家を出ると坂道が広がる。
500mくらいの登りだ。
ブラブラと歩くのだが、どうしても目線が下になる。
歩道にレンガが敷き詰められている。
それにしても不思議だ。
レンガのならびに1ミリのずれもない。
丹念に敷き詰められている。
よほどしっかりした職人さんだったのだろう。
そう言えば1993年に、はっけん号という調査船を作ったとき、ビンセントが驚いていた。
甲板を留めたビスのネジ山の方向がきれいに一直線になっていたのだ。
「日本人はすごいな」
彼はつくづくそう言ってため息をついた。
少しぐらいずれてもよい、ということは日本のまともな職人は考えていない。
ビスのネジ山がどの方向へ向こうが、船の航行とは関係ない。
しかし、きちんとしたいのだ。
これは中国やカナダでは考えられないことだ。
また一つ、通勤路での発見が増えた。
こんなところに日本人の特徴と信頼がある。
忘れたくないものだ。