2012年の大江健三郎賞を受賞した作品です。
彼の部屋に行き場をなくした元カノが転がり込んだことから起こる、奇妙な三角関係の話です。
彼と元カノがアメリカ暮らしが長かったという設定が、日本人には不条理な話を日米間の文化や人間関係の違いから発生しているのかと思わせるようになって、うまくいかされています。
また、途中で主人公が英会話の教師に日米の文化や人間関係の違いについて相談するところで、主人公が英語が理解できなくて誤解する(女性教師には、日米の文化の違いはあるが、男女問題は日米でも共通でそれより優先されると言われたのに、主人公は理解できなかった)ところもいきています。
元カノとは男女関係ではなく受け入れたのは人道的な理由だと言い張る(自分も信じたがっている)彼、表面的にはほかに選択肢がないふりをして裏では徐々に彼に復縁を迫っている元カノ、そんな二人の関係をアメリカ的なのだろう理解しようとする主人公、三人全員が実は欺瞞に満ちています。
とうとう最後に爆発して、素を見せる主人公の大阪弁の啖呵が圧巻です。
京都生まれの上品なイメージのある綿矢が、一皮むけたようなぶっちゃけ方です。
作品中の主人公に対して書いているのと同じく、きっと子どものころ吉本新喜劇をテレビで見て、この関西風のキレ方が綿矢の内部にも搭載されていたのでしょう。
一皮むけたといえば、デパートに務める主人公の職場の様子にも、体験または取材の成果が感じられて、綿矢の作品における今までの観念的な会社の描写から一歩前進です。
本当のデパートの職場は、非正規従業員だの、メーカーからの派遣だの、もっとドロドロしているとは思いますが、まあ実社会経験の乏しい綿矢としては、かなり頑張ったのではないでしょうか。
そういえば選者の大江もかつては学生作家でしたから、同じように実社会体験がないのでこの程度で納得していたかもしれません。
この点でも綿矢のメインの読者である同年代の(特に働く)女性たちには、十分シンパシーを感じてもらえたと思います。
前半部分はいつもの綿矢らしいエキセントリックな部分が内容的にも文章的にも薄かったのですが、元カノの本性を主人公が知ったところで文体も主人公のキャラもガラリと変貌して綿矢本来のエキセントリックな魅力が爆発していて爽快でした。
欺瞞に満ちた現実への暴力的な爆発は、今の児童文学の世界でももっともっと書かれてもいいものだと思いました。
彼の部屋に行き場をなくした元カノが転がり込んだことから起こる、奇妙な三角関係の話です。
彼と元カノがアメリカ暮らしが長かったという設定が、日本人には不条理な話を日米間の文化や人間関係の違いから発生しているのかと思わせるようになって、うまくいかされています。
また、途中で主人公が英会話の教師に日米の文化や人間関係の違いについて相談するところで、主人公が英語が理解できなくて誤解する(女性教師には、日米の文化の違いはあるが、男女問題は日米でも共通でそれより優先されると言われたのに、主人公は理解できなかった)ところもいきています。
元カノとは男女関係ではなく受け入れたのは人道的な理由だと言い張る(自分も信じたがっている)彼、表面的にはほかに選択肢がないふりをして裏では徐々に彼に復縁を迫っている元カノ、そんな二人の関係をアメリカ的なのだろう理解しようとする主人公、三人全員が実は欺瞞に満ちています。
とうとう最後に爆発して、素を見せる主人公の大阪弁の啖呵が圧巻です。
京都生まれの上品なイメージのある綿矢が、一皮むけたようなぶっちゃけ方です。
作品中の主人公に対して書いているのと同じく、きっと子どものころ吉本新喜劇をテレビで見て、この関西風のキレ方が綿矢の内部にも搭載されていたのでしょう。
一皮むけたといえば、デパートに務める主人公の職場の様子にも、体験または取材の成果が感じられて、綿矢の作品における今までの観念的な会社の描写から一歩前進です。
本当のデパートの職場は、非正規従業員だの、メーカーからの派遣だの、もっとドロドロしているとは思いますが、まあ実社会経験の乏しい綿矢としては、かなり頑張ったのではないでしょうか。
そういえば選者の大江もかつては学生作家でしたから、同じように実社会体験がないのでこの程度で納得していたかもしれません。
この点でも綿矢のメインの読者である同年代の(特に働く)女性たちには、十分シンパシーを感じてもらえたと思います。
前半部分はいつもの綿矢らしいエキセントリックな部分が内容的にも文章的にも薄かったのですが、元カノの本性を主人公が知ったところで文体も主人公のキャラもガラリと変貌して綿矢本来のエキセントリックな魅力が爆発していて爽快でした。
欺瞞に満ちた現実への暴力的な爆発は、今の児童文学の世界でももっともっと書かれてもいいものだと思いました。
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