元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

大根役者を持て囃す愚(その2)。

2020-02-02 06:38:22 | 映画周辺のネタ
 タイトルに“その2”とあるが、“その1”をアップしたのは2019年の11月である(笑)。およそ2か月以上のインターバルがあり、何やら“証文の出し遅れ”みたいな感があるが、とりあえず御容赦願いたい。

 最近のワイドショーでよく取り上げられている芸能ネタといえば、何といっても俳優の東出昌大の不倫騒ぎである。まあ、浮気云々というのは当人たちの問題であり、外野が道徳論を振りかざしてあれこれ言う筋合いはないのだが、それでも本人のイメージを生かしてCMに起用していた企業からすれば、迷惑千万な話である。そしてもちろん、彼をドラマに出演させていたテレビ局のダメージも大きい。けっこうな額の損害賠償の案件が持ち上がることは必至だろう。

 さて、これだけバッシングが大きくなった原因のひとつとして挙げられるのは、東出自身の演技者としての資質だと思う。これがもしも、演技力もカリスマ性も持ち合わせた大物ベテラン俳優が不倫騒ぎを引き起こしても、そんなに叩かれなかったと想像する。それどころか“浮気も男の甲斐性”だとか“不倫も芸の肥やし”だとかいう不謹慎な言説も大っぴらに飛び交っていたかもしれない。

 対して東出は、いわゆる“朝ドラ大根三羽烏”の一人として、その演技の拙さには“定評”がある(笑)。以前の沢尻エリカの一件では“彼女は演技力があった(だから残念)”という声も少しはあったようだが、今回は東出の仕事ぶりを褒める意見はほとんど見られない。身も蓋もない話だが“東出は大根の分際で、マトモな女優である嫁さんを蔑ろにして、若い女に走った”という構図が出来上がってしまったのだろう。こうなっては、弁護する余地はほぼ無い。

 問題は、この“誰もが認める大根”である東出が、コンスタントに仕事を続けていたことだ。ネットの記事によれば彼は、周囲に取り入るのが上手かったという。特に女性スタッフのウケがすこぶる良かったとか。キャスティングの際に彼を激押しする女性プロデューサーもいたらしい。しかしながら、いくら彼の“営業力”が高かったといっても、演技が下手な役者を起用してやる義理など、微塵も無いはずだ。

 大根であることを知りつつも、おそらくは愛想が良いとか何とかいう理由で映画やドラマに大きな役で出演させてしまうという、そんな業界の実相が浮かび上がり、暗澹とした気分になる。たぶん彼より演技力があってルックスもイケてる若手・中堅男優は少なくないと思う。だが、そんな者たちを差し置いてスクリーンやテレビ画面の真ん中に居座るのは、東出みたいな見掛け倒しの野郎なのだ。

 ハリウッドでは、いくら見た目が良く愛嬌があっても、演技力が無ければたいてい採用は覚束ない。ヨーロッパや他のアジア諸国でも同様だろう。大根役者がデカい顔しているのは日本だけかもしれない。

 東出の不倫相手である女優の唐田えりかも、彼に劣らずかなりの大根である。2人が共演した「寝ても覚めても」(2018年)は大根2本が画面に並んだ、本当にウンザリするような映画だった。なぜか第71回カンヌ国際映画祭に出品されていたのだが、まさに国辱ものだと思ったものだ。今回、大根役者が2人まとめて消えそうになっているのは、ある意味良かったと言えるかもしれない(呆)。他の大根も放逐されて欲しいものだ。
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上の空で選んでしまった2019年映画ベストテン。

2019-12-30 06:28:22 | 映画周辺のネタ
 毎度のことだが、ここで2019年の個人的な映画ベストテンを発表したいと思う(^^;)。

日本映画の部

第一位 デイアンドナイト
第二位 メランコリック
第三位 愛がなんだ
第四位 よこがお
第五位 チワワちゃん
第六位 楽園
第七位 アルキメデスの大戦
第八位 さよならくちびる
第九位 最初の晩餐
第十位 半世界



外国映画の部

第一位 2人のローマ教皇
第二位 アベンジャーズ エンドゲーム
第三位 マリッジ・ストーリー
第四位 アイリッシュマン
第五位 存在のない子供たち
第六位 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男
第七位 天才作家の妻 40年目の真実
第八位 アクアマン
第九位 家族を想うとき
第十位 スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム



 邦画に関しては、やっと10本揃ったという感じだ。言い換えれば、このうち一本でも欠ければベストテンは選べなかった。それだけ日本映画は低調であった。何より、現実を直視するような題材を取り上げた作品が少ないのが痛い。周囲を見渡せば、いくらでもアップ・トゥ・デイトで掘り下げる価値のあるネタが転がっているにも関わらず、作り手の多くはそれらを無視して毒にも薬にもならないシャシンを垂れ流している。

 対して、隣の韓国では切迫した社会派作品を次々と繰りだし、またそれがヒットしているという。彼の国に対してはいろいろと思うところがあるが、こと映画作家の意識の高さについては大差をつけられた感じだ。

 アメリカ映画では何といってもNetflixの台頭が印象的だった。既存の映画会社が手を出しにくい、あるいは興行に乗せるのを躊躇するような企画をあえて引き受け、大きな成果を上げている。劇場公開はどうしても限定的になるが、無理してでもチェックする必要性を強く感じる。今後の展開に注目したい。

 なお、以下の通り各賞も選んでみた。まずは邦画の部。

監督:藤井道人(デイアンドナイト)
脚本:澤井香織、今泉力哉(愛がなんだ)
主演男優:山崎努(長いお別れ)
主演女優:筒井真理子(よこがお)
助演男優:成田凌(愛がなんだ)
助演女優:市川実日子(よこがお)
音楽:ユップ・ベヴィン(楽園)
撮影:相馬大輔(チワワちゃん)
新人:玉城ティナ(惡の華)、田中征爾監督(メランコリック)、常盤司郎監督(最初の晩餐)

 次は洋画の部。

監督:フェルナンド・メイレレス(2人のローマ教皇)
脚本:クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー(アベンジャーズ エンドゲーム)
主演男優:ジョナサン・プライス(2人のローマ教皇)
主演女優:グレン・クローズ(天才作家の妻 40年目の真実)
助演男優:ジョー・ペシ(アイリッシュマン)
助演女優:ローラ・ダーン(マリッジ・ストーリー)
音楽:タチアナ・リソフスカヤ(永遠の門 ゴッホの見た未来)
撮影:ディック・ポープ(ピータールー マンチェスターの悲劇)
新人:チャーリー・プラマー(荒野にて)、ジュリア・バターズ(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)

 ついでに、ワーストテンも選んでみた(笑)。

邦画ワースト

1.新聞記者
 もはや日本映画は、かくも低レベルの“社会派”作品しか提示出来ないのかと思い、落胆するばかりだ。
2.天気の子
3.カツベン!
4.蜜蜂と遠雷
 音楽を理解していない者たちが音楽映画を手掛ける不思議。
5.宮本から君へ
6.台風家族
7.ひとよ
8.轢き逃げ 最高の最悪な日
9.居眠り磐音
10.まく子

洋画ワースト

1.主戦場
 イデオロギー先行の題材に目がくらみ、映画の出来自体に言及しない風潮に、危ういものを感じた。
2.女王陛下のお気に入り
 それにしても、2019年度の米アカデミー賞は(前回に続いて)低調だった。
3.ファースト・マン
4.ターミネーター:ニュー・フェイト
5.トイ・ストーリー4
6.ゴールデン・リバー
7.バーニング 劇場版
8.キャプテン・マーベル
9.サスペリア
10.メリー・ポピンズ リターンズ

 ローカルな話題としては、TOHOシネマズ天神本館が2017年に閉館して以来、福岡エリアのスクリーンの絶対数が足りない状況が続いてきた。だが、2020年にはそれが幾分解消できるような話を聞いている。期待したい。
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映画を観ると人生が変わるか?

2019-12-13 06:53:21 | 映画周辺のネタ
 映画好きの中には“映画を観て人生が変わった”と公言する者が少なくないらしい。でも、果たして映画に観る者の人生を左右するほどの力があるのだろうか。私自身に限って言えば、たぶん幼少期や十代の頃には“愛情”とか“正義”とかいったことに対する基本的概念を映画から学んだ部分があるのかもしれない。しかし、本来そういうものは映画だけが教えてくれるものではなく、実生活での人間関係において自然に培われるべきものであり、映画で描かれることは単に“補完的な教材”といったものでしかないはずだ。

 また、現在映画業界で働く者にとっては特定あるいは複数の映画が今の職業を志望するきっかけになったと思われるので、その意味で“映画が人生を変えた”と断言できるのかもしれない。しかし、もとより業界にコミットしようなどとは思わない私を含めた大多数の人間にとって、映画は“単なる娯楽”であり、人生を変えるほどの影響力を行使する主体ではあり得ないのだ。

 世の中には周囲の人間関係ぐらいではカバーできない膨大な事物があふれている。ならば、それらを理解するのに役立つのが映画だろうか。これも違う。この世界を出来るだけ正しく認識しようとするならば、自ら精進して疑問点と格闘しながら少しずつ“教養”をステップアップさせるしかない。

 映画は受け手が何の努力をしなくても勝手に映像と音響が一方的に流れてゆく。いくら映画鑑賞には劇場に足を運んで金を払わなければ観られないという最低限の自発的行動が必要だといっても、形態において基本的に映画はテレビと変わらないのだ。対象者の受動的なスタンスを前提としたメディアに人を根源的に動かすパワーを期待するのは無理があると思う。

 しかし、映画が新しい知識や分野に興味を持たせてくれるきっかけとなることはある。たとえば歴史物や伝記映画を観れば物語の背景を調べたいと思うだろうし、見知らぬ国の珍しい習慣や伝統を映画で目にすれば内容を詳しくチェックせずにはいられない。映画の題材そのものだけではなく、映画の原作を読むことによって読書のバリエーションが増えることだってある。

 いろいろ書いてきたが、結論としては次の二点にまとめられる。(1)映画が人生を変えるほどの力を発揮することはまずない。(2)しかし、観る者の趣味や嗜好にわずかながら影響を与えるほどのスパイスには成り得る。映画はしょせん“娯楽”でしかないが、捉えようによっては人生をほんのちょっと楽しくするヒントになる(こともある)。ほとんどの者にとって、映画に対するスタンスはこういったものであろう。もちろん“人生を変えてくれる何かがあるはずだ”といった前提で映画を観るのは本末転倒であることは言うまでもない(まあ、そんな人はあんまりいないだろうけど ^^;)。
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大根役者を持て囃す愚。

2019-11-22 06:57:50 | 映画周辺のネタ
 先般の沢尻エリカ容疑者の逮捕により、彼女が重要な役で出演する2020年放映予定のNHK大河ドラマの取扱いが難しくなっている。以前より疑惑があった沢尻をわざわざキャスティングしたNHKの脇の甘さは問題だが、やっぱり無節操に長年薬物を使い続けた本人の責任は逃れられない。残念ながら、彼女が第一線に復帰することは不可能だろう。まさに“後悔先に立たず”である。

 さて、この件に関する言説で私が最も違和感を覚えたのが“(沢尻は)見た目の良さもさることながら、才能があった”とか“実力派女優だった(だから惜しい)”とかいうマスコミや識者等の物言いである。

 確かに、沢尻のルックスは華やかで見栄えがするが、私が彼女の演技に感心したことは、ただの一度も無い。有り体に言えば、かなりの大根である。もちろん、デビュー時から実力を発揮する天才肌の俳優は限られているし、多くは駆け出しの頃は未熟だ。しかし、努力を重ねて場数を踏めば、誰でも次第に上手くなってくるのだろう。そういう例はいくらでも見ている。また、たとえ現時点で努力が報われていなくても、懸命に頑張っていれば応援したくなる。

 だが、沢尻はデビューしてから15年も経ち、出演作も決して少なくない。にも関わらず、演技面で大きな上達は見られないのだ。これは即ち、彼女にはもともと才能が無いか、または努力を怠っているか、あるいはその両方であると断言せざるを得ない。

 そんな彼女を“才能があった”とか“実力がある”とか言って持ち上げる向きは、いったいどこを見ているのだろう。彼女と同じ世代には蒼井優や満島ひかり、宮崎あおい、貫地谷しほり、安藤サクラなど、実力派がそろっている。彼女たちと比べて、それでも“沢尻は実力がある”と言い切ってしまう神経が分からない。

 思えば、沢尻が井筒和幸監督の「パッチギ!」(2004年)で新人賞を総なめにした時点で、違和感を覚えた。大した演技でもないのに高く評価されたのは、何かの“裏”があるのではと思ったほどだ。ひょっとしたら、若い頃の分不相応な高評価が彼女に道を誤らせたのかもしれない。

 さて、今の邦画界において“明らかな大根”あるいは“大根なのに、それを自覚せず精進を怠っている”と思われる役者が散見されるのには愉快ならざる気分になる。まあ、私も時折たとえば“朝ドラ大根三銃士(または四銃士)”みたいな言い方で茶化したりはするが(笑)、本当はそれじゃダメなのだ。人前に出る以上、それにふさわしいパフォーマンスを見せる(または、見せるように努力する)ことは当然である。そのことをスッ飛ばして表面的なルックスやキャラクターだけで持ち上げる風潮は、日本映画にとってマイナス要因にしかならない。

 ひるがえってハリウッドでは、たとえルックス面では好き嫌いが分かれるとしても(笑)、演技力も存在感も持ち合わせない俳優がスクリーンに陣取っている事例には、お目にかかったことは無い。各人が大勢の前でパフォーマンスを披露することの重要さを自覚している、あるいは自覚しなければ通用しないシステムが出来上がっているのだろう。こういうところを日本映画は見習わなければならない。
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アニメが多すぎる。

2019-08-02 06:28:13 | 映画周辺のネタ
 夏休みということで、各映画館とも上映作品にはアニメーションが目立つ。しかし、実は“サマーシーズンだからアニメが多くて当然”ということでもない。常時アニメの上映本数は高止まりである。ちなみに、20年前は劇場公開された国産アニメ映画は20数本であったが、去年(2018年)には50本弱に達している。これは、いくらなんでも多すぎると思う。

 アメリカでは劇場上映される長編アニメーションが具体的にどの程度あるのかは知らないが、日本よりはずっと少ないのではないか。

 アニメ好きの観客にとっては日本の状況は“作品がたくさん観られて素晴らしい”とでも思うのかもしれないが、反面それは製作現場の“犠牲”によって成り立っているというのも、また事実である。

 アニメ業界が大方“ブラック”というのは巷間よく取り沙汰されているところだ。先日、理不尽な放火テロによって多くの犠牲者を出し、物的損害も膨大なものになった京都アニメーションは、業界筋では(歩合給ではなく給料制であることもあり)“ホワイト”だと言われていたらしい。だが、それでも一般世間的に言えば従業員は最低賃金ギリギリの待遇しか与えられていなかったという話である。

 どんなに有名な作品を手掛けていても会社はさほど儲からず、社員を非常口も非常階段もスプリンクラーも無いビルで働かせるしかなかったという、何ともやりきれない現実がある。多くの注目作を発表していた京都アニメーションでさえこのような状態であるから、他の業者は推して知るべしだろう。

 もっとも“現場がいくら疲弊していても、多彩な作品が数多く観られるから、それでいい”という意見もあるのかもしれないが、それは欺瞞である。作品は多くても、鑑賞する観客は限られている(ジブリ系や「名探偵コナン」等の一部のヒット作は除く)。一作品あたりの収益率が低いので、数をこなして何とか糊口を凌いでいる状況だろう。そういう自転車操業は、早晩行き詰まると思う。

 業界全体を“儲かる”構造に改革し、そこで働く者達が将来が開けるような状態に持っていってほしいものだ。ハリウッドのように、製作拠点を整理・統合して資本とノウハウを集中させ、本数は限られるとしても質の高いものを提供し、少しでも有能なクリエーターには高給が支払われるような体制が理想である。とにかく、今のままじゃ内閣府が音頭を取っている“クールジャパン構想”も絵に描いた餅だ。

 まあ、一般的な映画ファン(≠アニメ映画限定のファン)としては、観客層の幅が狭いアニメ作品にシネコンのスクリーンを大量占拠されるよりも、国内外の多彩な作品を上映して欲しいというのが本音である。
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独断で選んだ2018年映画ベストテン。

2018-12-31 06:39:06 | 映画周辺のネタ
 まことに勝手ながら、ここで2018年の個人的な映画ベストテンを発表したいと思う(^^;)。



日本映画の部

第一位 犬猿
第二位 万引き家族
第三位 カメラを止めるな!
第四位 生きてるだけで、愛。
第五位 志乃ちゃんは自分の名前が言えない
第六位 坂道のアポロン
第七位 私の人生なのに
第八位 日日是好日
第九位 泣き虫しょったんの奇跡
第十位 Mr.Long ミスター・ロン



外国映画の部

第一位 ジュピターズ・ムーン
第二位 ラブレス
第三位 ビューティフル・デイ
第四位 心と体と
第五位 パッドマン 5億人の女性を救った男
第六位 華氏119
第七位 判決、ふたつの希望
第八位 ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
第九位 タクシー運転手 約束は海を越えて
第十位 BPM ビート・パー・ミニッツ

 前回(2017年)は邦画の低落傾向が目立ったが、今回はかなり持ち直している。「万引き家族」のカンヌ国際映画祭での大賞獲得は大いに話題になったが、それより驚かされたのが「カメラを止めるな!」のスマッシュ・ヒットだ。題材はキワ物ながら、映画作りは正攻法。巧みな筋書きとキャストの好演により、見応えのある娯楽編に仕上がっていた。口コミによる反響の大きさなど多分に幸運な面もあったが、低予算でも真面目に取り組めば成果が上がることを実証してみせたのは有意義だと思う。

 ただし、2018年も相変わらず目立つのは、日本映画におけるアニメやラブコメの氾濫だ。もちろんしっかり作られていれば文句は無いのだが、いずれも大人の映画ファンの食指が動くとは思えない出で立ちだ。かと思えば、シニア層を狙ったのは良いが内容が伴っていないシャシンも散見される。こういう脱力するような構図はしばらく続くのだろうか。

 洋画は豊作であったとは思うが、個人的な好みを別にしても、ハリウッド製があまりランクインしていないのは残念。やはりネタ切れなのかもしれない。話題としては「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットが挙げられる。観た者が映画そのものよりも、題材と自分との関わりを語りたくなるという、面白いパターンが見られた。

 なお、以下の通り各賞も選んでみた。まずは邦画の部。

監督:吉田恵輔(犬猿)
脚本:上田慎一郎(カメラを止めるな!)
主演男優:松田龍平(泣き虫しょったんの奇跡)
主演女優:趣里(生きてるだけで、愛。)
助演男優:リリー・フランキー(万引き家族)
助演女優:樹木希林(日日是好日)
音楽:Hi’Spec(きみの鳥はうたえる)
撮影:近藤龍人(万引き家族)
新人:中川大志(坂道のアポロン)、南沙良(志乃ちゃんは自分の名前が言えない)

 次は洋画の部。

監督:コーネル・ムンドルッツォ(ジュピターズ・ムーン)
脚本:アンドレイ・ズビャギンツェフ、オレグ・ネギン(ラブレス)
主演男優:ホアキン・フェニックス(ビューティフル・デイ)
主演女優:アレクサンドラ・ボルベーイ(心と体と)
助演男優:ウィレム・デフォー(フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法)
助演女優:ソーナム・カプール(パッドマン 5億人の女性を救った男)
音楽:ジェド・カーゼル(ジュピターズ・ムーン)
撮影:ブリュノ・デルボネル(ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男)
新人:ティモシー・シャラメ(君の名前で僕を呼んで)、イザベラ・モナー(ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ)

 ついでに、ワーストテンも選んでみる(笑)。

邦画ワースト

1.寝ても覚めても
2.斬、
 この2本を観て、国際映画祭にはもっとマシな作品を出品して欲しいものだと思った。
3.散り椿
4.検察側の罪人
5.銃
6.素敵なダイナマイトスキャンダル
7.来る
8.教誨師
9.孤狼の血
10.サニー/32

洋画ワースト

1.シェイプ・オブ・ウォーター
2.スリー・ビルボード
3.君の名前で僕を呼んで
4.ファントム・スレッド
 以上4本はオスカー候補作。それにしても、2018年度のアカデミー賞は低調だった。
5.キングスマン:ゴールデン・サークル
6.パシフィック・リム:アップライジング
7.ジュラシック・ワールド 炎の王国
 以上3本は、いわゆる“ダメな続編”の典型。
8.ザ・スクエア 思いやりの聖域
9.グッバイ・ゴダール!
10.2重螺旋の恋人
 いずれも、作家性の押し付けが鬱陶しい。

 さて、ローカルな話としては2018年には福岡市中央区地行浜にオープンした大型商業施設“MARK IS 福岡ももち”の中に、シネコンのユナイテッドシネマがテナントとして入ったことが映画ファンとしては有り難かった。2016年に閉館した“ユナイテッドシネマ福岡”の実質的な再オープンで、これで福岡市のスクリーン事情はいくらか改善されたと言える。

 ただし、2017年に閉館したTOHOシネマズ天神本館の代替施設の話は未だ聞かない。映画好きが多い土地柄なので、早めの対処をお願いしたいところだ。
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AIに映画評論は可能か?

2018-03-11 06:50:22 | 映画周辺のネタ
 最近、さまざまなメディアで人工知能(AI)というワードを目にすることが多くなってきた。個人的には、AIがプロの囲碁棋士を打ち破ったことが印象に残っている。一応私は囲碁の(自称 ^^;)有段者なのだが、以前は“囲碁はコンピューターが最も苦手とするゲーム”だと思い込んでいた。何しろ、将棋やチェスに比べてプレイする空間が格段に広いし、手順の数も天文学的。コンピューターが付け入る余地はほとんど無いと勝手に合点していたのだった。だが、進化する人工知能は、そんな先入観を軽く粉砕してしまった。本当に驚くばかりである。

 さて、先日知り合いが“AIがいくら進化したといっても、映画や小説の評論なんか出来るはずが無い”と言っていたが、私は違うと思う。私は文系なのでAIの詳しい絡繰りなんか分からないが、その解析能力を活かせば、将来は並の評論家よりも遙かに作品の内容を詳細に把握した“正確な”コメントを提示出来るようになると想像する。

 話を映画に限定すると、往年の名監督である牧野省三は、映画製作のモットーに“1.スジ、2.ヌケ、3.ドウサ”を挙げていた。言うまでもなく、スジとは脚本のことだ。ヌケはとは撮影・現像の技術を指し、ドウサは俳優の演技のことである。つまり、一番重要なのはシナリオであり、技術や演技は二次的なものであると断言していたのだ。この原則は現在でも通用する。

 脚本で大事なのは、話の辻褄が合っていることである。プロットの整合性の何たるかをAIに覚えさせれば、シナリオの出来不出来なんか簡単に判別することが可能なのではないか。映画評論が映画製作の根幹を論じるものであるならば、シナリオ解析だけで評論は8割以上は完了してしまう。当然、脚本に不備があれば、どんな超大作や話題作でも“失格”の烙印を押される。

 もちろん、世の中には通常のドラマツルギーを逸脱していながら、傑作や秀作の域に達している映画も少なからず存在している。ならばそんな作品に対しては、AIのシナリオ解析能力を元にした評論は役に立たないと一見思われる。しかし、それもある程度は対応可能だろう。ストーリーの整合性を凌駕するほどの映像の喚起力や俳優の演技、あるいは才気走った演出家の仕事ぶりといったものを別個のファクターとして解析し、そのヴォルテージとプロットの整合とを天秤に掛けて、総合評価を導き出せば良い。

 その解析力は、AIが得意とするディープラーニングがモノを言う。何がその映画を傑作や秀作たらしめているのか、その分析の対象を区別する際の“着眼点”を自動的に見つけ出せば、より“正確な”評論が可能になる。

 なぜ以上のようなことを考えたのかというと、あまりにも脚本に手を抜いた映画(特に邦画)がはびこり、またその欠陥シナリオを擁した作品が何だか訳の分からない“(作品を取り巻く)空気”みたいなもので、場違いに評価されてしまう例が散見されるからである。少なくとも、関係者への“忖度”を優先した提灯記事などは、百害あって一利無しだ。AIに評論を任せた方が、よっぽど良い結果が得られるだろう。

 前述の牧野監督は、大正12年に設立したマキノ映画製作所において、若い脚本家の育成に力を入れていた。また、彼らには当時の監督よりも高額のギャラを与えていたという。優れた映画には良質のシナリオが不可欠だ。脚本家のレベルアップと待遇改善こそが、日本映画を盛り上げる重要な手段であると思う。AIによるシナリオ分析もその一助になるかもしれない。
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何気なく選んだ2017年映画ベストテン。

2017-12-31 06:53:53 | 映画周辺のネタ
 2017年の個人的映画ベストテンを勝手に発表する。まずは日本映画の部。



第一位 彼女の人生は間違いじゃない
第二位 しゃぼん玉
第三位 ANTIPORNO
第四位 光(河瀬直美監督版)
第五位 帝一の國
第六位 愚行録
第七位 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
第八位 最低。
第九位 彼女がその名を知らない鳥たち
第十位 ビジランテ

 次に、外国映画の部。



第一位 ムーンライト
第二位 人生タクシー
第三位 ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ
第四位 わたしは、ダニエル・ブレイク
第五位 ドリーム
第六位 ハクソー・リッジ
第七位 ベトナムを懐(おも)う
第八位 ヒトラーの忘れもの
第九位 女神の見えざる手
第十位 ベイビー・ドライバー

 前年とは打って変わり、2017年の日本映画は不作であった。普段ならばランクインされていないレベルの作品も無理にかき集めて、何とか10本揃えたという感じである。一位の「彼女の人生は間違いじゃない」にしても、出来よりも題材に惹かれての選定だ。

 対して、外国映画は近来まれに見る豊作。特に一位の「ムーンライト」は私自身のオールタイムベストテンにも選びたいほどの傑作だった。ベストテンに挙げた作品以外にも「沈黙 サイレンス」や「幸せなひとりぼっち」「キングコング:髑髏島の巨神」「LOGAN/ローガン」「残像」「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」「パターソン」「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」「婚約者の友人」等々、秀作・佳作の目白押しである。

 また全体に洋画には世相に鋭く切り込んだ作品が目立つ。(少なくとも表面的には)毒にも薬にもならない展開の邦画とは大違いである。

 なお、以下の通り各賞も勝手に選んでみた。まずは邦画の部。

監督:廣木隆一(彼女の人生は間違いじゃない)
脚本:河瀨直美(光)
主演男優:菅田将暉(帝一の國)
主演女優:瀧内公美(彼女の人生は間違いじゃない)
助演男優:桐谷健太(ビジランテ)
助演女優:筒井真理子(ANTIPORNO)
音楽:ルドビコ・エイナウディ(三度目の殺人)
撮影:ピオトル・ニエミイスキ(愚行録)
新人:間宮祥太朗(全員死刑)、葵わかな(サバイバルファミリー)、石川慶監督(愚行録)

 なお、新人部門の葵は映画よりもNHKの朝ドラでの好演を加味しての選出だ。

 次に、洋画の部。

監督、脚本:バリー・ジェンキンス(ムーンライト)
主演男優:マイケル・キートン(ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ)
主演女優:ルース・ネッガ(ラビング 愛という名前のふたり)
助演男優:マハーシャラ・アリ(ムーンライト)
助演女優:アナ・デ・アルマス(ブレードランナー2049)
音楽:ニコラス・ブリテル(ムーンライト)
撮影:ジェームズ・ラクストン(ムーンライト)
新人:パウラ・ベーア(婚約者の友人)、ラヴィス・ナイト監督(KUBO/クボ 二本の弦の秘密)

 ついでにワーストテンも挙げておく。まずは日本映画。

1.家族はつらいよ2
2.光(大森立嗣監督版)
3.幼な子われらに生まれ
4.パーフェクト・レボリューション
5.三度目の殺人
6.ジムノペディに乱れる
7.笑う招き猫
8.彼らが本気で編むときは
9.ホワイトリリー
10.牝猫たち

 次に外国映画。

1.マンチェスター・バイ・ザ・シー
2.ザ・サークル
3.LION/ライオン 25年目のただいま
4.メッセージ
5.スター・ウォーズ 最後のジェダイ
6.エル/ELLE
7.ダンケルク
8.哭声/コクソン
9.20センチュリー・ウーマン
10.ビニー 信じる男

 日本映画に関しては、現役の監督たちが新作ロマンポルノを手掛けた“日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”の数々がワースト入りしたのが特徴的。名の知れた監督に丸投げするのではなく、若手を含めた“ポルノでなければならない必然性”を見据えた人材を選出すべきだった。外国映画では、アカデミー賞の受賞作や候補作が並んでいる。もちろん、これらの作品をベストに挙げる観客もいるとことは予想出来るが、個人的にイヤなものはイヤである(笑)。

 なお、2016年のユナイテッド・シネマ福岡に続いて、2017年には天神東宝(TOHOシネマズ・天神本館)までが営業を終えてしまった。映画ファンが多い福岡県民にとってはかなりの“逆風”だ。ユナイテッド・シネマ福岡は2018年に“復活”するらしいが、それでもスクリーン数は十分ではないと思う。業界筋の奮起を望みたいところだ。
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福岡市の映画館の変遷について。

2017-09-22 06:18:12 | 映画周辺のネタ
 私のように無駄に長年映画を見続けていると、福岡市の映画館事情の移り変わりを目撃することにもなる(まあ、ずっと福岡市に住んでいたわけではないが)。そのへんを少し書いておこう。

 その昔、福岡市早良区西新には映画館が二つあった(もっと昔はそれ以上あったらしいけど、私は知らない)。西新アカデミーと西新東映である。前者は東宝系列の小屋で、ごくたまにミニシアター系作品を上映していたが、99年に惜しまれつつ閉館。後者は文字通り東映系だったが、ハリウッドのクラシック作品も安い料金で上映していた。

 この西新東映が閉館したあと同じロケーションに出来たのが「てあとる西新」という劇場だ。開設時期は80年代初頭だったと思う。ミニシアター系の封切り作品はもちろん、タルコフスキーやゴダールやフェリーニなどの旧作も数多く上映。「カルメンという名の女」も「鏡」も「8 1/2」もここで観た。しかし、二百席以上というミニシアターの範疇を超えた規模であり、ランニングコストがかさんで閉館(確か、86年か87年)。経営母体のパシフィック・シネマ・ジャパンは同じコンセプトの小屋を中央区天神2丁目に開館させ、「移転」との形を取る。それが「西通りキノ」である。

 「西通りキノ」は80年代末にオープンした。80席程度の「キノ1」と50席ぐらいの「キノ2」の2スクリーン構成。作品傾向は「てあとる西新」と同じだったが、「ベルリン・天使の詩」「どついたるねん」などの話題の単館系作品も手がける。さらにグリーナウェイやデレク・ジャーマンなどの初期実験映画の一挙上映みたいなマニアックなネタもやっていた。
 
 ところが、ここの劇場は設備が万全ではなく、「キノ1」はスピーカーが一個しかないし、「キノ2」にいたっては当初は折り畳み椅子のみ。おかげで観客数は減り続け、91年(だったかな)に早々に閉館。それから「シーキューブシアター」と名前を変えて東宝系の二番館として存続しようとしたが、長くは保たなかった。

 80年代前半に「東映ホール」という小さな映画館が中央区天神3丁目の親不孝通りにオープンした。文字通り東映系の二番館だったが、86年か87年ごろ、突然「寺山修司特集」をやり始め、ミニシアター市場(?)にうって出る。館名も「てあとるTENJIN」に変更。たぶん「てあとる西新」と資本的な共通点はあったと思う。「キノ」とは違ってそこそこの設備を持っていたせいか長続きした。やがて経営母体があのビルを所有する「有楽興行」になり(その前から資本参加していたと思うけど)、内部改装を経て90年(だったかな)に「シネテリエ天神」と改名する。なお、「てあとる○○」の展開元だったパシフィック・シネマ・ジャパンはどうなったのか知らない。

 現在、博多区中洲の東急エクセルホテルが建っている場所にも映画館があった。福岡東宝と福岡松竹である。どちらも比較的規模の大きい小屋であったが、時代の流れには勝てなかったらしい。その近くにあった東映グランド劇場も松竹に経営を移管したが、結局は閉館。映画街の代名詞であった中洲も、現在存続しているのは大洋劇場一館のみだ。

 中央区渡辺通りや赤坂、六本松に映画館が存在していたなんて今の若い衆は誰も信じないだろう。かつては博多駅の構内にも名画座があったのだ。現在はシネコンの全盛期になりつつあるが、代わりにミニシアターの数は減った(「シネテリエ天神」も2009年に閉館している)。確かにシネコンはかつての“町の映画館”に比べれば設備は整っているが、もっと多様な観客のセグメントに合わせたマーケティングが望ましい。あと一館でもミニシアターがあったら、もっとバラエティに富んだ番組が楽しめるだろう。
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今年の“飾り山”は「スター・ウォーズ」。

2017-07-14 06:28:33 | 映画周辺のネタ

 昨年(2016年)ユネスコ無形文化遺産にも登録された福岡市の夏祭り、博多祇園山笠が今年も7月1日より15日まで開催された。例年通り市内14箇所に“飾り山”が設置されたが、その中で異彩を放っていたのが福岡市博多区の上川端商店街に設置された“八番山笠”である。

 ここの今年の飾り付けのテーマは、何と「スター・ウォーズ」だ。年末に公開される「最後のジェダイ」を題材にしたもので、手練れの博多人形師による造形は、実によく出来ている。話によれば、外国映画が“飾り山”のネタになるのは初めてだということで、かなりの見物客を集めていた。

 今回の“飾り山”のように、祭りの出し物を映画の宣伝に使うというのは、けっこう上手い方法かもしれない。特に福岡のように映画好きで祭り好きが多い土地柄だと、かなりの効果が見込めよう。出来れば今後も継続してほしい。

 博多祇園山笠のハイライトである“追い山”は7月15日に行われるが、開始時刻が朝の4時59分なので、前日徹夜でもしない限り良いポジションで観るのは無理だ。だが、博多祇園山笠は博多の夏を象徴する行事であることは間違いない。だが、今年の梅雨は県内の筑後地区で大水害が起こるなど、良くないニュースが目立つ。地元の方々の無事を祈りたい。
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