現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

黒川博行「螻蛄」

2016-09-05 11:36:27 | 参考文献
 五作目の「破門」で2014年上半期の直木賞を受賞した「疫病神(その記事を参照してください)」シリーズの第四作です。
 カタギの主人公と極道の相棒が、掛け合い漫才のようにして暴れまわる作品の、今回の舞台は東京です。
 シリーズ物はどれもマンネリしてくるものですが、このシリーズは構造的な欠陥を持っているので、特に厳しいようです。
 このシリーズは、17年間に5作書かれているのですが、作品内の世界では、一作ごとに一年ぐらいしかたっていません。
 そのため、作品世界と作者が書いている実時間がだんだんかい離れていき、四作目のこの作品ではそれがかなり顕著になっています。
 一方で、このシリーズは時間が先に進まない遍歴物語でなく、一作で登場人物が一歳ずつ年を取っていく成長物語なわけで、そのあたりの矛盾(特に若い登場人物において)が出てきています。
 児童文学の世界でもシリーズ物はたくさん書かれていますが、遍歴物語(例えば那須正幹の「ズッコケ」シリーズなど)や成長物語(松谷みよ子の「ちいさいモモちゃん」シリーズなど)の間で作者たちは試行錯誤しています。

螻蛄(けら)―シリーズ疫病神 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
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