとらえるに違いない。
著者は関東大震災についても書いている。東日本大震災のあと、両方の本を読んで、大いに触発されたが、特に心を打たれたのは、この『三陸海岸 大津波』だった。
文中に、昭和8年の大津波の後、岩手県田老村の田老尋常高等小学校生徒たちが書いた作文が転載されている。
「 つなみ 尋三 大沢 ウメ
がたがたがたと大きくゆり(揺れ)だしたじしんがやみますと、おかあさんが私に『こんなじしんがゆると、火事ができるもんだ』といって話して居りますと、まもなく『つなみだ、つなみだ』と、さけぶこえがきこえてきました。
私は、きくさんと一しょにはせておやまへ上りますと、すぐ波が山の下まできました。だんだんさむい夜があけてあたりがあかるくなりましたので、下を見下しますと死んだ人が居りました。
私は、私のおとうさんもたしかに死んだだろうと思いますと、なみだが出てまいりました。
下へおりていって死んだ人を見ましたら、私のお友だちでした。
私は、その死んだ人に手をかけて、
『みきさん』
と声をかけますと、口から、あわが出てきました。」
これらを読んで、衝撃のあまり、声もでない。
これら人間の叫びを記録し、後世に伝えてくれている著者に脱帽です。