いつかは願いが叶う時がある。「聖書外典・偽典」全9巻(教文館)だ。はじめこの本を知ったのは、30年前、ある教会の中の牧師室であった。その時、金色に輝くこの本を「何としてでも自分もほしい」そう思ったものだ。
そして再び見つけたのは、その町のメイン商店街にあった古本屋でだった。喜んで釘付けになって棚を見上げてため息をついた。とても手が出る金額ではなかったからだ。それから信徒であっても、このうえない聖書の奥深さを手ほどきしてくださった某兄も所持していると聞き出した。エノク書についてなど、詳しかったからだ。
古本屋がつぶれたと聞いて、(とても正価で買う気はなく)半ばあきらめていたのだが、何と高円寺の古本屋で見つけたときは興奮した。しかし新たな問題が生じた。このわずかなと言うなかれ、置くところがないのである。また、そうそう使うものでないが、聖書の講解の必要に応じて「あればすごく助かる」という類いのものである。そうしているうちに船橋に引っ越し、半年がたった。たまに高円寺に行っては店をのぞき、「まだある」と帰っていた。
しかし今日という今日は、なんだか思い留まらせる「ブレーキ」が壊れたようにほしくて仕方なかった。値段も最初に出会った古本屋に比べ半額以下に下がっている。躊躇して、いったんは帰ろうとして近くのマックに寄って吟味した。別に学者になりたい訳ではないが、頻繁に外典などを引用している聖書箇所を見るにつけ、知らなければお話にならないではないか?そう思ったので、ついに!もう一度店に戻って、<買ってしまった>。最初に出会ってから30年の年月が経っている買い物だった。 ケパ