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一夜明けたネズミは、誰かに踏まれて平たくなっていた。
やがてこうしてアスファルトと同化していくのだろう。
それにしても、他の生物が食べに来ないのはなぜだろうか。
周辺には草地もあるのに、わざわざ歩道の路面で死んでいるのはなぜだろうか。
死期が近づいた動物は、他者から見えないところで死ぬと思っていた。
ということは、突然、死期が訪れたということなのだろう。
自分の人生を、ネズミと重ねてしまう。
準備が整わない内に死期が来れば、おそらく路面に倒れて人目にさらされるのだろう。
通行人に踏まれるかもしれない。
さすがにアスファルトに溶け込むことはないだろうが、とてもみじめな気がする。
思わずネズミに同情する。
そう言えばモンゴルで、鳥インフルエンザで死んだ野鳥を見つけたことがある。
手で触るのがためらわれたので、木の枝で突いてみた。
広大な湖のそこかしこに横たわる死んだ野鳥は、獣にも食べられずくちかけていた。
ネズミよ。
おまえはなぜ死んだのだ。
こんな路上にさらられて、悲しくはないのか。
口惜しくはないのか。
まるで石ころのように転がったままのネズミは、他者に食べられもしない。
このことが、たまらない悲しみを引き起こす。
死してなお、役に立たないとは。
巨大な輪から外れたネズミが、再び立ち上がって走り出すことはない。