現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

黒川博行「悪果」

2016-09-15 09:22:49 | 参考文献
 2007年下半期の直木賞の候補になった作品です。
 大阪府警の悪徳刑事コンビが、地上げ屋や極道とすったもんだしたあげく、大金を手に入れるのと引き換えに警察を追われるまでを描いています。
 ここでも、博打や汚職や極道と言った裏社会に対する豊富な知識を駆使して、リアリティのあるエンターテインメントになっています。
 しかし、主人公の二人が、所詮はちんけな悪徳警官にすぎないので、読者が共感できません。
 その点、直木賞を受賞した「疫病神」シリーズは、主人公は一応カタギですし、相棒の極道も暴力はふるいますが憎めないところがあって魅力がありました。
 児童文学の世界でもそうですが、コモンリーダーと呼ばれる一般読者の多くは、主人公に肩入れして物語を読むので、そういった意味では、「疫病神」シリーズの方が、直木賞受賞にふさわしかったでしょう。

悪果 (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)
コメント
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